表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第六章:遷進世界
104/179

100話:幼龍ガン彗君は空から来たみたい

ピッ、と音がしたような?ここは私の夢の中だ……

もうすぐ目が覚めるかな。


そうだ!そうしたら見たことのない生物がいたから探そう。


でも……あれ?元々、どうしてここにいるんだっけ?


あ!そうか。ロテュとレラについて来ただけだった。

起きたら聞いてみよう。ここで何をするのかを……


目を覚ました時――岩の上で寝たはずだから、

体がたくさん痛いだろうなぁーと思った。ほんの一瞬だけ。


――目が覚めた、……何故か柔らかい場所に寝ていた。

えっ?岩が……柔らかい!?手でさわると、

ぽよーんと心地よく跳ね返った。


……でも、見た目はたしかに、岩だった。


まだ少し眠気まなこで、朝日を感じていた。


「おはよ、瑠る璃」


声のする方を見ると、ヴェルシーがいた。あ、帰ってきてたのね?それでね。


――でも……他に誰もいなかった……


「ロテュもレラもいないよ?どこに行ったの?」


私はきょろきょろと辺りを見た。


「僕が来た時には誰もいなかったよ」


昨夜、私寝る前はどうだったっけ?思い出してみた。


寝ていた場所にはちゃんと憶えがある。

だから、ロテュとレラはきっと朝早く、

私を置いてどこかへ行ってしまったのかもしれない。


とりあえず、ふたりを探さないといけない――

そう思って、ぽんっと反動で立ち上がり、まわりを見渡してみた。


すると、私が立っている岩山の麓一面に色々な花が咲いていた。


「こんなに綺麗な植物種があったの?」


昨日の夜にはまったく気づかなかった。


花や草も見たことがないし、

私たちが知っている植物種とはまったく違うように見える。


……あれはなにが違うんだろう?


「――あれが良性植物種だと思うよ。

僕たちの世界の植物種に出会うと、駆逐されてしまうような弱い植物種。

この荒野と、深くて暗い霧の谷で、なんとか守られてるように見えるね」


ヴェルシーがそう教えてくれた。

私はなぜかわからないけど感動していた。


私は、昨日からの出来事を整理したいと思っているのに、

次から次へと新しいことが押し寄せてきて、頭の中がいっぱいみたい。


「僕は……僕の中でいっぱいになっていた知識が、

どんどん頭の外へあふれて、現実になっているような感じだよ、瑠る璃」


ヴェルシーは私に微笑みかけて、私の両手をそっと握ってきた。


「君にも、また少し知識をあげるよ。あと、マナもね」


ヴェルシーからもらう知識は、いつもとても便利だ。


一生懸命に覚えなくたっていいんだしね。

――でも、私は忘れてないよ、常に守ってもらわないといけないことを。


こんなに簡単に、もし悪意ある魔法が私に襲ってきたら、

どうなってしまうか……。

ヴェルシーはいつも、知識と一緒に“注意”も教えてくれる。


「ありがとう。――いままで本の中でしかなかったことが、

現実の世界で次々と発見されている感じだね」


ヴェルシーも、トキノ先生も、「時はまだ動いていない」と言うけど、

私にとっては、もう毎日が――新鮮な世界に見えているよ。


――あっ、ヴェルシー。あっちに誰かがいるよ。


私は見てもいないのにわかった――感じ取っていた。

そうか……これは、ヴェルシーの魔法を私は感じとっているのね。


「さっきから僕たちを見ているんだ。誰だろう?」


小声でそう言ったヴェルシーに、こころあたりがある私は振り向いた。


少し高い位置の岩の隙間から、

私たちにわからないように、ちらっとこちらを見ている子供がいた。

なんだか、とても戸惑っている様子に見えた。


「何にもしないよ。昨日の夜、私に声をかけてくれた子だよね?」


なるべく優しく声を掛けた。

他にも何か言った方がいいか考えていると、

その子供は崖の前まで出てきてくれた。


その子供は、ぼろきれだけを身につけていた。

そして今まで気づかなかったけど、頭に細長い角が一対あった。


え? 魔法人?私は驚いた。


でも、すぐその子に言ってあげた。


「おいでよ、大人はいないよ、なんでも聞いてあげるよ」


他にも魔法人の知り合いはいるし、

少しは災害の扱いをルクミィさんに教わっていた。


私たちと同じ子供に感じる。そう思った。


「うん。おねえちゃんたちは、だれ?」


そう言って、その程度の崖は余裕らしく、

ぽーんと跳ねて裸足でぺたぺたと近づいてきた。


「お名前はなーに? 私は瑠る璃。彼女はヴェルシーね」


「みぃーは、ガン彗ガンスイって言うんだ。

それでね……それで……落ちてきちゃった……」


ガン彗くんは空を指さした。私もその空を見た。

太陽と、昼間でも見える七つの月。それは、いつもの空だった。


月から落ちて来たのかな? そんなことを考えていると、ヴェルシーが言った。


「この子は“近いけど”魔法人じゃないよ。

魔法語で会話できるし、古代魔法も使えるみたいだけど、

瑠る璃みたいに独自の神様の力があるね――龍神人かな?」


……ついて行けない私は、

ヴェルシーの話をとりあえず無視して、ガン彗くんに聞いてみた。


「どうやったら帰れるの? その空には」


私が首を傾げながらそう聞くと、


「“あの”大人たちが邪魔するんだ!」


ガン彗は緊張した声で言って、今度は麓を指さした。


そこには、数十人の迷彩した者たちが、この岩山を登ってこようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ