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6−6 決行の日

 不味い。土曜になったが決定的な情報が得られていない。

平民の裏組織の人間が平日に貴族街に出入りするのは難しい。

伝手があるなら兎も角。

そうなると、明日の日曜が決行日と思われる。

4人で行動するらしいから、

2人侵入、2人が陽動だろうか。

北街から直接移動するんだろうな。

ネイピア子爵としてはこれは他人事に見せかけないといけないから、

まさか子爵家に前の日の晩に受け入れたりしないだろう。

普通に考えれば早朝に仕事をしたいところだから、

下位でも貴族の街に一泊して出かけたいところだが。

北街の裏組織の事務所でもそれらしき準備はしていない。

完全に工作員任せの作戦なんだ。

念の為ネイピア子爵邸も確認する。

まだ決算書類を作成してるよ。

まあすぐには終わらないものだろうが。

手紙がないか探してみるが…

急に見つかるものでもなし。

第2王子は最初に基本的な指示だけ出して

後は丸投げっぽいから新たな指示など来ていないだろうが…

仕方がない、明日は早起きして北街からゴードン家へ向かう道を

何通りか監視してみよう。


 侍女のガーベラがやってくる前に目が覚めた。

普通に考えれば北部の下位貴族街と南部の下位貴族街の間は

通り難かろうと思うので、平民街西街と北部下位貴族街の東側を

交互に監視するが、それらしき4人組または二人組が二組は見つからない。

ゴードン邸の周囲も見てみるが、

まだ行動に出てはいない様だ。

ガーベラが朝の支度の手伝いにやって来たので監視を止める。

朝食後にも監視するが、

日曜の午前中である。

平民街西街には平民向け教会があり、

そこに出入りする平民の流れが多い。

これに乗ずるつもりなら、むしろ東の大聖堂寄りを通るかもしれない。

しかも大聖堂には貴族も馬車で出入りする。

これに便乗出来れば上位貴族街にも簡単に入り込める。

不味いな…やはり今日が決行の日と思われる。

昼食の後、居ても立ってもいられず、外出の準備をする。

上位貴族街と下位貴族街の間に中央公園がある。

あそこに座って監視するか…

フード付きの外套を羽織って家を出る。

家を出てすぐにフードで顔を隠す。

いつもの監視が付いてくる。

ところが、それ以外に私の動きに対応した動きがある。

数カ所で二人一組で動き始めた。

中央公園側にも3組ほどいる。

あちらで何か魔法を使うとまずいかもしれない。

移動する歩みが裏の人間のそれではない。

普通に歩いている風で音が小さくなる足さばきでないんだ。

平民街との間にある西公園の方に移動しよう。

と言うか、西公園の向こうの平民街の人出がいつもより多い。

下手に平民街に入ると人の流れが読みにくい。

流れに乗って近づかれると何かされるまで気づきにくい。

…やられた。

放火は餌で、

ゴードン邸にはその後の工作が本命、

そしてこれの捜査協力で出かけると思われる私を拘束するのが

今回の工作の目的だったんだ。

私の監視役と接触するのが一番早いのだろうが、

彼等は私の後を付けてきているので、

家と私の間には多分教会の手の者だけがいて、

監視は私と中央公園の間にいる。家とは逆方向だ。

多分、監視は身元を隠しているから、教会の手の者に襲われても

身元を明かせず、制圧されてしまうかもしれない。

まず、捕まる訳にはいかない。

人目を避けた場所への移動が出来なくなるから、

緊急回避する事が出来なくなる。

だけれど、包囲網が狭まってくる。

最悪の場合に走って逃げる道が家の方向にはなくなってしまった。

西公園の木陰…無理だ。

公園入口に複数の二人組が立っている。

平民街に入って、人気のない路地に行くしかない。

このまま平民街の教会に押し込まれるのだけは避けないと。

ところが、逆に教会方向に二人組がいて、

教会側には進めなくなっている。

あれ?

教会関係者じゃないのか?

それにしては動員した人数が多いぞ?

裏組織がこんな人数を日中に人前に晒さないだろう。

では、教会首脳は私をどこに誘導しようとしているのか?

そうして教会関係者と思われる者達は、

早足で歩いて私を目的地に追い立てようとしている。

その目的地は、役所の出張所兼平民向け無料イベントを行う公民館だった。

まあ、良い。

奴が私に何か言いたい事があるなら一応聞いてやろう。

階段を2階に上がる。誰かが誘導した訳じゃない。

そいつが2階にいるから、自発的に行ってやるんだ。

そいつは公民館の会議室ではなく、

物置の方にいた。

「よくここが分かったな?」

「おでこが光って目立つから隠れても意味ないでしょ?

 あんたの場合。」

挑発は喧嘩の基本だ。

ジャブのファーストショットはこちらが当てないといけない。

爺はこめかみに血管を浮かべた。

「貴様、私が誰か知ってその様な言葉を吐くのか?」

「腐れ教会の生臭坊主。

 経典読むより金勘定ばかりしている俗物。」

そう、そこにはこの国の大司教、ヴィンセント・ドラモンドが

立っていたのだ。

 本作はR15の指定をしておりますので、

少年の教育上は問題のある表現をしております。

野球ファンにしか分からない言い方かもしれませんが、

サトテルのテルの漢字を年配男性のあだ名に使うのは

ハラスメントと判断される事もありますのでご注意下さい。

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[一言] 「勉強になります。」 ペコリ
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