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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第七章:天と地ノ亜神
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122話:「っと思ったら城塔に登っているよ

ねぇ、ヴェルシー。お城があるよ。


テーブル山のてっぺん――真っ平らな頂上の上に、

見たことのない縦長い形の城が建っていた。


帝都の外れに古城があるなんて、まったく知らなかった。


でも、大きく壊れてて、どこまでが元の形なのか、ちょっとわからない。


あれ? たしか「山の中にあるお城」って言ってなかったっけ?


……そっか。


いま見えてるのって、お城の“てっぺん”だけなんだ。

だからこんな変な形に見えるのかも。


じっと見ていると、なんだか……不気味な感じがしてきた。


あの中に入るなんて――怖いよね?

ほら、いま、お城の飾りがぽろっと崩れ落ちた……!


思わず「あー……あぁー」と低い方から高い方へ声が上がっていった。


落ちた瓦礫のいくつかが、空中でぐいっと引っ張られたみたいに軌道を変えた。


飛んでる……!?


「ヴェルシー!!」


叫んだ瞬間――

穂先みたいな形をした何かが、ものすごい速さで私たちに向かって飛んできた。


私は全身がこわばって、反射的に鍵本を胸にぎゅっと抱きしめた。


そのまま集中し見ると、あれには目のようなものがついている?

さっきまでただの瓦礫にしか見えなかったけど――


金属の光沢を帯びていて、どこか動物モチーフの彫刻のようだった。


そのまま見ていると、

小型の方はまた空中でぐいっと方向を変えて飛んでいった。


でも大型のほうは――私の胸目掛けて飛び込んできた――


ヴェルシーが魔法で私を引っ張ってくれなければ、

槍が心臓を貫いていたに違いなかった。


私は体勢を立て直しながら、まだ空中にいる彫刻の動きを追った。


「瑠る璃!こいつ僕の防壁じゃ役に立たない。気を付けて!」


ヴェルシーの声が飛んできたかと思うと、

いくつかの光の矢が私の横をすり抜け、彫刻に向かって放たれた。


当たった?――でも、

光の矢は彫刻に当たると弾かれて、光の粒子になって消えていった。


彫刻の方は、まるで何事もなかったかのようにそのままだった。


そして、くるっと向きを変えると――また、こっちに飛び込んできた!


「あれをひとつなら、なんとかできるから君は回り見てて」


ヴェルシーにそう言われて、

私は飛んでくる彫像には目を向けず、周囲の様子を確認するようにした。


でも――そのとき、空気が一瞬ぴんと張り詰めた。


ヴァンッ!と大きな音が鳴り響いて、思わずそっちを見てしまった。


そこには、地面から彫像に向かって走る――

雷のような、鎖のような――そんな光の束が伸びていた。


彫像の動きが鈍っている。


そこに――四方八方から、光の矢が“同時”に突っ込んでいった。


光の粒子が弾けて消えたときには、彫像の姿も完全になくなっていて、

雷の鎖はぱらっと地面に落ちると、そのまま染み込むように消えていった。


私は少しだけ息をつきながら、ヴェルシーの方を見た。


彼は「もう、まったく……」みたいな顔をして、指を突き出た。


その指先――空。

小型の彫像の集団が、私たちを観察するように、空を高速で飛び回っていた。


「トキノ先生に“待っていなさい”って言われたの……下だったのかも。

僕たち、いつも面倒なことに巻き込まれちゃうね」


うん―― 私のせいじゃないと思うけど――


私はもう一度深呼吸してから、お城の方に目を向け直した。


よく見ると、壁面のあちこちにさっきの彫像と同じものが埋め込まれていた。


……つまり、あの彫像たちはこのお城を守ってるってことなんだね。


今は平気みたいだから、

ここでトキノ先生が来るまで、大人しく待っていればいいよね。


そう思った直後だった。


お城の方から――どぅどぅーん、と重い何かが落ちたような音が響いた。

高い位置から土煙がもくもくと立ち上がっていく。


「見て、ヴェルシー!」


それだけ言うと、私はそちらを指差した。


土煙の中から、勇者くんとレラが飛び出してきた。

二人はたくさんの彫像に追われていた。


まだまだ、外にいた彫像たちも、みるみるうちに崩れ始めて、

中から“本体”をあらわにして――数を増やしていた。


「助けにいかなきゃ!」


私はそう言って、一歩踏み出そうとした――その時。

腰のあたり、服の後ろを誰かにぎゅっと掴まれて、動きを止められた。


え、ヴェルシー? 行かないの? そう思って振り返ると――

私の腰を掴んでいたのは、トキノ先生だった。


「おねちゃんたちは、あたしの話を絶対守らないよね!

勇者くんとレラも、ものすごい速さで攻略してくるし……

もう、時間が間に合わないよ!!」


トキノ先生は、焦りながら怒っていて、

そのまま呪文を唱えはじめた。


空気も怒られたように震えていた。

次の瞬間、目の前が――真っ暗になった。

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