表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/100

8−10 鱗粉の誘い

 圧迫感を感じる。

軽く目を開けると近くに女の顔が見える。

またあの目の細い女だ。

相変わらず瞳孔が見えない。

仕方なく半身を起こすと、女は体を細かく左右に振る。

何か急いでいるのか?

口で言ってもらえないと分からないといつも思っているんだが、

こちらも夢の中では話せないからこちらの気持ちも伝わっていないだろう。

口を開こうとすると、女はいなくなっていた。

ああ、また安眠妨害の夢か、と思って身を起こす事にする。


 学院から帰って来て、さあ何を調べようかと考える。

何か忘れている事がある気がする。

ん〜。思い出せない。じゃあラウンド家の調査でもしてみるか…

と見ると、あの毎日の出来事を書いた書類が無くなっていた。

しまった、悟られたか、と思うが、

何か悟られる事をした記憶も無い。

彼に何か思う事があったのではないか、とあちらの所為にする。

しかし、参ったな。

第2王子も教会も警戒して情報統制をしている。

手下の貴族等の情報も無い。

貴族?

まてよ…

そうだ!

臣籍降下をするんだよ。

新しい屋敷がある筈で、引っ越しをしているシーンを目にしても良かったのに、

第2王子は引っ越し作業すら私の調査があり得ない時間を選んでやっていたんだ。

移された荷物に何か秘密があるんだ。

さて、ストレイ家だったかスレンダー家だったか…

貴族街地図を見ようとするが、書いてある筈が無い。

多分空いていた家名を与えたんだろうから。

じゃあ、地図に家名が書いてない屋敷を調べるか。

第2王子だから上位貴族街かな…

王宮に近い、貴族街地図で空いている屋敷を探して見る。

5件見たが埃が溜まっている。

まあ虱潰しに探す以外無い。

家から上位貴族街は遠くて見れない、とエディ達には言っているんだから、

彼等に第2王子が入る予定の屋敷を聞いてどうする、という話になる。

はぁ、まあちゃっちゃと探してしまおう。

何か下位貴族寄りになってもまだ見つからないんだが…

ここで黒い蛾がひらひらと迷うように舞っている。

まだ寒いのかな。変温動物だからね。

よたりながら木が鬱蒼とした屋敷に入っていく。

うん、虫が沢山いそうな敷地だ。

何か器用に扉と壁の隙間を這ってすりぬける。

へ〜。蛾は蝶と違って羽が地面と平行方向に閉じているからこういう事が出来るんだ。

うん、この屋敷、綺麗にしてあるけど人が殆どいない。

蛾は廊下を通って書斎らしき部屋に入っていく。

また扉の隙間を這ってすり抜ける。

あれか、天敵を避ける為には大きな動物が入れない場所を寝床にするのかな。

人間っていう大きな動物が入り込む場所だけどね。

うん、調達品が豪華だ。下位貴族寄りに建っている屋敷にふさわしくない。

本棚の後ろに蛾が入り込む。本当に器用だよ、この蛾。

本棚の後ろの壁が抉られていて、そこに本棚がある…

秘密の本棚か。

何気に端の本の中身を見る。

うん?

H家の連絡員、貴族街の商会、デリーの商店で緑のハンカチを見せる…

はい?

リグリア国の商人、ゼンガーの連絡先、貴族街の商会、ラインの商店の勝手口で

ノックを5回…

これ、秘密の連絡先の一覧?

その隣の本の中身も見てみる。

領収書が挟んである。

バグの代金、随分高額だ。

虫?もしかして…

リグリア国の商人、ゼンガーのサインがある。

購入者のサインはF.ファントム!

ここ、元第2王子フレドリックの新居か!?

日付は昨年の11月…あの巨大蛾の幼虫が搬入されたのは12月上旬くらいだから、

もしかすると第2王子がハミルトン公側に魔獣の幼生を提供したんだろうか…

これは写しておこう。

部屋の見取り図も簡単に書こう。

あと、この屋敷の周囲も確認…

貴族街地図によるとやはり1月には誰も住んでいない屋敷だから、

第2王子の新しい住居と思われるけど…

わざわざこんな新居に日曜の陰謀の計画は残さないよね…


 教会も一応見てみる。

大司教周辺には特に動きはない。

書類処理を黙々と続けている。

教会で日曜の破壊工作に参加する準備の動きは無かった。


 ところが、キャサリンの見ていない夜に教会の地下で

破壊工作の会議が行われた。

「カルヴィン司教、ではお前が闇の魔法師を捕らえる任務の指揮者となる。

 心してかかれよ。」

「はっ。

 ドラモンド大司教の命、心して遂行致します。」

「うむ。頼んだぞ。」

と答えはしたが、カルヴィン・エリントン司教は心の中では

厄介な仕事を押し付けられて辟易していた。

西の平民街でキャサリンを近くで見た者達は、

闇属性どころか光属性を感じていたと聞いている。

問題が発覚した場合に、

この仕事は大司教の代わりに王国から罰せられる役である事を

カルヴィンは理解していたんだ。

 情報統制が始まると、情報戦の小説は書き様がないですね…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 唯一ヒロインより上手でヒロインに味方してくれるスーパーヒーローが蛾何だよなー……斬新すぎる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ