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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第一章:少女二人
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君の部屋に来たい訳じゃなかったのに

道は覚えていたけど、私の内室の前まで女官に送ってもらった。


「ありがとうね――そういえば、あなたの名前を聞いてなかったわ。教えてくれる?」


「えっ、あ……ぁ。イースです」


やはり伏し目がちで、緊張しているのか声も震えて小さかったが、なんとか聞こえた。


「ではしっ、失礼いたします」


私の部屋から少し戻ったところに待機部屋の扉があり、女官イースが静かに開いた。

彼女は、私が部屋に入るまで見届けるみたいで、扉の前で私を待っていた。

私は微笑んで自室に入り扉を閉じた。


私は、こんな夜中に何をしようかと考えた。

……いや、考えようとする前に、目に映るものを見て思考が止まった。


「おかえり~瑠る璃。部屋に帰ろうって思ったでしょ?だから戻れるように繋いどいたよ」


「ほー、そーですか、そーですか」


繋いだって何をですかぁーいつ繋いだの?!


うみゃーーー!私はベッドに飛び込んだ。


このベッドに勝てるものなんて、何もないかもしれない。

これさえあれば、もう十分だよ……。


深呼吸しながら香りを楽しみ、手足をばたつかせながら感触を堪能する。

このまま、ずっと現実逃避を続けていたい――。


はぁー、私は顔を持ち上げ、ヴェル君がどこにいるのか探した。


大きい宝石が転がっている……

私は、一度見れば高価な物を判別できるし、王宮にいればその価値の程度も覚える。

この距離からでも分かるけど、実際に手に取って確かめたくなった。

そしてベッドを降りると一つ拾い上げた。


……一千万円。もう一つ、こっちは……三千万円はするよね。


「これ、ちゃんと飾っておいたほうがいいよ?」


私の実家では、もちろん宝石は宝石箱や、もっと厳重な場所にしまわれているものだ。

しかしヴェルは、散らばった宝石をじっと見つめていたかと思うと、

視線を外し、ぽいっと無造作に投げ捨てた。


「それ、弱い宝石だからいらなーい。強い宝石じゃないと、いい魔法を付与できないからさ。」


「それなら、机の上の台座に乗っている宝石は強いやつなのね?」


「うん、それなら三億円で売れるかな。」


……やっぱり、のぞかれてる?


私は、ヴェルに見えないように、ちょっとだけ苦い顔をする。


「魔法付与した宝石って、本当に高いんだね。魔法使いってすごい。なんでもできそう。」


「なんでもできるよ、魔法はね。ただし、精霊や新神由来の魔法じゃダメだけどね。

その二つの界域は、仮の魔法しか使えないしさ。今度、順番に詳しく教えてあげるよ。」


はぁ? 別に魔法使いになるわけじゃないけど……

まぁいいか。凛々エルお姉様も、魔法は重要みたいなこと言ってたし。


私は、思い出したように質問をした。


「魔法って、なんでもできるなんてすごいわね。

だから、私の隠していることも分かっちゃったのかしら?

私が本当に隠しているものを当ててみてくれる?」


もしかしたら、ただの当てずっぽうかもしれない。

正確に分かっているわけじゃないかもしれない。

私はヴェルに背を向け、緊張しながら聞いた。


「瑠る璃の秘密は分かってるよ。君の秘密――それは……」


もぅ、もったいぶらないで~


「魔法耐性がゼロ。」


「んっ? なに言ってるの?」


「瑠る璃さ、僕の魔法に対して、ま~~ったく耐性がないんだ。

本来、すごくかけるのが面倒な精神魔法も、

すぃ~っとかかっちゃうし、なんでも簡単にかかる。」


「それって、どういうことなの?」


私は振り向いて、真剣な表情でヴェルに聞いた。


「人は無意識に、魔法にかからないよう抵抗するものだけど、瑠る璃は『どうぞ~』って感じ。

たとえば、あの窓から飛び降りろって魔法をかけたとするよ。

普通の人なら途中で魔法が解けるけど、瑠る璃は……そのまま飛んじゃう。そんな感じかな。」


「それって、やっぱりダメなことだよね?」


私って、もしかして自分があぶないって気づいてない?


「うん、平気、平気。僕が守ってるからね。」


――そうか、大丈夫か。……大丈夫? 本当に? 嘘じゃない? 騙されてない?


「ヴェル君、ごめんね。また寝るね。」


私はそう言って、ベッドの前にきて、ぱたんと倒れ込んだ。

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