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6−3 蠢く者達

 さて、ネイピア子爵も気になるが、

やはり自分にかかる火の粉の事を優先して調べるべきだ。

何せもう学院に調査に来ているんだから。

ところが大聖堂は東の端で遠い。

まあ尖塔があるからそこを見て魔法を展開すれば良いんだが。

大聖堂には100人以上が住んでいる。

対して100人以上が王都内の家から通っている。

ちなみに女子修道院は王都北部の山の中にあり、

主に貴族子女などで問題を起こした者達が世俗を離れて暮らしている。

言うほど禁欲的ではないらしいが。

そういう生臭なところがこの大聖堂にもある。

ぶどう酒はまあ良い。

かつて生贄の動物を神に捧げる儀式が行われていたのに代わり、

ぶどう酒とパンを捧げる儀式に代わっているから。

だが、大司教の部屋の棚の扉の中には蒸留酒が入っている。

漏れている匂いで濃度の高い酒だと分かる。

これ、この部屋を訪れた人間にも臭うんじゃないか?

そういう訳で後光ならぬおでこが光る大司教には

敬意を払う必要がない事が分かった。

質素とは言えない豪奢な調度品が揃っているし、

飾っている絵画は確か昔の有名画家の絵だ。

で、豪華な机で何をやっているかと言うと、

出入りの業者への仕入れの承認だ。

業者からの贈り物を記した秘密帳票と寄付金帳票と

仕入れ額を見比べて発注の承認を記している。

贈り物帳票には謎のコードネームで物品が記してある。

全部コードネームなのだが、爺の割によく覚えてるよな。

「大司教様、3ヶ月先の月例会まで出入りの業者は決まっておりますが、

 その先を決める前に贈答品が届いております。

 こちらでランクを決めてもよろしいでしょうか?」

「私も見るから時間を教えよ。」

「はい、では金曜の午後に。」

賄賂の贈答品の目利きを自分でやるのか…

宗教関係者にそういう能力があるとはなぁ…

次には月例会の際に大聖堂前に並ぶ露店の配置図を

これまた大司教自らチェックする。

宗教家というのは経典を飽きずに読むのが仕事ではないのか。

「この連中は我が侯爵家と疎遠な者達だから、

 もっと外れに配置せよ。」

…実家をバックに出世した口か?

まあどこの世界でも物を言うのはコネと金だけどねぇ…

とはいえ教会に身をおいて貴族の当主は出来ないから、

次男以下だろう。

しかし、いくら見ていても生臭な話しか出てこない。

無駄足だったなぁ…

歩いてないけど。


 夕食の着替えまでまだ少しだけ時間があるから、

ネイピア子爵の書斎を見てみる。

うん?

侍従にじゃらじゃら音のする袋を渡しているぞ?

「では、手付を渡しておけ。

 成功報酬はこの2倍と言っておけ。」

「分かりました。

 終わった後の口封じはどう致しますか。」

「まだ次があるから、

 足がつかない様にせよ、と伝えておけ。

 どうせ一度でどうにか出来るとも思えない。」

「分かりました。」

…破壊工作の手付金?

もうそこまで話が進んでいるんだ。

不味いじゃないか。こっちを追わないと。

侍従は平民服に着替えて北の平民街に歩いていく。

最近、北の方は治安が悪いので行ってないが、

街全体に汚れが目立つ。

ランプを吊るした小さな店の横の、

表に荷物が積んである建物に平民のふりをした侍従が入っていく。

「酒はあるか?」

「酒なら隣の店に行け。」

「ここで飲みたいんだ。」

「入れ。」

合言葉かよ!用心深いな。

「手付を持ってきた。成功報酬はこの2倍だ。

 いつ頃実行するんだ?」

「ちょっと待て。」

侍従の話相手の小汚い中年男が袋の中身を丁寧に数える。

「これだと4人がかりの仕事になるな。

 火は付いても延焼は難しいぞ。」

「まずは連中の注意を惹ければ良い。

 その次の依頼もある。

 足はつかない様にしろよ。」

「火を付ける奴はもう王都から出て暫く戻れないがな。」

「手練れは残しておけ。」

「勿論だよ。」

「1週間以内に決行できるか?」

「ちょっと見てみたが、それほど監視の人数はいない。

 今回は上手くいくだろうさ。」

「では、頼んだぞ。」

丁度話が終わったし、私もそろそろガーベラが来て夕食の

着替えをしないといけない。

後は寝る前にネイピア子爵をもう一度見てみるか。


 ところが、夜は早いネイピア子爵は今夜も仕事はしていない。

これ、凄く頼りにならない味方じゃないか?第2王子にとって。

まずいなぁ、本命の破壊工作員が他にいるんじゃないだろうか。

 宗教的には多分太陽の子みたいな神様を信仰していると思います。

この作品世界では。

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