表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第七章:天と地ノ亜神
114/179

110話:あれ、聞こえてた?ガン彗くんすごいな

帝都から辺境へと延びる街道なら、比較的に人が多く見つける事が出来る。

やっぱりこの辺りの人も勇者くんの事を以前から知っていた口ぶりだった。


でもその“以前”がいつの“以前”なのかはわからない。誰もわからないはずだ。

だって本当の勇者を知っているのはトキノ先生しかいないのだから――


あれ?トキノ先生の記憶が……私、知っている?話聞いたっけ?

トキノ先生が亜神になる前の話。違う世界の話。


勇者と仲間たちは世界の歯車を回していた。

それが世界の時を動かすという事なのだけど。


……”ちょっと動かした”だけで、力を持った勇者と仲間は人を辞めて、

神となってどこかへ行ってしまう。


でも時を操る事ができたトキノ先生は神にならなかった。


転生を繰り返し次の世界を歩いて、新しい勇者と出会った。

それを繰り返して繰り返していたら……勇者はもうどこにもいなくなっていた。


街道で勇者くんと出会う人々を見るたびに違和感を感じていたら、

突然に現れた記憶。


――いつの間にこんなトキノ先生の知識を知ってたのかな?


私のこの体質を明確に知っているのはヴェルシーしかいないから、

彼女が勝手に知識を押し付けたのかもしれないけど、

私が知ったところで何か変わる訳じゃないからね。


くすくすっと独り笑う私にガン彗くんが声を掛けて来た。


「みぃーにも聞こえたよ、勇者くんの話」


えっ、そんなことある? 偶々だよね……。


「パピーに聞いた事あるかも、勇者ルデオと仲間たちのお話。

天支ミラ花とか英雄クォルたちと一緒に、

パピーも邪悪王を倒したんだよ、たしか」


えっ、へぇー。

私はガン彗くんが帰って来てくれてよかったと心の底から思った。


きっとガン彗くんも人の気持ちを読み取れるのかな?


「それじゃあ、みんなそのうち”世界を平和”にして神さまになるの?」


「みぃーはならないかなー? パピーは違うでしょ?」


うんー? それは私もわからないよ。


「瑠る璃おねえちゃんはなるでしょ? 神様に。勇者の仲間でしょ?」


ほぉう、私、神さまになっちゃうのかな? えへへ……。

なんだか嬉しくなった――でもまって……神さまになったら消えちゃうよね?


「私……ただのお友達かもしれない……」


「でもまだ邪悪王は倒せないよ、みぃー子供だし……」


ガン彗くんは照れているような、困っているような顔をしていた。


そうか、子供だもんね――

邪悪王って誰なんだろう? どこかにいる王様だよね?

その人を探し出して戦うのかな。とりあえず探したいな、邪悪王さまを。


またヴェルシーに頼らないといけないな、当然トキノ先生は知っているよね?

まだ覚えだしてないかも知れないけど……


「あ、ガン彗くんは邪悪王様がどこにいるのかわかるのかな?」


「んー?」


そうガン彗くんは首をひねりながらそう言った。


「そうか、いいよ。私が見つけるから……」


「みぃーわかったかも、邪悪王がいないから勇者もいないんだと思う」


それってどういう意味なんだろう?

ガン彗くんがいたずらで言っている訳ではなさそうだし、

一生懸命考えて思いついた感じがする。


もう少し私にわかるように話してくれるように頼んでみよう。


「あっちに勇者くんはいるじゃない? いないって言うのはどういう事なの?」


ちょっと焦ってガン彗くんに聞いちゃったけど、気にしていないようだった。


「パピーが言ってたの、勇者と邪悪王はいっしょだって。だからそう思ったの」


そうか、ガン彗くんの考えでは、本当に邪悪王様がいないなら、

勇者もいないとなるのか。


でもとりあえずトキノ先生が勇者だと言っているから勇者はいるんでしょ?

私としては勇者ロテュが確かにいる!そう思っておいた。


ガン彗くんに「いろいろ教えてくれてありがとう」と言ってから、

今いる街道沿いの一番辺境でも、あるんだーと思いつつ、

小さな店があったので覗いてみた。


少し汚れた服ではあるが、

この辺りの人々にしか着られない、

独特なデザインの衣装をまとったおばあさんがいた。

売っている物も生活での小物……あ、ここのデザインの靴があった。


ちょっとその靴を手に取って見ようとして手を伸ばした時、

おばあさんも一緒に私の手を取った。


そのとき、なぜか手ではなく金属の感触がして、「ガシャ」っと音を聞いた。

手には手枷がはまっていて、その手からおばあさんの顔を見ると。


ニヤニヤと笑いながら「ごめんねー」っと言ってた。


私は「いえいえ」とそう答えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ