SF作家のアキバ事件簿197 宇宙往還機SOS
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第197話「宇宙往還機SOS」。さて、今回はアキバ発スタートアップのロケットプレーンが初フライトで爆弾テロに襲われます。
捜査線上に浮かぶ伝説のスナイパー"ゴル子13"。執拗にヲタッキーズを狙う彼女の背後に、科学ギャングの影が浮上する時、真実の愛に目覚めるのは…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 メイデイ!レインボーラッキーバード
今宵の御屋敷は"ミユリたん"!
ミユリさんのお誕生日イベントw
「3!2!1…乾杯!僕達のメイド長、ミユリさんに!」
「ヲタクに!みんなアキバでつながってる」
「乾杯!」
で、御屋敷は高層タワーの最上階にあるンだけど…
天空から電気街へと一直線に落ちる真っ赤な彗星!
「きゃあ!」
「何なの、アレ?!」
「UFO?」
そのママ、中央通りのドンキ前に落下スル。
「嫌な予感w」
「現場を見てくる!」
「私達に任せて、ミユリ姉様!」
ヲタッキーズのエアリとマリレが窓から飛び出す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通りの、とあるゲーセンの地下深く、秘密裡につくられた、南秋葉原条約機構の司令部。
SATOは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗するために設置された組織だ。
「結局、お騒がせな"紅い彗星"は、中央通りに墜落したのだけど…カプセルだったのょ」
「気を付けて!アキバ侵略の先兵では?」
「そーいえば怪しい人影が…」
SATO隊員が駆けつける前にムダに黄金のカプセルを開けた者がいたらしい。で、カプセルを開くと…
「いやーん。指先から力が抜けてく感じ」
「らめぇ。立ってられない」
「ヲタッキーズ、大丈夫か?」
カプセルの中にはパープルの結晶。その輝きを見るや、みるみる超能力を喪失するヲタッキーズ。
「コレは"不機嫌ニウム"?」
「え。スーパーヒロインから超能力を奪う放射性同位体?星空からアキバに落ちて来たの?」
「宅配便の誤配送かしら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局"不機嫌ニウム"は、再びムダに黄金のカプセルに収められSATOが保管。その場は解散となる。
翌朝、アキバは何事もなかったかのような大騒ぎ。
「いよいよ"レインボーラッキーバード"の打ち上げね!ミユリ姉様、モチロン見に行くわょね?」
「行かない。だって、今日はコレからテリィ様と"お誕生日特典ピクニック"の予定なの。久しぶりに楽しもうと思ってる。確かに"不機嫌ニウム"も気になるけど。何で廃棄しないのかしら」
「テリィたんとピクニック!リア充ですね。流行りのグランパコア?」
"レインボーラッキーバード"はアキバのスタートアップが開発した宇宙往還機だ。
軌道高度まで達する弾道飛行を行う旅客機で秋葉原〜地球裏側までを数時間で結ぶ。
で、今日はアキバ特別区大統領を乗せて初フライトだ。
「あらぁ…でも?」
「な、何ょ?」
「姉様、自分で納得してナイ。内心、ピクニックより打ち上げを見たいのでは?」
慌てるミユリさん。
「え…違うわ!ホンキで楽しみ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「…打ち上げまで、ついに数時間を切りました!初の商用宇宙往還機"レインボーラッキーバードA-3000"です。初飛行に成功すれば、アキバ特別区の大統領専用機としての採用が決まっており、大統領府がローンチカスタマーとなる予定です!」
大小様々なモニター画面が並ぶ大統領執務室。今日は全画面がニュースショーで埋め尽くされる。窓の外には、高層ビルを1本使ったロケット発射場が見える。
「あのね。私は初フライトに招待されてたけど断ったの。どーせ初フライトなんて、無意味な人生に答えを求める人で一杯ょ。で、テリィたんは答えを出したの?」
「え。ヒカリ、何の答えだっけ?」
「テリィたんの第2の人生ょ!」
世紀の瞬間をマルチ画面で見ようと集まる大統領府スタッフを前にパワフルなヒカリ大統領が吠える。実は彼女とは、学生時代に同棲してたコトがアルw
「え。やりたい仕事?未だ決めてナイけど」
「え?何で?」
「だって!古巣の"第3新東京電力"を卒業して、未だ12時間だぜ?しかも、その大半は寝てたし」
大統領府に呼びつけたりせズ、ほっといてくれ。
「私は、テリィたんに王国を築くチャンスを与えたのょ?なのに寝てたワケ?」
「夜だからな」
「私の昨夜の睡眠時間を知ってる?2時間ょ?私は、人生を目一杯に生きたい。だから、テリィたんも怠けないで!」
彼女は、学生時代から変わらない。
「実は、寝る前にネット診断をやった。スキルを入力するとピッタリの仕事を見つけてくれる。で、僕にピッタリの仕事は…八百屋だっ!」
「何ソレ?果てしなくバカバカしいわ。天職はネットじゃ見つからない。なぜなら、答えは自分の中にアルから。ヲタッキーズは、超能力がアルからヒロインなの?違うでしょ?人類が進化スル必要がアルから彼女達はスーパーヒロインなの」
「う、うん…」
アキバでは"リアルの裂け目"の影響で、腐女子のスーパーヒロイン化が止まらない。果たして、超能力に"覚醒"した彼女達は、新しい人類なのか?
「自分を見つめて。人生で何をすべきか見つけ出して。あと48時間あげる。必ず答えを見つけて。ソレまで…get out!」
大統領府を追放される。同棲時代と同じだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷の裏を潜り酒場風にしたら、スッカリ居心地が良くなっちゃって、今じゃみんなの秘密基地だ。
「ミユリさん、ただいまー…うわっ!セパレートタイプの(大好物ヘソ出しのw)メイド服だっ!」
「やはりテリィ様とのピクニックは、リゾート気分のメイド服かなって。大統領府からお戻りになる前に、急いで"胸の谷間"もつくっておきました」
「…そっかー。ピクニックに逝けるか、わからなかったから、コレ買って来た。街中華"新秋楼"の鉄板焼き棒餃子とカニのあんかけ炒飯」
熱々の湯気がプラ容器から立つ。
「わ、大好き。うるっ」
「"レインボーラッキーバード"の打ち上げ実況放送を見ながらマッタリしよう」
「え。ソンなの見なくても平気です」
僕は首を振る。
「宇宙大好きのミユリさん。御屋敷のソファでマッタリ地上波画像を見ても良いと思うょ。妄想は現実からのピクニックさ。場所は選ばない」
「そーですか?!じゃミュートで」
「ヒザまくらだー」
そして、僕達はソファに寝転びながら、発射炎を噴き上げて、無音で飛び立つ宇宙往還機を見送る…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
中継は、真夏の蒼穹へ点となって消えて逝く宇宙往還機を追って終わるのだが…
その数分後、成層圏の果てに到達したメインエンジンが、紅蓮の焔を噴き出すw
「ハンナ機長、エンジントラブル!」
「オートパイロット解除。手動に切り替えて」
「初フライトでいきなりゲームセットだ!」
No.2エンジンが宇宙空間で無音の爆発を起こす。破片を撒き散らし、たちまち操縦不能に陥る。
手動に切り替えて衛星軌道を離脱、エンジンから長い焔を吐きながら、大気圏再突入コースへ!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御成街道の架道橋脇にある雑居ビルの大型ビジョンが臨時ニュースに切り替わって絶叫を始める。
「臨時ニュースです!"レインボーラッキーバード"を光学追跡していたアキバ天文台によりますと、衛星軌道に達した同機のエンジンが爆発した模様です!」
「ええっ?何だって?」
「詳細は、分かり次第お伝えします。"レインボーラッキーバード"の初フライトには、ハンナ機長以下、招待されたVIP含めて22名が搭乗しています!…お願いだ、ヲタッキーズ。彼女達が、この放送を見ているコトを祈ります!」
アキバのヲタク達が、一斉に空を見上げる。
「見たから!」
「見たわ」
「姉様、ピクニックは?」
電気街からスーパーヒロインが飛び立つ。たちまち
ネットニュースの動画には声援の弾幕が張られる。
「ヲタッキーズ、GO!」
「頼むぞ、スーパーヒロイン!」
「"レインボーラッキーバード"を救え!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「メイデー!メイデー!こちらレインボーラッキーバードA3000!メイン融合エンジンNo.2に故障発生。操縦システムがダウン。本機は自由落下状態…いいえ、墜落してる!」
「レインボーラッキーバードA3000。こちらアキバコントロール。緊急事態を宣言スルか?」
「宣言するわ!ギブアップよっ!」
コクピットでは宇宙服を着たハンナ機長が萌える機体を巧みに操り大気圏への突入角を探っている。
右のエンジンから火を噴く宇宙往還機は熱圏へと侵入、蒼天に浮かぶ雲海を突き破り降下を続ける。
「あ、アレは?」
「えっ?」
「ヲタッキーズ?助かったわ!」
宇宙往還機の最先端に取り付くマリレ。
ロケットガール装備を逆に向け急制動。
「手伝う?」
「エアリ、遅い!」
「ごめんね、渋滞でw」
続いて現れたのはエアリで、妖精の彼女は機尾に回り"消火呪文"でエンジンの火を消す。ところが…
「ぎゃ!」
「うっ…」
「どーしたの?エアリ?マリレ!」
狙撃されてる?電気街の何処かに1万m上空のスーパーヒロインを狙い撃つスナイパーがいる!
被弾した彼女達は機体を放し宇宙往還機は大きく姿勢を崩す。アキバの摩天楼がグングン迫るw
「ハンナ機長、申し訳ナイけど私1人ではラッキーバードの飛行姿勢を維持出来ない。機体を神田リバーに不時着水させましょ!」
「ムーンライトセレナーダー?どーしたら、ソンな(おバカなw)発想が…とりあえず、了解!コレで最後の交信になるかもしれないけど、心からthank you」
「御搭乗の皆様、本機は間もなく着"水"します。ベルトをお締めください!」
可変翼を全開にした宇宙往還機は、白鳥が舞い降りる優雅さで、鮮やかに神田リバーへと滑り込む。
実際は激しい横風を受け機体を斜め27度に傾けての着水だ。ハンナ機長の卓越した操縦手腕が光る。
「最低のフライトだったけど、最高の気分ょ。ムーンライトセレナーダー、thank you!」
「私達、最高のチームでしたね。ハンナ機長!」
「ヲタッキーズと御一緒出来て光栄。でも、貴女達とチームを組むのは、コレで最後にしたいわ」
ハンナ機長が重厚な宇宙ヘルメットのバイザーを上げる。中から金髪の美女がカメラ目線でウィンク!
第2章 コードネーム"ゴル子13"
"レインボーラッキーバード事件"で万世橋に捜査本部が立ち上がる。敏腕ラギィ警部の陣頭指揮。
ヲタッキーズがラギィを囲む。僕は彼女とは前任地で"新橋鮫"と呼ばれていた頃からの付き合いだ。
「ラギィ!私達、"不機嫌ニウム"で狙撃された!対スーパーヒロイン兵器の音波銃は"不機嫌ニウム"を振動子に使うと威力が倍増スル。高度1万mでなかったら、私達はヤラれてたカモ」
「でも、生きてるじゃない。この前、中央通りに落ちた隕石から、警察より先に"不機嫌ニウム"を盗んだ者がいる。ソイツが"レインボーラッキーバード"を囮にして貴女達をおびき寄せ、"不機嫌ニウム"で殲滅を謀ったのょ」
「そんな…しかし、高度1万mの私達を音波銃で狙い撃つなんて。ソレが可能な腕前を持つ狙撃手ナンているの?」
その場の全員が、ラギィ警部を注目。
「いるわ。彼女の名は…"ゴル子13"」
「ええっ!成功率120%を誇る超A級スナイパー?今まで素顔を見た者は全員が死亡しているという"ウワサ"の…」
「YES。腕利きの女傭兵ょ。科学ギャングや次元パイレーツとも関連が深い。誰かが大物を消したいと思う時、必ず姿を現わす女」
ラギィの話は続く。
「"レインボーラッキーバード"のエンジンに仕掛けられた爆弾は、客室からのリモートで起爆してる。具体的には、座席23Bの下。しかも、この席はラッキーバードが離陸スル直前にキャンセルされてる…乗客名簿では、23Bに誰が座る予定だったと思う?」
「まさか…」
「デューク東子ょ」
誰かのゴクリと唾を飲む音。
「マジ?ソレって"ゴル子13"が好んで使う偽名じゃナイの!」
ほとんど本名で搭乗してるも同然だが、捜査本部には陰謀を見破った的な高揚感が漂う。意外に浅いw
「"ゴル子13"。彼女は、秋葉原の地下に身を潜めてる。売れない地下アイドルのように」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ゴル子13"は地表にいる。神田リバー沿いにある廃倉庫。エンジニアが壁に向かって熱弁をふるう。
「"スーパーX2.5"は完璧なリモート兵器です。元は対ネオ・ゴジラ兵器として開発されたモノですが、電撃系スーパーヒロインを制圧スルには最適の機動兵器として完成させました」
「操縦は?」
「リストラされた特別戦略作戦室から払い受けたコックピットで行います。今宵は、人に背中を見せない貴女のために壁際に御用意しました。御着席ください、ゴル子さん。ベルトも締めて…気分が出ますょ」
「サンダーミラーの照準システムは?」
「ココを押すとサンダーミラーが展開し、自動照準・自動追尾します。引退したスーパーヒロインを実験台に、次々殺害しながらAIの性能を高めて来ました。ネオゴジラもギリギリまで追い詰めた。スーパーヒロインなどチョロい」
"黒いアイロン台"と呼ばれる機体は、底部の6つのノズルからジェット噴射して機体を浮上させる。
「OK。アタシの顔を見たアンタへの報酬は、上海のオフショア口座に約束した額の倍を…」
「倍?そりゃどーも!」
「…振り込まズに済ませるわ」
標的ロックオン。近接防御用の高速チェーンガンがエンジニアをズタボロの射殺死体に変えてしまうw
「"宇宙往還機作戦"は失敗したけど、今からプランB。ハンナの勲章授与式場をヲタッキーズの墓場に変えてやる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝。秋葉原特別区大統領府の閣議室。
「みなさん!"神田リバーの奇跡"ハンナ機長がお見えです。全員ご起立を!」
「こんにちわ、みなさん。この度は"ヲタク栄誉章"の授与、ありがとうございます」
「はじめまして」「どうも」「光栄だわ…」
秋葉原特別区の閣僚1人1人と握手して回るハンナ機長。最後に構えるヒカリ大統領は…ん?渋い顔だw
「ハンナ」
「ヒカリ?また会ったわね。早速だけど大統領府は"不機嫌ニウム"を隠し持ってルンだって?」
「YES。秋葉原には危険なスーパーヒロインも多い。邪悪な彼女達から自衛スル術が必要だと判断した」
"神田リバーの奇跡"は、食ってかかる。
「"不機嫌ニウム"を隠し持ってる特別区大統領ナンて最低ょ。スーパーヒロインへの敵意剥き出しじゃナイの」
「 ハンナ。貴女、大統領の私に命令スル気?どちらにせょ、私がヲタッキーズ相手に"不機嫌ニウム"を使うコトはあり得ないから」
「でも、貴女が大統領を辞めたら?次の大統領は使うでしょ?ソレに人類補欠委員会から使えと言われたら貴女は?ヲタッキーズは今、この瞬間も秋葉原を守ってるのょ?私達の盾となって」
終始にこやかに懇談してるようで、実はトンでもない議論を交わしてる。
今回同じ勲章を受けるコトになったヲタッキーズとチラ見してヒヤヒヤw
「微妙な雰囲気ね。2人は昔、何かあったのかしら。テリィたん、知ってる?」
「え。(実は2人とも元カノだがw)何も知らないょ…しかし、。ハンナ機長って良い匂いがスルな」
「バカ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
閣議からの帰り道。変身を解いたムーンライトセレナーダー、つまり、ミユリさんと昭和通りを歩く。
「"神田リバーの奇跡"ハンナ機長に対するヒカリ大統領の態度、何だか圧倒的に変でしたね」
「…ヒカリは前から制服系に百合の気あったけど、あれホドとはなー。前に地底超特急の運転女子に酔った勢いでトンでもないメールを送ったコトもあるンだ」
「あら、制服フェチさんでしたか…ところで、この前はテリィ様の"TO特典ピクニック"を中断してしまって」
急に"推し"と"ヲタ"の会話になるw
「"レインボーラッキーバード"が電気街に墜落したら大惨事になるトコロだった。僕の推しはスーパーヒロインなんだから仕方ナイさ」
「いいえ。あーゆーのは絶対にダメです。必ずリベンジします。次回のために、一緒にピクニックのタイムスケジュールを綿密に組み、その上で着実かつ不可逆的な実行を図って逝くのは如何でしょう?」
「そ、それは…ロマンチックだな」
ミユリさんは、実は真面目な人なのだ。
「もう覚醒する前のシンプルな人生には戻れません。TOとは上手くやって逝きたいのです」
「え。そーなの?僕がTOだから上手くやって逝きたいのか」
「ええ。TOだからです」
さっきまでの"最後はキス的な盛り上がり"が急激に萎えて逝く中、僕のスマホが鳴る。
「うん…わかった。ヲタッキーズ、出撃します」
「テリィ様、何?」
「SATO司令部からだ。ゴル子13がアキバ征服のためにヲタッキーズに宣戦を布告した。昭和のマリヲネットSF"妙90"から抜け出たような機動兵器が首都高上野線を越え、蔵前橋通りからアキバに侵入、僕達の勲章授与式に向かう大統領専用車を追っかけてる。ミユリさん、全力出撃」
第4章 決戦!タイムズスクエア
「上空の警戒を厳重にしろ!」
大統領専用車の先導バイクから警戒命令が出る。何しろ背後から対ネオゴジラ兵器の"スーパーX2.5"が追っかけて来るのだw
「ヲタッキーズ、エアカバーに入ります!大統領専用車はスピードを落とすな!」
「ヤレヤレ。やっぱり現れたわね?晴れの"ヲタク栄誉賞"の授賞式が台無しだわ。"次期選挙映え"を狙ってたのに!」
「死ね、ヲタッキーズ!」
一方、コクピットに座る"ゴル子13"は照準モード。 スコープに映るヲタッキーズをロックオンして容赦なく引き金を引く…
「"不機嫌ニウム弾頭"のAAMだわ!マリレ、気をつけて!」
妖精担当のマリレは"防弾呪文"でAAMを跳ね返す。しかし、ロケットガール装備のマリレは…
「いやーん」
マリレを狙って"スーパーX2.5"が放ったAAMは執拗にホーミング、辛くもロケットガール装備のCIWSが起動して撃墜スル。
が。爆風で…
「ぎゃう!」
中央通り沿いの高層タワーの壁面に叩きつけられて失神。ロケットガール装備も破損スル。 が、その間も自動でAAMを追うCIWSは残る2発のAAMを撃墜。
「ありがとう、ヲタッキーズ。秋葉原もゴッサムシティ並みにデンジャラスな街になったわね」
ヒカリを乗せた大統領専用車は、中央通りを右折、タイムズスクエアに回り込む。
追う"スーパーX2.5"も悠々とカーブを切り、タイムズスクエアへとやって来る!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
電気街口から出た、昭和な旧家電店が並ぶ界隈は"アキバのタイムズスクエア"と呼ばれている。
僕達が昔、ストリートファッションショーとかを仕掛けた場所が今回の栄誉賞授与式の会場だが…
今は戦場だ!
サンダーミラーは展開したが、肝心の電撃攻撃がなく拍子抜けした"スーパーX2.5"はテレ隠し?からかミサイルを乱発スルw
「きゃー!」
「助けてくれぇ!」
「神田明神ょ救ひ給へ!」
たちまち爆炎と爆煙が巻き起こり、ヲタクが吹っ飛び、火の手が上がってステージも焔に包まれる。
さらに、バブルの頃に建ち、コロナ後も全館閉鎖となってた家電ビルが…傾く? 何と!倒れるのか?
「ビルの構造的弱点を爆破されたわ!ラジ館側の柱だけが木っ端微塵よっ!デス・スターを狙う光魚雷みたいなピンポイント攻撃だわ!」
「スター・ウォーズネタより、何とかならないの?!」
「ラジ館側の壁面を補強しなきゃ!」
いち早くビルに飛び込み、的確な指示を出すのはハンナ機長だ。 マリレは、応急修理のロケットガール装備を全開モード。傾いたビルを推し戻すw
「エアリ!私は手を離せないわ!ソッチで何とかなる?」
「えっ?でも。どうやって?」
「ハンナ機長の指示に従って!」
ハンナ機長が指差す先に、改修用の鉄板が平積みになっている。エアリは頷き、精神を集中し"クレーン呪文"で鉄板を重ね、柱を補強。 さらに、奥の手の"溶接魔法"で鉄板を溶接! ビルの外でマリレが恐る恐る手を離すが…ビルは倒壊しない!
「やったね、ヲタッキーズ!」
「ハンナ機長、間に合いましたね!」
「お手柄よっ!私達、またまた最高のチームだったわね!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ムーンライトセレナーダーは旧万世橋駅の駅務室へと地下階段を駆け降りる。
アキバ地区のインターネット幹線に隣接した駅務室は"闇のゲーセン"として有名だ。
「くらえ…くそっ…ソコょ!」
ネット幹線に直結したマシーンが生み出す0.00001秒の差が勝敗を決する非情の世界。
今も一心不乱にゲーム…いや"スーパーX2.5"のリモートに熱中してるのはゴル子13。
次の瞬間、音波銃を抜いて振り向くゴル子13。ムーンライトセレナーダーは"雷キネシス"のポーズ!
「アンタがムーンライトセレナーダーだね?電撃系だっけ?あいにくアタシは絶縁下着をつけてるからアンタの必殺技"雷キネシス"とやらは効かないよ!」
「ソレが貴女の勝負下着なの?誰にも見てもらえない下着にお金をかけるなんて、可哀想過ぎる。見てて痛いわ」
「な、何よっ!TOがいるからってデカいツラするな!リア充、死ね!」
罠だ!ムーンライトセレナーダーの放った"雷キネシス"をゴル子13の"サンダーミラー下着"が約1万倍に増幅して撃ち返す!ムーンライトセレナーダーを直撃!
「ぎゃあああっ!」
「ヘイ!ギブアップ?」
「NO!」
銃声! ゴル子13が驚いたように目を見開き、やがて、ガックリと膝を折って崩れるように倒れる。
背後で、ゴル子13が取り落とした拳銃を構えて立っているのは"神田リバーの奇跡"ハンナ機長だ。
「弾は貫通してる。救急車!」
「直ぐに病院へ運んで!お見事、ハンナ機長」
「やっと神田リバーのお返しが出来たわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
タイムズスクエアは混沌の極致だ。ソコにたたずむ女子2名。1人はスーパーヒロイン。1人は大統領。
「私は、昔から欲しいモノは全て手に入れて来た。テリィたんでさえね。ムーンライトセレナーダー。貴女は、未だ若くて賢い。恋も仕事も順調なのに、まるでライトに照らし出された子鹿みたいに固まっているわ」
「YES。大統領、そうですね。おっしゃる通りです。スーパーヒロインと呼ばれて、確かに自分が強くなったと感じる時はアル。でも、ソコから離れると…仕事も恋愛もどうすれば良いのか、実は、まるでわからない」
「そんなの簡単ょ。飛び込むの。ダイヴょ」
答えは明瞭にして簡潔だ。
「ダイヴ?ヲタ芸ですか?」
「貴女は、ラッツを前にして、飛び込むコトを恐れてる。選択肢をボンヤリ眺めてるだけ。確かに彼はアイスブルーの水。流れの速い川。荒波の海…」
「ええ」
ヒカリの言葉に引き込まれて逝く。
「ホントは、私だって今にも飛び込みたいけど、昔、水の冷たさを知ってしまった。テリィたんを愛するコトは、実は人生最大の冒険になるってワカってる。でも、向こう岸に渡った時には、貴女と彼は絶対に生まれ変わってるの。その新しい2人に出会うコトを恐れてはダメ。誰でも、昨日までの自分でいたい。だって、その方が楽だもの。でも、信じて。生きるためには挑戦を続けなきゃ。常に飛び込むのょ」
「はい…いえ、ありがとうございます」
「腐女子に残された時間は余りないわ。急いで」
ミユリさんは、うなずく。
「ROG」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中の秋葉原。黒いSUVの車列が、音も無く走り抜けて逝く。どのSUVも濃いスモークガラスで覆われ、中にいる者の姿は窺い知れない。
「ゴル子13。アンタは、ウチのニセ救急車で回収されて、今、ココにいる。だが、ココは病院じゃナイの。ゴル子13、アンタは病院に行っても死ぬだけ。でも、私達となら生き続けられる」
「…」
「この赤いボタンを推すと、アンタの呼吸は止まる。痛みは消えて、永遠の眠りにつくわ。でも、緑のボタンを推せば、アンタは永遠に生き続けるコトが出来る。もし、永遠に生きたければ…1回まばたきを」
ゆっくりと1回まばたく。
「賢明ね。科学ギャング"コペル団"へようこそ。今、ゴル子13は死んだ。そして"メカAI"として生まれ変わるの。貴方に科学の生命を授ける。そして、いつの日か、秋葉原を我々の手に」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"最新鋭旅客機"をテーマに、秋葉原D.A.の大統領、神田リバーの奇跡と呼ばれるパイロット、天才スナイパー、科学ギャング団、暗殺者を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、ヒロインのスーパーヒロインとしての恋愛観などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、円高移行前の駆け込み感が出て来た秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。