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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第八章:少女一人
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141話:夢の中のユメ、多すぎじゃない!?

毎日、決まった角度から降り注ぐ太陽の日差しが眩しかった。

体は少し疲れていたけど、気分はすごく爽快だった。


「ルクミィさん、助けてくれてありがと~!」


彼女はすぐそばにいたけど、私はつい空に向かって大声で叫んじゃった。


「エネくん、調子はどうかな?」


精霊とエネルギーが融合した男の子――まあ、正確には性別はないらしいけど。

彼も、地上まで一緒に来てくれた。


「ん?……」


エネくんは、ぽぉ~っとしたまま、でも私に向かってちゃんと笑ってくれた。

もう透明じゃないけど……裸のままだから、なんか服を着せてあげたくなった。


「どこか町があれば、服を買おうね~」


そんな話をした、ほんの数分後――

エネくんはすぐにそれを理解して、自分で服を生成してしまった。


「エネくん……魔法使い……!?」


ほぇ~って思わず声を上げたら、

ルクミィさんが少し笑って、「似たようなものですよ」って言ってた。


そのあと、私は二人に――仲間を探してるって話をした。


ルクミィさんは「もちろん」と、すぐに頷いてくれた。

一緒に来てくれるって、それだけで心強い。


エネくんは……はっきりと返事はしなかったけど、

それでもちゃんと、着いてきてくれる気がした。


そんな感じで三人で歩いていたら、

エネくんがふわっと宙に浮いて、私のまわりをくるくる回りはじめた。


へぇ~……すごいね。

そっか、精霊だもんね――そうだよね。


「エネくん連れて来て良かったですね、瑠る璃さま。

それに探し人でしたら私が探してみましょうか?」


えっ……本当に何でもできるんだなぁ。ルクミィさんって。


それから、クラシェフィトゥのことを話していった。

ユメとの出会いも――

そして、いつの間にか地下の金属でできた都市へと続いた話。


いつも全部、話を聞いてくれるルクミィさんが、ぽつりと教えてくれた。

ユメも、クラシェフィトゥも、人類が作り出した剣じゃないって。


「瑠る璃さまは、ユメさんの使い方がとても自然なので、

もうご存知なのかと思っていました。

――こうやって、軽く握って、心の中に聞いてみてください」


私は、ユメを持ちながら――ルクミィさんの真似をして、やってみた。

そっと瞳を閉じながら……


いきなり、意識がどこかへ飛んでしまったかと思った。


……気がつくと、私は変な街に立っていた。


道も建物も、全部クッションでできているみたいにふかふかで、

屋根の上には小さな子どもがごろごろ寝ている。

しかも全員、ユメ。


目の前を走っていくのも、

ベンチでラムネを飲んでるのも、

自販機の中から出てくるのも、

ぜーんぶユメ。小さなユメ。


ちょっと目が合うと、みんな一斉に振り返って、

「ほらねー」「来た来た」「まねしてたもんねー」とか、

口々にしゃべりだした。


「えっ、なに?ここどこ!?ていうかユメ多くない!?」


私の声に、近くにいたひとりがぴょこんと跳ねて、

帽子の上に乗ってたソフトクリームを落とした。

「ここ?ユメの夢の中だよ」と、にこにこして答えた。


……夢の中の、ユメの夢の中?


なんなのそれって?

私が何も知らない世界の夢を見てる、そんな事あるのかしら?


まわりにいるのは、みんな小さな子のユメたち。

でも……クラシェフィトゥはいるのかな? 姿は見えなかった。


ただ私が夢中で見ていると、

ユメたちは街のあちこちに積まれたブロックを使って、

なにか新しいものをつくりはじめていた。


……あっ、あれ王宮だ。私の。


そして離れた場所にクッションを高く積み上げて、

その横にちょこんとブロックの建物があって。


形も色もめちゃくちゃなのに、なんでかわかる。あれが“帝都”

そして――その全体の離れに旗を作っていた。


ユメたちが、みんな一斉に集まってきた。

そして、楽しそうにおしゃべりしながら、あの旗のてっぺんを指さしていた。


――そこ。そこにクラシェフィトゥがあるってこと?


その場所を頭の中で覚えた、まさにその瞬間――


ぱちん、と目の前がはじけるように変わった。


気がつくと私は、ルクミィさんとエネくんに見られている

“こっちの世界”に戻っていた。


「ルクミィさん、クラシェフィトゥがいる場所、わかったの!」


私は、夢の中で見たことをなるべく詳しく、ルクミィさんに話してみた。


話し終わったあと、ルクミィさんがちょっと考えるように首をかしげて――


「その場所って……ん~、“ここ”ですね。

多分、私の予想ですが――

瑠る璃さまの身体のどこかに、くっ付いているんじゃないかと」


……えっ?

……えぇぇぇぇぇ!?

【後書き】――rururi


ねぇ、どう思う?

クラシェフィトゥが、自分の身体にくっ付いてるって。……おかしくない?


私、夢の中で街を歩いて、

ユメたちがクッションとかブロックで帝都とか王宮とか作ってて、

旗のてっぺんを指さしてたから、「あっちだ!」って思ったのに――


まさかの「“ここ”です」って、ルクミィさん……それ先に言ってよー!


でも、なんかあったかかったんだよね。

一緒にいてくれて、話してくれて、驚いて、笑って。


私、なんだか「仲間と旅してる」って、思えた気がする。


【後書き】――writer I


この回は、“地上に降りたあとの日常”から始まりながら、

そこにしれっと混ざってくる異常と幻想、

そして感情の積み重ねが良かったかな。


最初は、晴れた空、元気な声、仲間との会話――

だけど、すぐに現れるのはエネくんの超自然な変化だったり、

ユメの夢の中での不条理な“世界観づくり”だったりする。


“ユメ”が、いつのまにか“住んでる

“夢を見る”“誰かの中にいる”存在として扱われていく。

それが、まるで当たり前のように、

ふわっと受け入れられてるところにこの回の味があるかな。


そして、最後の「……えぇぇぇぇぇ!?」というオチ。


これが限界かも……

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