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7−5 強行突入

 そういう訳で火曜日は学院に来た。

明日はサボりだ。せいぜい今日だけは真面目に授業を受けよう。

しかし、教師と下男を買収したって言ってたな。

今日の私のアンラッキースポットは医務室と別館だ。

油断しているところを辻斬りされるかもしれないから

そこには近づかない様にしないと。

ちなみにプリムローズ家から学院内まで付いて来た監視の内、

2組は学院内にまで入り込んでいる。

雪隠の入口が見える場所に立っているのは止めなさい。

誰か通報してくれないかな…

そういう訳で4組中2組は学院に影響力の無い奴の手下だ。

つまり教会と第2王子。

今学院内にいる2組中1組はエディの手の者だろうが…

後1組のバックを考えるのが怖い。

私は背景、一般市民だから、注目する程の者ではありませんよ。


 ところが、1時間目の授業の途中で3台の馬車が連なって

科学院から魔法学院に向かってくるのが能力で見えた。

真ん中の馬車は王家の紋章の付いた豪華な馬車だ。

性格の悪そうな顔の男が乗っている。

第2王子フレドリックだ。

…こんな事だと思ったよ。

ところがグレアム達もこれは予測していたらしい。

馬車乗り場に近い学院施設内には各家の侍従・侍女が待機出来る

待合室があり、

そこにはゴードン家の侍女のジョディーが座っていた。

1時間目が終わるや否や、鞄に荷物を詰め込んで待合室に走る。

教室側の入口を向いていたジョディーは私を見るや立ち上がり、

礼儀正しく頭を下げる。

「何かありましたでしょうか?」

他家の侍女もいるから大きな声では喋れない。

彼女の耳に近づき小声で話す。

「第2王子の馬車がやって来ます。

 2台の馬車に護衛を連れているので、

 多少の護衛がいても防げません。

 何か打開策は用意してありますか?」

「はい。

 こちらへどうぞ。」

ジョディーは侍女待合室から護衛の待合室に移動する。

見るだけで暑苦しくなる男達が座っている。

その中の近衛の制服を着た男2人と、

ゴードン家の紋章を付けた2人が立ち上がる。

ジョディーは短く伝えた。

「彼はこちらにおいでになる様です。」

「分かった。」

ジョディーは私に向かって言った。

「それでは参りましょう。」

どこへ、と聞くことは出来ない。

ここにいる護衛達の中に間諜がいるかもしれないので行き先を言わないのだ。

しかし向かった先は、教室に近い部屋で、

体調が悪いと言って教室を離れた者の行く場所、

つまり医務室だった。

ここは今日の私のアンラッキースポットなんだが…

医務室の一番奥の休憩室を予約していたらしい。

手前にゴードン家の護衛が、

扉の前に2人の近衛が立つ中、

ジョディーと私は休憩室に入った。

「教師に対しては我が家の護衛が連絡しておきます。

 心置きなくお休み下さい。」

…居眠りする為に来た訳では無いし、呆けている訳にもいかない。

事態がどう転ぶか見守らないと正しい対処が出来ないんだ。

「しかし、4人の手勢で防げるでしょうか?」

「近衛の主人は陛下です。

 近衛は主命以外は聞きませんし、これを討つ者は反逆者です。

 そこまでの決意はないでしょう。」

それでも気になる点が2つある。

まず、私は監視されている筈だから、ここは襲撃先なんだ。

こちらの手勢が4人なら拘束して脇を通ってここまで来る可能性はある。

しかも、ゴードン家側は窓側の警戒をしていない。

これで私を守れると思っているのか。

次いで、第2王子の手の者は私の事を調べていて、別館も作戦行動の目的地だ。

そこを連中が何に使うか。


 そして2時間目の途中に第2王子の馬車の列が学院内に入ってきた。

王子の護衛と学院の立哨とで言い争いになるが、

王子が出てくれば従うしかない。

前日に来られたって学院側としては警備や接待の準備が出来ていないと反論するが、

逆に何らかの破壊活動を防ぐ為に前日に来た等と適当な事を言う王子。

歩く迷惑以外の何者でもない。

斜め下を向いて黄昏れてしまっている私を見て、ジョディーが声をかける。

「殿下がいらっしゃいましたか?」

「はい。何らかの破壊活動を避ける為に前日に来たと言い張る

 面の皮の厚さには敬服します。

 とても真似の出来ない大物ぶりです。」

自分は他人を殺しに来たくせに。痛いジョークか?

「他所ではそういう事をお話になるのはお避けになる事をお勧めします。」

「勿論です。」

とりあえず学院側の人間が学院長室に連絡に行くが、

その隙に第2王子はすたすた歩いて中に入っていく。

4年前には通っていた学院だ。案内なんていらないだろう。

真っ直ぐ1年2組に行く。

ちなみに学院に入れなかった監視も第2王子と共に学院に入ってきた。

その監視は別館の方に進む。何故?

1年2組の近くの廊下で、第2王子はその場で待っていた教師と話をする。

あいつが買収された奴か。

その後、第2王子はおもむろに扉を開け、

授業中の教室に入っていく。

授業中の教師は訝しむが、身なりの良い青年の横に教師が付いている。

何か用があるのだろうと考え、

護衛達と共に教室前の教師に向かってくる青年を待った。

「何か御用でしょうか?」

「ああ、私は第2王子のフレドリックだ。

 図書室に行きたいので、一人、案内に借りたいんだが、いいかな?」

第2王子は爽やかな笑顔をしているつもりだろうが、

私から見れば詐欺師の笑顔だ。うさんくせぇ。

第2王子と連れ添う教師が一人の女生徒を指差す。

王子は晴れやかな笑顔で言った。やめろ、気味が悪い。

「ああ、そこの君、悪いが案内してくれないか?」

「はいっ!?」

王子がそう話しかけたのは、シェリル・マレー男爵令嬢だった。

…そんな事だろうと思っていたよ。

 うん。ごめんシェリル。

アイリーンだと落ち着いててチョンボをしないだろうから、

連れて行くのはシェリルの方だろうと思ったんです。

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