8−8 そう来るか(実はいやがらせ)
エディとグレアムにまた昼食に誘われる。
勿論マーク・フリーマンが以下略だ。
「とりあえず週末の事件については、
下男から精度の低い情報が少し入っただけで、
核心に迫る情報は手に入らなかったよ。」
うん、私を危険に晒しておいて反省が見られないな。
さすが腹黒。
「犯人は簡単に自決したけど、どこから来たかは確認出来た?」
「いや、北の平民街に潜んでいたらしい事しか分からなかった。
もう少し情報が入るかと期待したんだけどね。」
まあ、つまり私が苦労しただけで骨折り損だった訳だ。
「こうなると臣籍降下の儀式で網を張るのが一番なんだけどね。」
「どういう招待状を寄越してくるかによるけど、
親を呼んでも私は連れて行かれないよ。
外に出すのが恥ずかしい娘という触れ込みだからね。」
「出来れば来て欲しいんだけどね。
君が来なければ会場での動きは無いと思われ、
次の動きが分からなくなる。」
餌がいないと敵が動かない、と言外に言われても、
また捕まるまで助けないのが分かっているからね…
「私一人を呼び出す理由があれば行く事も出来るだろうけど、
そちらは期待しないで。
兎も角、私の場合は親に能力を気づかれない事が
一番大事だからね。」
「ここで第2王子に鈴を付けられると、
今後はお互い楽になるんだけれど。」
餌の生死を気にしていなさそうなのに、
お互い、と言われても信用出来ないでしょ。
「まあ、とりあえず招待状が来たら相談するよ。」
「そうしてくれ。」
キャサリンが去った後にグレアムがエディに話しかける。
「お前さ、どんどん嫌われてるのは分かってんのか?」
「毎回助けているじゃないか。」
「有り難く思われてないのは分かってるのか?」
「それでも政治的には適切なタイミングなんだよ。」
…政治が大事だと女を取り逃がすぞ?
まあキャサリンが必ずしもお前に相応しいとは言わないから
壊れるならそれも良いんだが。
グレアムとしてはエディが自分の振る舞いで関係を壊してしまうなら、
それも自業自得だろうと思っていた。
もっといい女はいるんだから。
政治的な意味でだが。
キャサリンは今日も第2王子の王子宮を監視しているが、
まだ招待状を書いている。
ラウンド家の男も盛んに書いているから、
教会近くの民家を見ても無駄だろう。
宛名を見るが、プリムローズ家宛ての手紙はなさそうだ。
招待状が家に来るかどうか分からないが、
私をおびき出すらしいから何等かの手段で王宮に呼ぶんだろう。
とは言え、陰謀の相談はここではしそうにない。
あるいは万一の覗き見を避ける為に、
学院の授業時間中に相談でもしているのだろうか。
口で話せば分からないと油断しないのだろうか。
困ったなぁ…
第2王子フレドリックは馬鹿ではないから、
遠視・透視以外に、何等かの情報収集手段がある事を排除しなかった。
だからキャサリンの監視可能時間の陰謀の相談は避けていた。
また、教会から逃げた際に隠し通路から忽然と消えた事、
学院で人影を追った護衛がそれを見失い、
逆方向に現れた事から、何らかの特殊移動能力がある事も仮定している。
教会は闇魔法の闇渡りだとさえ言っていた事もある。
だから、キャサリンを追い詰めて移動能力の有無を確かめるのが
一つの目標となった。
そうなると会場警備の他に遊撃部隊が必要で、
それは教会の工作員を用いるしかなかった。
教会の殉教者部隊は100年前に王宮内で事件を起こし、
当時まだ土着の宗教を信じるモントゴメリー侯爵と、
その時会話をしていた王太子・王妃を殺した事があった。
これ故、王宮内に教会関係者を多数引き込む事は謀反と同じ意味になっている。
だが、クライブ・ラウンドの独断で引き込んだという事にすれば良い。
…と考えていたが、そんな罪を部下が唯々諾々と引き受ける訳がない事を
フレドリックは見逃していた。
勿論、密告などされない様に監視を付けていたが。
そんな日々の中で、またキャサリンはエディとグレアムに昼食に誘われた。
またマーク・フリーマンが呼びに来たのだ。
食後中、エディがいつもより冷たい感じがしたが、
理由は不明だ。
食後のお茶の際、グレアムが切り出した。
「第2王子から我が家に臣籍降下の儀式の招待状が2通届いた。
一つは順当に父上と母上宛て。
もう一つは俺とお前宛てだ。
プリムローズ家の令嬢をエスコートして出席しろだとよ。」
「…なんであんたと私が?
もしかしてあんたと二人でパーティに出ると、
女の方が悪霊に取り憑かれるとかいう噂が流れてない!?」
「そんな噂聞いてないぞ!誰が言ってる!?」
「誰も言ってないよ!
ただそんな悪評が流れてて間接的に私にいやがらせしようとして
そんな事になったんじゃないかって事!」
「ねぇよ!適当な事言うなよ!」
…この二人は仲が良いなぁ…とエディは淋しくなった。
あ、そろそろと思った瞬間、
寝落ちしました。
遅くなってすみません。