表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/100

8−3 水面下の動き

 領地から王都に移動した時、

貴族令嬢としてまともなドレスがなかったので、

吊るしのドレスを購入し丈を直して着ていた。

それでも背が伸びた為、また家令にドレス購入の打診をした。

吊るしのドレスをブティックから持ってこさせて、

そこそこ似合うものを2着購入してくれた。

でもこれで春夏秋の外出を済ませろとの事だ。

まあ、別にこんなものを着ていく場はほぼ無いけどね。

次の日曜までに丈を少し詰めて貰う事になった。

今、丈を詰めておけば、また背が伸びても今度は丈を戻せば良い訳だ。

まあ、良い。これで花見に着ていく服が出来た。


 教会では、1年2組の生徒の親との世間話で情報を得ようとしていたが、

南部貴族は教会とは疎遠だ。

一方、北部貴族は月例会に出席する者が多く、

その場で世間話をする事があるが、

ここで教会はケイネス子爵に自慢の桜の木の事を切り出した。

自慢をする時、人は饒舌になるものだからだ。

しかし偶然、来週の日曜に娘が同級生を集めて花見をする、

という事を子爵が口にした為、

教会はケイネス家の下男下女に金を掴ませて参加者の情報を得る事にした。

そういう事で教会はキャサリンが来週末に外出する情報を手に入れた。

教会にもクライブ・ラウンド経由で第2王子から

キャサリンの遠視・透視能力が忠告されており、

彼等は大司教の居室近辺での陰謀の連絡はしない事にしている。

結局、彼等は地下室で地下活動の計画を練る事にした。

「ケイネス子爵家にあの女が出かける事は分かった。

 それでどの様にあいつを料理するかだ。」

功徳と関係なくおでこが存在感を示すお方が言った。

「殉教者部隊を使い、ケイネス家の下男下女を更に買収し、

 女を拉致します。

 途中でケイネス家の護衛相手に時間稼ぎをする者は

 怪我をした段階で殉教します。」

「証言をする者を残してはいかんが、拉致出来るか?」

「子爵家の護衛程度なら殉教者部隊に敵いますまい。

 ただし、援護に平民の裏組織を雇う必要はあると思います。」

「ふむ、その程度の経費は致し方あるまい。

 週末までに調整出来るか?」

「やらせます。お任せ下さい。」


 平民街の西街の教会は、割と敬虔な宗教家が集まっていた。

どうせ平民街では寄付など殆ど集まらないので、

生臭な活動をしようが無いのだ。

そういう訳でキャサリンとしてもこちらを調べて何か出てくるのか

期待が出来ないでいた。

今のところ何らかの破壊活動はやっていないのかな?

それとも調べる場所が間違っているのか…

王宮の第2王子を調べられれば何か分かるかもしれないが、

王宮を覗き見している事がバレた時が怖い。

大聖堂も時々見るが、大司教の居室とその周辺には不審な書類は無い。

問題が無いなら良いんだが、

この静寂は何だろう。

監視はいるのに教会関係者の元に情報が届いていない様に見える。

もやもやしながら今日の監視を終えた。


 ベッドで寝ていると、何かの気配がする。

目を開けると裾の長い異国風の服を着た、

細い目の女が顔を近づけていた。

相変わらずこれだけ近くに顔があるのに瞳孔が見えない。

何か用?

と問いたいが口が開かない。まだ夢の中なのだろう。

女は口を真一文字に閉じていて、こちらも何も言わない。

何か言いたげには見えるんだが。

まあ夢の中で会話をした記憶は無いから、

この夢もこのまま終わるのだろう。

女が少し離れて体を左右に捩った。

増々何がしたいか分からない。

目を閉じてもう一度開けると、女はいなくなっていた。

今度こそ目が覚めたのだ。

前にも安眠妨害だけして去った事があったなぁ…

と忘れていた事を思い出したが、

キャサリンは現実的な女である。

今朝見た夢もすぐ忘れてしまった。


 教会が不気味な静寂を保っているこんな時こそ

エディなりグレアムなりに相談したいのだが、

連中は大体間が悪い。会いたい時にいないのだ。

話題がある訳ではないからゴードン家の馬車の御者に話しかける

訳にもいかない。

結局学院から真っ直ぐ家に帰る。


 いつもの様に大聖堂を少し見て何も無ければ西教会を監視する。

本当に通常業務しかしていない。

今日も成果無しか…

と思うと、教会の入口近くに黒い蛾が止まっている。

するとぱたぱたと飛び上がり、近くの民家に入っていく。

何気に蛾を追いかけると、中に二人の男が話している。

「週末にケイネス子爵家に強襲をかける。

 既に下男下女を複数買収済だ。

 あの女の拉致は間違いなく出来るだろう。」

「ケイネス家にも立哨もいれば護衛もいるだろう?

 そう上手くいくか?」

「特殊部隊を使う。

 日曜の夜には王都の外まで女を連れ出し、

 騎士団の手の届かない場所に監禁するが、

 F様の方は何か要求はあるか?」

「教会の方で闇魔道士として糾弾するならそれで良いと仰っている。

 闇魔法師らしく晒し者になるなら特に要望は無いとの事だ。」

「分かった。教会らしく闇魔法師を処分しよう。

 ところで、メモなどを残すなよ。」

「分かっている。

 奴が遠視・透視をする能力があるとそちらに忠告したのは我々だ。

 そんなヘマはしない。」

「気をつけろよ。」

「お互いな。」

…そういう理由で分かるところに動きが無かったのか!

やられるところだったよ。

で、この王子側らしき男の方の身元を確かめないといけない。

追いかけよう。

 また文字が少なかったので次回分を少し前倒しで入れました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ