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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第七章:天と地ノ亜神
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118話:私たちの世界も回って来たのかな?私も回りたい

「ま、まさか神殺し……」

「えへへ……」


絶望した顔のオーツさんと――得意げなトキノ先生――なんで?


今のオーツさん顔はまるで、

お父さまがルールを知らないゲームで私に負けた時の顔……そんな感じだった。


トキノ先生は「境界なんて必要ない!」みたいなことを話し始めたけど、

聞けば聞くほど話が難しくなってきて、私はついていけなくなった。


ガン彗くんはとっくに興味をなくしていて、

いろんな物をすり抜けるのが楽しいみたいで、ひとりで遊んでいた。


あ、やっと話が終わったのかな?

長い議論のあと、オーツさんが重たい足取りでこっちへ来た。


「瑠る璃さま、先ほどは失礼いたしました。

今後、コノカミは全力で協力させていただきます」


ええっ?

さっきの話で一体何がどうなったの?

……でも、ヴェルシーたちを探すためなら――心強いのは間違いない!


「お願いします、オーツさん!」


私に向けて微笑んでくれたオーツさんの厚い手で握手を交わした。


もう、トキノ先生との話もすっきりしたのだろう。

「ハハハ」と、遠くの村人にも届きそうな大きな笑い声が響いた。


「トキノよ、コノカミが獣種たちのために張っていた結界を、

今――崩しましたからね」


あ……これって、分かれていた世界が、ひとつになったってこと?

でも私には、何かが見えたり感じたりするわけじゃないから、よくわからない。


そんな私を見て、ぽけっとしていたのがバレたのか、

トキノ先生が声をかけてきた。


「今までは、西からの植物種だけだったけど……

これからは、ここ東の地からも獣種たちが、

人の地へ襲いかかってくるでしょうね――大変ですよ」


そう言って、とても嬉しそうに笑うトキノ先生。

自分が人間だったころは、これが“普通”の状態だったと聞かされた。


どうしてこんな事をしたのか聞いて見た。


この状態が続けば、勇者くんが気づくはず。

そして戻ってきた時に“勇者としての結果”を与えればいい。


そうすれば、もう他の次元には行かなくなるし――

その時には、捻じれもなくなっている。


……なんとか、私にもわかるようになってきたかな。


でも、私が生まれてからずっと安定していた世界が、

こんなに変化していくなんて――

これも、“時が回っている”ってことなんだよね。


……そんなふうに頭の中がぐるぐる回っていた、そのとき――


「瑠る璃おねえちゃん、あっちから獣種がくるよ。

この姿だと匂いはわからないけどね」


地面から顔だけ出したガン彗くんに、ひゃっと驚かされた。

けど……やっぱり可愛い。


ガン彗くんの頭をなでながら、私もその“くる”という方向を探ってみた。


ふわっと跳ねて、視線を高くすると――見えた。

少し跳んだだけで、すぐにわかった。


村のすぐそばまで、獣種たちが来ていた。

数十匹が、じっと村人を観察するように取り囲んでいて、

今にも襲いかかりそうだった。


「これは早いですね……今のコノカミには獣種を直接操る力はありませんが――

それでは行いますよ、先ほどの件を。トキノ、本当にいいのですね?」


トキノ先生に向けるオーツさんの眼差しは真剣だったけど、

うなずく先生を見て、ふぅと肩を落とすような“やれやれ顔”になった。

それから、軽く手を上げて――あれは、挨拶だったのかな?

オーツさんはそのまま、獣種たちがいる荒野へと歩いていった。


これから――ヴェルシーと、勇者くんと、レラを助ける作戦が始まるんだね。

トキノ先生……


「瑠る璃おねちゃん、ガン彗様。家に帰りましょ。

帰るときは、自分の体のことを考えてみて。すぐそばに感じるはずだから」


トキノ先生に言われて、私はそっと目を閉じた。

家にいる、自分の体のことを思い浮かべる。

そういえば――迷子にならないように、体と細い糸でつながっていた気がする。


その糸を手繰ってみると、すぐ近くに体の気配があった。

聞き忘れたけど……たぶんこのまま、体に飛び込めばいいんだよね?


――えいっ。

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