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8−11 王宮が舞台

 日曜がやってきた。

第2王子の臣籍降下の儀式は午後からなのに朝から出かける。

ゴードン家の紋章はないが侍女のジョディーが外で待っているから

それだと分かる馬車に乗り込む。

ゴードン家に着くと、ジョディーの指揮の元、入浴から始められる。

化粧は薄いが、髪の毛をしっかり手入れされ一部を編み上げる。

社交界に正式デビューしていない少女は基本の髪型は下ろすのだが、

多少のアレンジは上位貴族の令嬢ならしている。

私には無縁だったけどね。ガーベラにその手の才能は無いし。

吊るしのドレスは体が多少大きくなっても着れる様に腰の絞りは控えめだ。

コルセットとは無縁だ。まあ未成年だしね。

「まあ、及第点だな。」

グレアムが偉そうに採点する。

タイの色がベージュ系で一応私に合わせている。

「田舎から出てきて碌な教育も受けない、田舎者のままだからね。

 社交界デビュー前に女官になるからまあ良いでしょ?」

グレアムは涼しく笑った。そんな砕けた顔はあまり見ないから貴重だ。

「そう上手くいくかな?」

「騒動が収まったら真面目に勉強するから大丈夫。」

「見るからに駄目そうだ。

 エディに就職先を頼むんだな。」

「それこそ酷い職場に回されそうだから嫌だよ。」


 ゴードン侯爵夫妻は先に出て、グレアムと私は後から別の馬車で行く。

王宮は初めてだが、もう何度も内部偵察はしている。

拘束されそうになったらどう対応するかも一応決めてある。

ただ、早朝に軽く偵察したら、エディ側も教会側も、

もちろん第2王子側もまだ展開していなかった。

今はもう騎士が展開しているが、エディの手配の部隊が見分けがつかない。

そして教会の手の者がよく分からない。

第2王子の宮に侍従でも下男でもない身なりの男達がいるが、

こんなに離れていてはすぐには私の拘束など出来ない。

第2応接の間近辺には第2王子の護衛と何らかの作業中の人間が多数おり、

廊下の両端には近衛騎士が立って通行する者を制限している。

この近衛が公正なら破壊分子は入れない筈だが…

この配置からすると、応接の間以外の場所が相手の工作の場所となる筈だが…


 各貴族は第一応接の間近くのラウンジで会話をしている。

「ここで待っていても良いんだが、下手に周囲を巻き込むと後々立場が無くなる。

 逃げ場のある庭園の方に行くか。」

「任せるよ。」

もちろん、私に王宮内の土地勘など無い。

逃げ場は大体把握しているが。

どうせグレアムはエディの描いたシナリオに沿った動きをしているのだろう。

一応、敵を追い込む方向だろうから、もし途中で捕らえられても開放してもらえる方向…

だと良いが。

私も第2王子と共に破滅させられる方向というのもありうる。

だからその時々の人の流れの中での逃げ場だけは見つけておこう。

上品な庭園は派手さは無いがよく手入れがされているのが分かる。

のだが、微妙に人目を避けられる場所がある。

…王宮内でこんな作りで良いのか?

まあ、遠目に2人1組の監視が複数いる。

はしたない事は出来ない様にはなっているのだろう。

私達には男の護衛2人と私用の女の護衛一人が付いている。

一応、この女の護衛から離れなければ悪い噂にはならない。


 さて、グレアムもここにいないエディも、

私という餌を使って何をどう釣るのだろう。

グレアムも余計な話はしない。私からも話さない。

何かあったらすぐ逃げられる様、周囲を警戒しているからだ。

私達に付いてくる監視が一組いるが、

これは王家の手の者または騎士団の者だろう。

近づきすぎない様に付いてくる。

こちらを助ける気も無いが襲う気も無いという感じだ。

グレアムも他の客に近づかない様に歩いている。

ただ、庭園を半周ほどしても仕掛けは無く、

少し座ろうという事になった。

エスコートのふりで椅子を引き、座るのに合わせて椅子を動かしてくれる。

「紳士のふりも出来るんだね。」

「紳士だからな。」

椅子に座っていると、学院は卒業した年頃のカップルがやってくる。

「最近では珍しく、女連れだな?」

「そろそろ親と離れて行動する年なのでね。

 知人の妹を借りてきた。」

「傷心は癒えたのか?」

「別に傷ついてはいないよ。」

「なら良いんだが。」

グレアム…他所でも落ち込んでるところを見られたのか。

カップルは私の詮索はしないで去っていく。

ポーカーフェイスが出来ていないグレアムが照れ隠しに言った。

「待合室に行くか。」

「そうしよう。」

荒れるまではそっちの都合で動かないと、

守りから外れてしまうからね。

ところが、室内に戻る前に人が3方向から集まってきた。

それぞれ侍従というには平民よりの服で、作業員の様に見える。

そんなのが貴族が集まっているラウンジ近くの庭園に集まってくるんだ。

怪しい団体にしか見えない。

餌に食いついたと言えるのだが、対処するにはこちらの人数が少ない。

「グレアム…人数はどこかから借りてこられるの?」

「騒ぎを起こして困るのは向こうの筈だから、そこまで集めていない。」

はぁ…

やっぱり第2王子に問題を起こさせて、私を道連れの破滅に持って行く算段かよ!

 オリンピック体操男子団体の様にひたむきに頑張ります。

逆に中国の選手がミスして可哀想だったんですが。

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