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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第七章:天と地ノ亜神
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113話:トキノ先生……これ、燃えてますけど……

勇者くんとレラは一体何を見てるの?

私たちを探してるのかな……でも、そんなところにはいないのに。


……あ。


私の“視線”に気づいてくれないかな、と思って、じっと見つめてみた。

――だめだ、二人は気づいてくれない。他にどうしたら……


「ねぇー瑠る璃おねえちゃん。みぃーと行こうよ。

あんなところにいたら、食べられちゃうよね?」


あの場所に行けるのは、たぶんガン彗くんが龍になるしかないよね。

でも今は村の中、まわりの人の目が――ちょっと気になる――


「えっ!?食べられちゃうって、何に?」


私が聞き返すと、ガン彗くんは空を見上げたまま言った。


「あー、もうダメ。魚たちが、あんなに来ちゃった。

大きいのもいるし……みぃーも食べられちゃう」


――魚?


思わずもう一度、空を見返した。


勇者くんとレラが、さっきとは違う。

何かから逃げるように走ってる……転んで、また立って走ってる。

でも――その“何か”は、私には見えなかった。


その時――たぶん、勇者くんが使ったんだと思う。

雷が、空に走った。


一瞬、強烈な光で何も見えなくなった。

……そう思った。でも、違う。二人が――消えちゃったんだ。


慌てて、ガン彗くんに聞いてみた。


その時だった。

「ゴッ……!」という、地面が震えるような音が空から落ちてきた。


村は、一瞬にしてパニックになった。

叫び声、逃げ出す人、どこからか火の匂いもした。


私も驚いたけど、そんな暇はなかった。


「ふ、二人が消えちゃった! ガン彗くん、見える?!」


「あきゅーん……みぃーのせいじゃないよね?」


ガン彗くんも慌てていた。

でも、もう一度、二人がまだ空にいるかを聞いてみると――

ガン彗くんは、静かに首を振っていた。


……やっぱり、どこかへ消えてしまったみたいだった。


どうしよう……ヴェルシー、どこにいるの?

この状況で来てくれないなんて、おかしいよね?


私は辺りを見回した。

空を見上げている村人や、火事を消そうとしている人たちばかりが目に入る。

ヴェルシーの姿は、見つけられなかった。


……はぁん


大きなため息をついて、私はガン彗くんを抱き寄せた。

二人でぎゅっとくっついて、気持ちを落ち着かせる。


「どうしよっか? ガン彗くん」


――聞いたところで、私より状況がわかっているとは思えないけど、

聞いておきたかった。


勇者くんがいなくなった今、

ガン彗は勇者くんたちに、付いて行く理由はなくなってしまったかもしれない。


このまま、まだ止まらない水をなんとかして、

お父さまのもとに帰ってもいいんじゃないかな――

そう思ったりした。


「みぃー、瑠る璃おねえちゃんといたいよ」


……そうか。


「じゃあ、一緒に帝都に行こうか」


ヴェルシーがいない今、勇者くんとレラを探すのは無理だと思う。

ここで待っていても、どうにもならないよね。


――そうだ。

とりあえず、宿題本に今の状況を書いておこうかな。

そのうち、トキノ先生が見てくれると思うし。


そうか――もっと早く見ればよかったんだよね。

大変な時って、忘れちゃうから。……トキノ先生、ごめんなさい。


私は腰につけていたポーチから、宿題本を取り出した。

見てみると、やっぱり。本の角が、点滅していた。


あれ? オルゴール、鳴らなくなっちゃったのかな?

ちょっとだけ本を振ってみたけど、音は出なかった。


何が書いてあるんだろう、と思いながらページを開いたその瞬間――


びりっ。

びりっ。


本の中のページが、一枚ずつ破れて、ふわふわと宙に舞い上がった。


その紙たちは、なんだか私たちを囲むように、ゆっくりと飛んでいた。

……でも、これはトキノ先生の本。


おかしなことには、ならないはず――だよね?


そう思って、ガン彗くんと一緒に、舞う紙を見上げていた。


やがて、最後の一枚がひらりと落ちてきて、完全に私たちを囲んだ時。

紙が燃えるような――いい香りがしてきた。


「……あっ」


ガン彗くんが、私の服の裾をぎゅっと引っ張った。

そっちを見ると、紙が――燃えていた。


ぱちぱちと、ひとつずつ火が広がっていく。


……トキノ先生、これは……お仕置きじゃないですよね?


私は、ガン彗くんをかばうように、ぎゅっと抱きしめていた。

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