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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第一章:少女二人
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私の隠し事てもしかしていっぱいある?

「瑠る璃さぁ~、ご飯食べない?」


……ヴェル君が、魔法の話をしてない!? そのことに驚いて、私はぱっと起き上がった。


そういえば、かなり長い間ご飯を食べていなかった。

そう思った途端、お腹の空腹感が一気に蘇る。


ぐぐぅー……


ヴェル君は何を食べるつもりなんだろう?

それとも、何か出してくれるのかな? そんな期待を抱きながら、彼女をじっと見つめた。


「はいっ」


ヴェル君は私の手のひらに、大きめの飴玉をそっと乗せた。


私が何か言いたそうにヴェル君を見上げると、

彼女は何も言わず、口元に指を添えて「食べて」とジェスチャーする。


見たことのない飴玉だけど、特に怪しいところもないかな。

ぽいっと、迷わず口に放り込んだ。


……美味しい!


舌の上で転がすと、まるでシチューを飲んでいるような味が広がる。

肉や野菜の旨み、しっかりとした出汁の風味が、唾液と混ざってなめらかに溶けていく。


ずっと舐めていたい――そう思う間もなく、

普通の飴と同じように、ゆっくりと口の中で溶けて消えてしまった。


それでも、たったひとつで十分な満足感があった。


「ごちそうさまでした。ありがとうねヴェル君。

すごく美味しかったよ」


こんな深夜に食事をするのも初めてだし、

魔法食――? これも、食べたことのないものだった。


少し落ち着いたものの、今日は精神の浮き沈みが激しすぎた。

ヴェル君が言った「秘密」って、つまり私の弱点のことだったのか。


「ははっ……」


乾いた笑いがこぼれる。


「それと、『蝕界』を見通す力と、未来を見る力と~……

あとは世界のどこでも見えるやつ!」


「……え?」


いえいえ、私、そんな大層な力は持っていませんよ?


「なんでも見通す瞳っていうのは、昔からあるんだよね。

古文書にも書かれてるけど、封印されてるものが多くて、

詳しいことはわからないし……。でも、瑠る璃は持ってないの?」


持ってませんよ!予知なんてできたら、私、この部屋には来てないと思うけどね……


「でも、『蝕界』への耐性があるって考えたら、それだけですごい力だよね。」


ヴェルはさらっと言ってのける。


「『蝕界』の影響下では、どんな生物も耐性が落ちる。

比較的耐性のある精霊ですら、こっちの『物質界マテリアル・プレーン』に

来たがらないくらいだし……」


ヴェル君はそこで言葉を区切り、真剣な眼差しで瑠る璃を見る。


「絶対に隠さなきゃダメだよ。その力――間違いなく、狙われる。」


うん、君にもう狙われているけどね……。


はぁん、小さいため息をついて周りを見ればいつの間にか、

誕生日は終わっていた。


ヴェル君の部屋にはたくさんの時計が飾られていて、

どれも同じ時刻を指している。だから、きっと間違いない。

私の体内時計もそう言っているし……。


今日は女神さまに会いに行く日。でも、お昼からだし、もう少し寝ちゃおうかな。


「ヴェル君は寝ないの? いつ寝るの?」


「僕も寝るよ。たくさん寝ると、マナが回復するしね。」


「そうなんだ……。えーっと、ここで寝てもいいのかな?」


ヴェル君はこくりとうなずくと、そのままベッドに移動して、もう眠りについてしまった。


私はそっと、小さくつぶやいた。


「……ありがとう。」


……それにしても、私って、いくつ隠し事あるんだろう?

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