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6−8 事件の行方

 そういう訳で、ゴードン邸への破壊工作は計算の上、

午後に設定されていた。

キャサリンは学院に通っているし、

常時科学院と教会とネイピア子爵とグレイ子爵と

裏組織の全てを監視する事など出来ないのだから、

情報の疎漏があるのは当然だった。

事に当たる前に、組織はゴードン家の下男を二人買収していた。

住み込みで働く下男下女には給料などほとんど無い為、

はした金で買収出来るのだ。

日曜の市場で食料品等を買いに行った下男下女が屋敷に全て戻った後で、

破壊工作員は買収した下男の手引でゴードン家タウンハウスの

敷地内に入り込んだ。

当然、正門側には立哨がいるので、勝手口方向にしか進めなかった。

そして屋敷内へ供給する薪の置き場に入り込み、

薪の山に火を付けた。

ところが当然警戒していたゴードン家の護衛達が煙にすぐ反応し、

笛を鳴らして薪置場に集まって来た。

もちろん、火付けがあるとの情報があったので、

水を入れた桶を多数用意していた。

桶リレーで人手を取られた為、

逃げていく破壊工作員と下男を追う者は少なかったから、

計6人は屋敷の敷地外に逃げおおせた。

薪置場から内部への延焼は食い止めたが、

上位貴族街で火事と思われる煙を周囲の貴族も見ていた為、

ゴードン家の不始末ではなく、

侵入した賊による放火である事を騎士団に報告する必要があった。

とりあえず騎士団から現場確認の為の人員が派遣されたが、

現地の保存を指示され、現場検証は明日の月曜の午前中に行う事になった。


 そんな事件の次の日、昼休みに食事に向かおうとしたキャサリン達3人の前に、

地味な少年が現れた。

マーク・フリーマンを名乗るその少年は、

キャサリン一人をさる方が呼んでいる、と伝えてきた。

うん、ゴーマン呼び出しの手紙を毎度送ってくるこの少年は、

こんな地味系男子だったのか。

流石にキャサリンも名前を覚えていたので、

疑いなくアイリーン達と離れて付いて行く事にした。

マークの案内で入った食堂の個室には、

エディとグレアムが待っていた。

そうでしょうとも。

「やあ、たまには昼食でも奢ろうかと思ってね。

 まあ座ってくれ。」

エディの言葉が冷たいなぁ。

昨日、ゴードン邸への破壊工作の撃退を手伝おうとして、

まんまとおびき出された不注意に怒っているのだろう。

とは言え、まず食事をする事となった。

その昼食は、何で学院の食堂の昼食の方が家の夕食より豪華なんだよ、

という内容だった。

食後の紅茶と焼き菓子が出たところで、エディが話を促した。

「それで、昨日はどうなったのか教えてくれないか?

 監視が完全に撒かれてしまってね。

 何があったか全く分からないんだよ。」

「教会が大分人数を動員しててね。

 追い立てられて平民街西街の公民館に向かわされた、

 とここまでは知ってる?」

「うん。そこで見失ったと報告があった。」

「公民館の2階にハ…光輝く程功徳を積んだ教会の偉いさんがいた訳。

 で、私を闇魔法師ではないか、等と難癖を付けてくるから、

 足元にあった隠し扉から隠し通路を使って逃げて、

 北街寄りを通って下位貴族街の騎士詰め所に保護を求めてから

 家に帰った、それだけ。」

「教会のハゲは誰だか分かってる?」

…せっかく言い直したのに。

「多分、大司教だと思う。」

「面識があるの?」

「無いけどさ、乙殿下絡みで情報が漏れたとしたら、

 多分乙殿下と話をしたのは大司教でしょう。

 後、凄く偉そうな態度だったから。」

エディもグレアムも頭を抱えている。

真実を語れないとはいえ、ちょっと馬鹿っぽかったかな?

「…大司教は粘着質だから、喧嘩はしない方が良かったね。

 侯爵家出身の割には劣等感が強いから、

 下の身分の者には容赦がないんだ。」

「劣等感が強いのは、光魔法が弱いから?」

「分かる程弱いかな?」

「光魔法の属性があるか分からないくらい弱かったよ。」

エディもグレアムも眉間に皺を寄せている。何故だ。

「まあ、元々学院では他の属性を学んでいたらしいんだけど、

 芽が出なかったんで侯爵家の一員を名乗らせるのが憚られて、

 多めの寄付金と共に教会の総本山に送り出されたんだけど、

 人間関係で問題があったので国元の教会のトップとして

 送り返されて来たんだよ。

 まあ、光魔法は普通の治癒師くらいには出来るらしいんだけどね。」

大司教が普通の治癒師並の魔力では立場が無いね。

「それで、闇魔法師を糾弾するイベントでもやって、

 人気回復でもしようっていう目的?」

「そうかもしれないけど、彼は何か言っていなかった?」

「闇魔法師か?闇魔法師だな!

 …としか言わなかったよ。動機は不明だ。」

グレアムがぼそっと呟いたのは、

「思い込みの激しい奴、もうボケたのか?」

ここにいる誰一人、大司教に敬意を示さないのはどうかと思うが。

「他に知っている事はある?」

「科学院の君があんた達を嫌ってるらしい事。

 それで私にちょっかい出しているらしい事。」

「そちらは危険だから、手を出さないで欲しいんだ。」

あの、裏金作っているらしい事は言うべきだろうか。

それで第2王子の命取りになるなら言うべきだけど、

多分無理だ。

私の能力をバラしても成果が無いなら意味が無い。

「悩んでいるなら特に言ってくれなくても良いけど、

 兎に角、君に危険が及ぶ事は止めて欲しい。」

もう明確に狙われているんだから

何もしない方が危険だと思うんだが…

「うん、見えない者を心配しても仕方がないから、

 とりあえず身の回りだけ警戒するよ。

 ところでゴードン家は大丈夫だった?」

グレアムが答えた。

「前もって情報があって被害にあったら赤っ恥だ。

 ただ、事件自体は起きた。

 でないと犯人達を捕らえられないからな。

 被害自体は微々たるものだ。」

「それはよかった。

 今後も見える範囲では調査をするけど、

 自分の足で何かするのは避けておくよ。」 

「そうしてくれ。」

 ちなみに、光り輝く程功徳を積んだお方は、

乙殿下の前では「若い頃は私も…」とか見栄を張っていましたが、

本作の魔法理論は「最果てから…」とほぼ同一です。

多少の成長・衰えはあっても急に小さくなるという事はないです。

肩に呪いでも植え付けられれば別ですが。

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