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1−7 事件後

 この日、件の問屋らしき商家にも捜査が入った。

キャサリンの渡した紙束に商家の名前と番頭の名前が書いてあったからだ。

売買人数帳簿の本物が押収された為、商家は閉鎖、

家人と店員達は全員収監された。

掲示板に商家と人身売買事件の関わりが書かれ、

当局は市民からの情報を求めた。

行方不明の少女達の親は調査を依頼してきたが、

「蟻」こと購入奴隷の買い取りを行った者に対する情報は入ってこなかった。

誘拐の実行犯の情報も無かった。

それら捜査の関係からか、

月・火はグレアムは学院に来ていない様だった。

キャサリンはグレアムが近づいたら逃げるつもりで毎日確認していたんだ。


 そして水曜日、放課後の1年2組の教室の前後の出入り口に

上級生らしき人物がいた。

分かる人間には分かる気配だ。どうやら私に対する威嚇らしい。

逃げるなよ、と。

どうやら彼は私を過大評価しているらしい。

逃げる気になれば何としても逃げるのが私なんだぞ?

私以外が全員退室した後で、グレアムとエディが教室に入って来た。

鞄を持って立ち上がった私に、グレアムが言い放つ。

「何を言いたいか分かってるだろうな?」

「何でございましょう?

 正式なご挨拶もした事のない殿方と何を話したら良いか分かりませんわ?」

グレアムのこめかみに青筋が浮かんだ。

エディは苦笑していた。

「厄介事だけ押し付けておいてそれかよ!?」

「何の事だか分かりませんわ?」

「商家は押さえた。だがバックが分からない。

 実行犯も捕まらない。

 だから、問題が解決した訳じゃない。

 お前はどこまで知っている?」

「多分、何も存じ上げませんわ。何の話題か分かりませんけど。」

「仕事をしろと言われたから仕事をしているんだぜ?

 言い出した奴が惚けるのは無責任じゃないのか!?」

「ですから普通の女の子にはその言い草では何も分かりませんわ。」

エディも何か言いたいらしい。そうだろうとは思うけど。

「そうは言われても、情報が欲しくてね。

 行き詰まってしまっているんだよ。

 だから、協力はして欲しいんだけどね。」

そうは言っても、

顔を隠して情報を出した意味くらい理解して欲しい。

大体、私が調べてもそれ以上分からなかったから出すだけ出してるんだ。

もう何も出ないんだよ。

「協力と仰せられても、無力な女子には何も出来そうもありませんわ。」

グレアムがもう話しても無駄と判断したらしい。

「まあ、協力する気がないから逃げたんだろうが、

 犯罪に関わる以上、来てもらうぞ。」

そう言ってこちらを睨む。

まあ、怖い。怖い顔すれば言う事聞くと思うなよ。

後ろに半歩下がり、右に一歩ステップを踏む。

グレアムともう一人が捕まえようと私の右側に寄る。

グレアムが手を伸ばして私を捕まえようとするが…

彼の手が空を切る。

「何っ!?」

その時にはもう廊下を走る足音が聞こえるだけで、

教室内にキャサリンの姿は無かった。

「何をしやがった…」

近くで見ていたエディにもキャサリンが急に消えた様に見えたが…

「幻影?それが彼女の能力なのか?」

本当は左側に移動したキャサリンの姿を右側に移動した様に

光学情報を映しただけだった。

それは幻影魔法では無く、光学魔法だったのだ。


 馬車の中でエディがグレアムに告げる。

「彼女が幻影魔法を使って自分で情報を掴んでいるとすると、

 捜査協力を頼む訳にはいかないな。」

「吹けば飛ぶような伯爵家の末娘だ。

 別に何かあっても圧力をかければ良いだけだろう。」

「そうは言っても、未成年の貴族令嬢を捜査の為に犠牲にしたとなると、

 他の南部貴族にも反感を持たれるだろう。

 それに、彼女も我々同様に調査に行き詰まっていたから

 あの日に感情的になったんだろうし。」

「だが他の人間を使っているのかもしれないぞ?」

「あの家にそんな組織力があるとは思えないし、

 凡庸な当主が末娘に余計な事をさせるとも思えない。

 それでも、確かめる必要はあるな…」

 中世風異世界ならスカートは長いと考えておりますが、

子供は膝丈くらいのスカートを着てたらしいですね。

という訳で、「最果てから」とは違って今回の制服のスカートは膝下丈くらいと考えて下さい。



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