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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第七章:天と地ノ亜神
123/179

119話:私ってすごい寝ている?違う気がする

目を閉じて眠っている――私が、目の前にいた。

あれ? さっき、自分の体に飛び込まなかったっけ?


近づこうとしても、これ以上どうしても近づけない。

……え、なにこれ?どうしたらいいの?


この、何もない空間って……『非物質界―アストラルプレーン』だよね?

自分の体に向かってじたばたしてたら――


「瑠る璃おねえちゃん」


あっ、ガン彗くん!?どこ? 声のするほうを振り向くと、

そこには――でっかい龍の姿のガン彗くんがいた。


「僕が押してあげるね」


そう言うと、私からちょっと距離を取って、

そのまま勢いよく――ドーン!って私に突っ込んできた!


え、えー!? それ、押してなっ……!


ぶつかって、どびょーん!と、私は跳ね返された。

痛っ……いや、痛かったわけじゃないけど……死んだかと思った!


はっ、と目が覚めた。

……なんだろう、胸が重くて、息が……できないよ……?


見ると――寝ているガン彗くんが、私の上にいた。

うぅ……これは、潰されるぅ……。


挟まれていた私は、「んにゅ……」と横にずれてなんとか脱出した。

それから思いっきり息を吸って――ふはぁぁぁ……あくびした。


見るとガン彗くんはまだ「むにゃむにゃ……」と寝ていたので、

そのまま寝かせておいた。


私はそっとベッドを抜け出して、トキノ先生を探しに螺旋階段を下りていった。

すると、下の絨毯の上で――先生が倒れてた。


私は急いで近づいて、絨毯の上に座り込んで声をかけた。


「だ、大丈夫……?」


「……あの子の魔法機構、なんとかわかった……よ……」


トキノ先生はそうつぶやいたあと、ぱたんと倒れて、また寝てしまった。


ふと足元に落ちていたカレンダーを拾い上げて見てみると、

あれから三日が経っていた。


私が戻れるように――

きっとその間ずっと、トキノ先生ががんばってくれてたんだ。


日付をなぞるように指でなでて、

それから私は先生をそっと抱えて、ベッドまで運んだ。


可愛い寝顔を見ていたら、三日間も眠っていたはずの私も、

また眠たくなってきた。


あくびを「はぁーぁ」とすると、

上に戻るのも面倒になって、服を脱いで明かりを消した。

トキノ先生の隣にそっともぐりこむ。


「ときにょせんせい、おやすみなひゃい……」


――きっと、眠るって、

この夢の世界でも眠らないといけないのかもしれない……


夢の世界に溶けていかないとダメなのかなー……


「ねぇ、瑠る璃おねちゃん」


ん? もう少し寝たいよ……


「もうすぐ着くから。ヴェルシーおねちゃんもいると思うよ」


着く? どこへ? ヴェルシー?


目を覚ますと、知らない場所で寝ていた。

小さな部屋に私がいるベッド。テーブルでは、

トキノ先生とガン彗くんが座ってお菓子を食べていた。


ここは……どこ? 私、いつの間に……?


その奥には扉があって、反対側、私のそばには窓。

夜の荒野を飛ぶように流れていく景色が見えた。

まるで、魔法生物キューちゃんの背中にでも乗っているみたいだった。


「もうあたしが家を乗っ取ったから影猫を呼べたんだ。

瑠る璃おねちゃんとヴェルシーおねちゃんの為ならって、すぐ来てくれたよ」


なんだかトキノ先生は嬉しそう。


そっか。本当に、魔法生物キューちゃんだったんだ。

……魔掌ルドさんにも、あとでちゃんとお礼言わなきゃね。


「それじゃあ、私はどうすればいいの?」


「このまま別次元に近づくから、

特に瑠る璃おねちゃんは勇者くんに引き寄せられると思う。

だから、抵抗しないで向こうに飛び移ればいいよ。――とりあえずこれね」


まずは服を着なさい、と言われて、持ってきてくれた服に袖を通した。

着替え終わって鏡を見ると、胸から腰にかけて、細いチェーンが斜めに走っている。これは……デザイン?それとも何か意味があるのかな?


そこへトキノ先生が、大きな本を抱えてやってきた。

どう見ても魔法の本だよね?

そしてそのチェーンに、ずしりとした鍵付きの本をつなげた。

重い……


鍵は透明で、まるでガラス細工みたいにきらきらしていた。


「大事な鍵だから、なくしちゃだめだよ。

そしてこの本を開く時にはあたしがこっちで合図するからね」


本の中はわからないのね。

でも……トキノ先生は、私がすることをちゃんと教えてくれるから嬉しい。

たくさん考えなくていいって、ちょっと楽。


そして、いよいよヴェルシーと会える時が来たみたい。

窓の外を見ると、何かが点滅していた。あれって……合図かな?


どんどん近づいてくると、急に空間がゆがみ始めた。

でも、大丈夫。もう何度も体験してるから慣れてる。


このぐにゃぐにゃした感覚は、目に入るもののせい。

目を閉じれば平気なんだけど……私は、ちゃんと見ておきたかった。


空間が重なっていく様子、

点滅していた光がゆっくりに見えて――私を光が包み込んでいく。


光の中に、私の全部が溶けていった時、

きっと、意識も一緒に溶けてしまったんだと思う……。

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