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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第七章:天と地ノ亜神
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112話:勇者くん、そこに私たちはいないけどね……

確かに、降水はまだ続いているみたいだった。

私が集中して見ても、遠いせいか――


薄暗いカーテンのようにしか見えないけど、あれは水に間違いない。

もう、あれからまる一日くらいは経ってると思う。


ガン彗くんが、あのすごい濁流の中から助けてくれた時の嬉しさで、

その後のことなんて、まったく考えていなかった。


それにしても、この人は誰なんだろう?


顔立ちの彫りや話している言葉は、私たちと同じ系統なのに――

着ている服はまったく見たことがないし、話し方も何かが違う。

ちょっとしか対面していないけど、やっぱり違和感があった。


それに、あの降水を止めてほしいっていう要求も、

普通じゃないのはわかるけど……


ユキノキ国の軍団とも違うようだし、

どうしてあれがガン彗くんのせいだと思ったのか、そこがよくわからなかった。


「ガン彗さま、いかがでしょう。

よろしければ、コノカミと共に赴いて“あの水”を止めていただけませんか?」


物静かな口ぶりだったけど、困っているのはよく伝わってきた。


「コノカミの子たちが、

このままでは“そちら”の領域に踏み入ってしまうかもしれません。

そうなれば、またご面倒をおかけすることになるかと――

そのあたりは、ご理解いただけますよね?」


今度は少し、脅しめいた雰囲気が混じっていた。

この言い回し、お兄さまによく教わったことがある。


でも、これってガン彗くんのせいだけじゃないよね?

というより、ユキノキ国の軍団のせいじゃないのかな?


なんだか難しそうだけど、とりあえずガン彗くんに聞いてみた。


「ガン彗くん、あの降水は止められるのかな? 簡単なのかな?」


「みぃーが、あの場所に戻れば簡単だと思う……でも……」


ガン彗くんが嫌がっている理由は、ユキノキ国の軍団のことなのかな?

それだけでは、ないのかもしれないけど。


「でも、あれだよ。さっきみたいにぱくっと食べちゃえばどうなのかな?」


「……いっぱい食べたいけど……無理かも」


言いたいことは、なんとなくわかるかも。

私も一度にたくさん出されたら、かえって食べられなくなるし。

しかも、あれは精霊……

美味しいかもしれないけど、ただでは食べられないよね。


うーん、オーツさんにこの話が伝わるかなと考えたけど、

もうこれだけのやりとりだけで、オーツさんには通じたようだった。


「コノカミとしても、特に魔法使いの件では困っておりまして……

なんとか事態を収めたいところなのです。

それはさておき、ガン彗さま――

コノカミが責任をもってお守りいたしますので、

どうかご同行いただけませんか?」


「みぃーは、瑠る璃おねえちゃんと一緒じゃないと……

あと、勇者くんとレラも一緒がいい……」


「……それは困りましたね。

あっ、いえ、もちろん、

それはこちらの都合ですので……どうかお気になさらず。

では――皆さまで、できるだけ早めにお戻りいただけますでしょうか?」


ガン彗くんは私を見つめている。

私が決められる訳じゃないしなー。


とりあえず、勇者くんを探して相談するつもりだ。

そう思って、オーツさんにもそう話してみた。


「そうですか……勇者……くんですか……

では、コノカミも一度引き上げさせていただきます。

――なるべく、お早めにお願い申し上げます」


オーツさんは、荒野のどこへ行くのか、

まったくわからないけど――来た時と同じように、棒を担いで走って行った。


「ガン彗くん、一緒に探そうか――

近くにはいるはずだよね、勇者くんとレラ」


うん、と頷いて私について来てくれるガン彗くんは、

もしかしていくつ精霊を食べることができるのか、

そう考えているに違いない笑顔だった。


私は歩きながら、何度も後ろを振り返ってガン彗くんを見ていたら、

何度目だろう――?


ガン彗くんが、私じゃなくて――空のずっと上の方を見上げていた。


ん? と気になって、私もつられて上を見た。

空の高いところに、何かが見えた。


「あれ、なんだろうね?」


そう言い終わった時には、それが勇者くんとレラだとわかった!


なぜ? いつの間に、二人は空にいるの?

よく見ると、二人は何かを探すみたいに、歩きながらきょろきょろしてた。

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