7−1 色気のない身辺調査
さて、フレドリックの動向を周辺の動きでしか察知出来ない
エディやグレアムでも、キャサリンの無駄な外出は避けるべきと
考えていた。
教会の動きもキャサリン自身が第2王子の手配と考えている様に、
エディ達にも教会がいきなりキャサリンに手を出す理由は無いと
思われるので、第2王子が関わっていると確信していた。
それは、
一つは第2王子自体は自分で誰かに悪意のある行動をとらない事、
それは彼が王族としての責務を放棄して科学院に巣食っている為、
何か不祥事があれば
この科学院の第2王子の城を王が取り上げてしまう事が考えられるので、
教会を上手く使ってくると考えられた。
もう一つはキャサリンが大司教に喧嘩を売ったらしい
(本人は買ったと言っている様だが)
事から、教会側が積極的にキャサリンに攻撃してくる事が予想されるから、
第2王子も自ら動く必要を感じないだろうという予測もあった。
だから、エディ達の監視は主に教会関係に向かっていた。
一方でキャサリン自体は第2王子の悪意が向かってきているのを
知っているので、第2王子の監視を続けていた。
午後に学院から帰ってきては、毎日科学院を監視していた。
第2王子は仕事もせずに調査員からの調査結果を聞いている。
「田舎伯爵自体はただの穀潰しの様だな。
何があの娘と連中を繋いだかを確認しろ。」
「はい、調査を進めます。」
連中ってのはエディとグレアムの事かな?
出会いは偶然だよ。特に関係はないんだ。
「怪しいフードの女がプリムローズ家の娘とすると、
そのフードの娘はハミルトン公の反乱直前に何度かゴードン家に
通っていた様です。」
「光魔法師が反乱捜査と何か関係あるのか?」
「そこは分かっておりません。
ゴードン家は下男下女なら買収できましょうが、
嫡男の知人となるとメイド以下では接触出来ません。
ところがゴードン家はご存知の通り、外部の人間の雇用をきつく
制限しております。」
「よく知っている。
まあ脳筋侯爵も一応学習はするんだろう。
他にフードの女については情報はないのか?」
「確かマンフォード家の次男が同級生だったと思います。
そちらから聞き取りは出来ないでしょうか?」
「分かった。マンフォードに手紙を書く。」
おいおい、学院の事まで調べるつもりかよ。
マンフォードなんて2組にいないから大した事は分からないと思うから
まあ良いが。
「娘の監視はどうか。」
「報告では連日まっすぐ家に帰っている様です。」
「まあ、日曜に騒動があって 1週間もせずに遊び歩く様なら
ただの馬鹿娘だがな。
そちらも出歩く場所を確認せよ。」
「分かりました。」
漸く報告は終わった様だ。
次いで第2王子は手紙を書き始める。
マンフォード子爵宛て、サインはファントムだ。
やはりファントム関係者ではあるんだろうね。
「ねぇ、キャサリン!
また3人で街に出ない?」
「そうだね〜。試験が近づく前に遊びに行きたいね〜。」
シェリルとアイリーンは呑気だなぁ。
「それがさぁ、どこぞの貴族家で放火があったんだって。
貴族街にも怪しい人物が歩いてる可能性があるから、
気をつけた方が良いよ。
平民街でも拐かしが起きかけたそうだし。
今、治安がちょっと怪しいみたいなんだ。」
「えー!そうなの?」
「あ、それ聞いたよ。ゴードン家で放火があったらしいよ。」
「そうなんだ!」
「それで捜査に入った役人がまた悪事をやったとかで、
官庁もゴタゴタしてるんだって。
確かにそんな時に何かあったら騎士団に助けてもらえそうにないよね。」
「そうそう。騎士団自体が忙しそうだからね。」
「そうなんだ!」
私なんかキャンベル子爵家に行くにもマレー男爵家に行くにも歩きだからね。
第2王子も教会も何かして来そうだから、外出なんてもっての外だよ。
そんな時、実家でも放火の件が話題に上がった。
「ゴードン侯爵のタウンハウスで放火があり、
貴族街にも怪しい輩が歩いている可能性があるとの警告が
貴族院からあった。
我が家でも正門の立哨だけでなく、
タウンハウスの敷地内の警戒もする事になった。
また勝手口にも監視を立たせるから、
出かける際には前日に家令に申告しておく様に。
ただ、不要な外出は避ける様に。
アンソニー、分かったな?」
「はい、分かりました。」
「アレクシアも気をつける様に。」
「はい、分かりました。」
声はかからないが、この家族で勝手口から出るのは私だけだろうから、
一応警告はしてくれている様だ。
まあ、長女も長男も馬車で出るだろうから
第2王子の手の者に害される事はないだろう。
私自身は暫く外出する気にはなれないし。
第2王子の動向がもう少し分からない事には対処が出来ないからね。
オリックスのキャッチャーが1塁からの送球を上手に弾いているのを
ニュースのスポーツコーナーで見ました。
そんな芸よりアウトにしなさい。
…リプレイ見たら、そんなに上手でなくただのお手玉でした…