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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第八章:少女一人
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126話:私たちは仲間だったよね?

この世界は、“あの時”から休むことなく変わり続けている。

でも――私はもう疲れちゃったから、少し休んでもいいよね?


私のために作ってくれた新しいお風呂。


トキノ先生がガン彗くんのために作った“海”を参考にして、

ヴェルシーが作ってくれたものだ。


球体になったお風呂ごと、部屋も丸ごと新しくなっていて、

私はその中で、眠り絹の寝衣を着たまま、静かに眠っていた。


――ねぇ、レラ。私のために、いつもご飯を用意してくれなくてもいいのよ?

……え? 勇者くんのついでに? そう。ありがとうね。


「そんなに一人がいいの?」って?

え、あー……どう答えたらいいか困っていた私の手を、レラが取ってくれた。

優しく、微笑みながら――


――ん? さっき助けたから、それをくれるの? お守り……かな? 違うの?


同じように作ろうとしても、なんでか違う物ができちゃうのね。

へぇー……これ、新神カノンルさまなんだ。


――ああ、これ? さっき獣種と戦っていた時に近寄っちゃって、

小石が飛んできたの。ちょっと手に当たっただけだよ。全然、平気。


わざわざ傷治しの魔法なんて、使わなくてもいいのに……

……え、練習? ふふ、見て。ほら、完璧に治ったよ。


――まったく、言うこと聞いてくれない勇者くんは面倒よね。

ん? そうか、レラが見ててあげるから、あんなに暴れられるのね……

そうね、助け合ってる――


……仲間ですもんね。


私は目を覚ました。

いつぶりかわからないけど“夢”を見ていた気がした。


勇者くんとレラ、そしてガン彗くんと旅をしていた時のこと――

あのときは、必死すぎて深く考える余裕もなかったけれど、

今になって思えば、全部があたたかい記憶に変わっていた。


もしかして――帰ってきたときに、ちゃんとお別れができなかったことが、

私の中でずっと引っかかっていたのかもしれない。


そのことを考えると、いまでもため息ばかりが出てしまう。

だから何か、別のことで気を紛らわせようとしていたのかもしれなかった。


……ヴェルシー、どこかにいるのかな?


球形のお風呂から出るには、意外と慣れた泳ぎが必要だった。


部屋の中では、いつも通り地面に引っ張られる引力が働いているけど――


お風呂の中は違う。

球体の“中心”に向かって力が働いていて、その場所にいる限り、

ずっとぷかぷか浮いていられる様になっていた。


球体の中心から、ぱたぱたと足を動かしながら、

すぃーっとタイル張りの床へ向かって泳ぐ。

やがて床と水面の境に差しかかった頃、

勢いよく床へと前転して――そのまま立ち上がった。


この部屋は、物理的に言えば「四姉妹の塔」と呼ばれている建物の一部で、

四つある“花”のひとつにあたる。

私が今いたのは、その“花”を支える茎にあたる部分――つまり、一番下だった。


そこから螺旋階段をとんとん登っていくと、やがて一番上――

私とヴェルシーの部屋に着いた。


……三階分も下に作らなくてもいいと思うんですけど……


「ヴェルシー、ねぇ聞いてよ……ねぇねぇ……」


工作机に座っていたヴェルシーが、振り向きながら面倒くさそうに言った。


「何が言いたいの」


「うん、んー、私たちは“親友”でしょ? 仲間とは違うよね?」


きっちり関係性なんて、いままで聞いたことなかったかもしれない。

別に聞く必要はなかったけど――

“仲間”って、なんなのか。ちゃんと、具体的に知りたくなった。


ん?

ヴェルシーが、とても真剣な眼差しをしていた。

改めてしっかり見返すと――怖くなるほどだった。


「瑠る璃。……君は、勇者ロテュとレラを“仲間”だと思っているの?」


えっ? ヴェルシー……私、変なこと聞いちゃったの?


「仲間……だと思うよ。いい旅だったし、一緒に戦ったし」


「うん。それは、僕も見ていたから問題ないと思う。

でもね、中には“勇者病”に罹患している可能性があるから、気をつけないと」


「……勇者病?」


「物理的な“勇者中毒”とは違って、

これは精神的な病気だから――治すのが難しいんだよ。

だから、君の方から勇者を探すのはやめておいてね」


うみゅ。ロテュとレラに会ったのは、別にわざとじゃないよ。


「それは大丈夫。今だって、勇者に会いたいわけじゃないし」


「……そうか。

僕も今はちょっと忙しいから、すぐには無理だけど……

また、会いに行けばいいよね」


うん、そうだよね。

よく考えたら、会いたい人が多すぎて、迷うくらいだもん。


「うん、それでかまわないよ。

じゃあ、ヴェルシーが忙しいなら――私は実家に帰ろうかなー」


ヴェルシーはまた、工作机に向かって何かを作っていた。

私は一人でできることなんて何もない――そう思っていたのに、

急に、やりたいことが頭の中にあふれてきた。


……うん。

まずは父さまに会いに行って、

それから――私一人で、旅に出てみようかな。

今後は準備した文章がないので、投稿が不定期になります。

まずは自分なりに最後まで書き上げることを目標にしていますので、

前後のつながりが少し不自然になるかもしれません。

恐れ入りますが、修正は後日になるかと思います。

ご理解いただければ幸いです。

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