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8−1 渡る世間は鬼上司ばかり

 キャサリンからシェリルには

「王子と周囲の貴族の軋轢の余波で被害を被った」

とだけ説明した。

王子が今後どうなるかはキャサリンにも分からない事だったので、

多分、こういう事はもう無いと思うけど、とだけ説明した。

シェリルに対しては学院側からも説明があり、

第2王子の来訪はもう無いとだけ伝えられた。

キャサリンは何度か科学院を覗いたが、第2王子は現れなかった為、

さすがに王宮を覗く事は躊躇われて、

第2王子の監視は一時休止していた。


 そんな時、またエディとグレアムに昼食に誘われた。

もちろん、マーク・フリーマンが呼びに来たのだ。

「第2王子と我々のいざこざに巻き込んでしまって悪かったね。」

エディは謝ってくれたが、

「まあ、上の方で色々思惑があるみたいだから

 あんたに謝ってもらう事ではないと思ってるよ。」

グレアムはグレアムで釈明があった。

「分かってると思うが、父上は上の意向で動いていた様だ。

 迷惑をかけて済まなかったな。」

「まあ、一応逃げ場は作ってもらったんで、

 文句を言う立場には無いと思ってるよ。

 ただ、とばっちりはなるたけ少なくして欲しいね。」

「それは相手がある事だからな。

 あと、父上からは、お前と敵対する意図はないから、

 これからも友好的な関係を望む、と伝言があった。」

「伯爵の娘如きが侯爵閣下にそう言われたら頷くしかないよ。

 まあ侯爵閣下には悪印象がないから安心してよ。」

キャサリンから見れば、

侯爵に威圧感はあるがそれも大人の男の魅力だと理解していた。

「そう言ってもらえると助かる。」

食堂の個室を去る際にエディから小さなガラスのマスコットをもらった。

「女性像?」

「川の妖精らしいよ。

 だから農作物の豊作祈願のものの様だ。」

「…王都で貰って、領地の豊作に影響するかねぇ…」

グレアムは冷たかった。

「無理だろ。

 大体、そいつにはもう一つの効果がある。」

「川の妖精に何を祈願しろと?」

「川の上下を結ぶ様に、

 縁を結ぶ効果がある筈だ。」

「変な大貴族と悪い縁が無いと良いけどねぇ…」

…キャサリンは大分鈍かった。


 さて、フレドリックは馬鹿ではない。

今後、事を起こす前に手紙のやり取りをすれば

キャサリンに遠視・透視で見られる可能性がある。

また、自分の周囲に監視がいるだろうから、

そういう他者に見られる可能性のある伝達手段は取れない。

今回の件でキャサリンに報復する為には、

同じくキャサリンを料理したいと考えている教会と結ぶしかなかったが、

その連絡は腹心の部下をメッセンジャーにするしか無かった。

とは言え、非公表ながら謹慎中の王子の部下が大聖堂に何度も

出入りする訳にはいかない。

だから大聖堂以外の教会を経由して連絡を取る事にした。

クライブ・ラウンド伯爵子息は第2王子の1学年上で、

魔法学院を次席で卒業した。

第2王子の卒業時の成績は二桁の席次だったので

クライブの方がよっぽど優秀だったが、

第2王子は勤勉が取り柄の人間を嫌っていたので、

学院の成績は良くても融通が利かないクライブを疎んでいた。

それで王子の側近の中では王子と話す機会は少なかったが、

王子は事ここに及んでクライブを教会との連絡役に選んだ。

今後の陰謀で教会との癒着を疑われた時に

切り捨てる駒として選んだのである。

クライブも王子に融通が利かないと言われる程に

自分を守る為に不正から距離を取っていたのだが、

この任務は切り捨て前提である事に気付いていたので、王子に諫言をした。

「一度手を出して罰せられた対象にもう一度手を出すのは危険です。

 再犯と判断されますので、お控え頂ますよう、お願いします。」

「私が手を出したという証拠がなければ良いのだ。

 良いから王子の命令に従え。」

諫言を聞かない男とは思っていたので、

諫言をした、という実績を作っただけで満足せざるを得なかった。

しかし、この泥船にこのまま一緒に乗り、

それどころか泥船の代わりに処罰を受けるのは嫌だった。

クライブは経緯を書いた文章を作成し、

どこかで王側に寝返るタイミングを計る事にした。

王がその証言を必要とする時があるだろうから、

身の売り時を考えれば何とか溺れずに済む筈だ。

 結局、他人を蔑む癖のある人間は、

蔑んだ人間の人権なんて認めていない訳で。

だからパワーでハラスメントしても恥じる事がなく。

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― 新着の感想 ―
[一言] この国が周囲からみて価値のない小国なのがよくわかる。 金の卵を生む鶏の腹をかっ捌くタイプのアホしかいない、そのうちなんかのついでとかでこの国消えるんだろうな。
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