8−13 猫に瞬発力はあっても持続力はない
第2王子の息のかかっていない騎士達が第2王子フレドリックに尋ねる。
「集団が動いている様ですが、何か問題がありましたか?」
フレドリックはしらを切る。
「ああ、見慣れない者がいて話を聞こうとしたところ逃げたのだ。
それで不審なので護衛達が人を使って追っている。
取り調べて問題があれば連絡する。」
「分かりました。手に余る様ならお知らせ下さい。」
「ああ、その時は頼む。」
自分の知性に頼むところがあるフレドリックは、
この騎士が今日の主役に慮って追求しなかった事に気付いていなかった。
なんでそろそろ儀式があるのにこんな庭園にいつまでもいるのか、
騎士達は疑問に思っていたんだ。
一方、グレアムは思った通りキャサリンが独断で動いた事から、
エディと決めた手筈通りにフォローに回った。
少数の自前の騎士とエディが用意した騎士を率いて
第2王子の宮方向へと進んだ。
監視からの伝令が来て、キャサリンがそちらで追いかけられていると知ったのだ。
キャサリンは木陰の中を本城に向かって進んでいた。
幸いにして魔力感知を出来る者はまだ生け垣内の通路を進んでいるらしい。
生け垣を迂回して来た連中はキャサリンの方向を察知していない。
何とか本城近くの地下通路の偽装入口に達した。
これを使いたくなかったんだが…
この地下通路は城の外周を一周している、多分王族の逃げ道というよりは
騎士団が秘密裏に移動する際の通路と思われる。
この入口は関係者以外には分からない様に偽装されているから、
そこから入り、中を移動しているのをみつかると、
騎士団の方に捕らえられる可能性がある。
逆にそれだからこそ教会関係者と思われる追手には、
魔力さえ使わなければ分からないだろう。
そういう訳で、真っ暗な通路をほんの少しだけ魔力を使って見ながら進む。
出口と出口の間は逃げられないから早歩きで進む。
出口近辺で通路上の人の動きを能力で見る。
出来れば第2応接の間近くまで進みたいんだが、
出口で連中に待たれるくらいなら早く外に出た方が良い。
しかし、キャサリンが地下通路を使ったおかげで、監視がキャサリンを見失った。
当然、グレアムもその報告を受けて、進路に困ったが、
エディとの間にキャサリンを見失った場合の行動を決めてあった。
よって、第2王子の宮と庭園の中間で待機した。
監視は上層部にこの情報を伝えたが、
実は最初から第2王子の宮側でキャサリンが捕まった場合は
第3王子の宮から手勢を出すことが決まっていたので、
第3王子の宮から出た手勢は第2王子の宮近辺まで隠密行動で進み、
3方向で待機した。
他方、第2王子フレドリックにもキャサリンを見失ったとの
報告があった。
「またか…」
追跡は教会関係者が、
追い込む先にはフレドリックの手勢が集まるという役割分担があったが、
王宮の地理に明るくない教会関係者を追跡に使ったのはミスだった。
フレドリック自身がキャサリンを捕らえたいと思ってしまったのが
間違いだったのだ。
フレドリックはその点を感情で判断してしまった。
プライド等で動く場合に、人は感情的な判断を下すものだから。
とは言え、キャサリンは移動能力を持っているかもしれないが、
追跡者から離れた状態でそれを使うとは思えなかった。
今まで人前で使わなかった能力である。
だからフレドリックは他の手段で身を隠したと考えた。
「騎士団の地下通路を使っている可能性がある。
出口付近を捜索しろ。
後、もう私の宮方向で捕らえる事はないだろうから、
宮に待機している者達も包囲の為に出させろ。」
そう言って、自分も騎士用の地下通路の出口の一つに向かった。
キャサリンが地下通路の一つの出口付近で地上を確認した時、
ラウンジに近い場所の出口に人がいる事が確認出来た。
つまりこの通路を使っていると疑われているんだ。
それは王宮の地理に詳しい者が現在包囲網を指揮している事を
意味するから、
もうここを使うのは悪手だ。
まだ第2応接の間からは遠いが地上に出る事にした。
能力を使うと教会の光魔法師に察知されるが…
包囲網に向かって進む事だけは避けたいから、一度周囲を確認する。
第2王子の宮から出た手勢が加わったらしい。
騎士らしからぬ者が二十数人、王国騎士団の制服は着ていないが騎士が二十人、
騎士ではないが素人ではなさそうな歩き方の者が十人いる。
第3王子の宮から出たと思われる者が第2王子の宮に接近する姿がある。
包囲網の後ろを隠れて近づく者達も三十人近くいる。
これはエディの手の者なのだろうか。
ケリを付けると言ってたのだから、
王宮内でこれほどの騒ぎを起こした第2王子の手勢を
一網打尽にするつもりだったのかもしれないが…
第2王子の出した包囲網より人数が少ないじゃないか!
本当に頼りにならない奴だよ!
兵隊が地下を通って出てくるのは宇宙の戦士でしたっけ。
一回読んで満足したので2度と読んでないから記憶が曖昧…