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6−1 本当の敵は

 大司教がFから来た手紙を読み、

親しい部下を呼び出す。

「クンルン王国の者達は闇の魔獣の調査に来ているとの事だ。

 乙殿下はその闇の魔獣を従え、国外に移動させた魔法師を

 光魔法師と考えていた様だが、

 闇の魔獣を意のままに扱うのだから闇魔法師の可能性もある。

 南部のプリムローズ家の娘がその魔法師らしく、

 第3王子の部下が護衛をして隠しているらしい。

 まだ学院に通う年頃だから、誘い出す事は可能だろう。

 一度、闇魔法師かどうかを確認しろ。」

こうして教会は闇魔法師の可能性のあるキャサリンの調査を始めた。


 月曜の夕方、自宅に帰ったキャサリンは件の科学院の青年を

監視していた。

青年はさらさらと手紙を書いていた。

ネイピア子爵宛に、当主不在のゴードン家に対して、

水と付け火で混乱させる様に指示した。

署名は「ファントム」だった。

…つまりこの青年が黒幕という訳か。

もっとも裏組織には人を集める為の看板となる

活躍した人物をコードネームで呼ぶ事がある。

その人物は実は一人の人間でない事も多い。

つまりこの場合は2代目ファントム、3代目ファントムがいたり、

4人以上で同じコードネームを使っていたりする。

その点からこの青年が黒幕との断定は避けるべきだろう。

青年は今までいた書斎風の部屋から外に出て、

侍従に手紙を渡す。

宛先は明らかだからもう暫くここを見ていようか。

侍女がお茶を入れている。

侍従が青年に連絡事項を伝える。

「殿下、少し前に科学院の財務担当からお話があると連絡がありました。」

は?

この国には殿下と呼ばれる男が3人いる。

まず第1王子はもう立太子しており、

内政に参加している事から科学院にはいない。

第3王子は魔法学院1年1組にいる。科学院には通っていないだろう。

だから、この青年兼陰謀の黒幕候補は第2王子という事になる。

体が弱く政務に耐えないと言われて、

あまり表に出てこない王子。

なるほど王からの扱いに不満があって反抗していると。

それで反乱に口を出したり南部を睨みつける役のゴードン家に

破壊活動をしたりする…

動機は分からないでもないが、

私を光魔法師と思っているのに闇魔法師扱いして教会に害させる、

そこに大した意味を感じないんだが…

そもそも、あの蛾を闇の魔獣と特定している理由は何か?

お茶をしている第2王子の周囲の人間は

魔獣の話も教会の話もしなかった。


 月曜には乙殿下の処遇についてクンルン王国に連絡するため、

グレアムもこれまでの乙殿下の振る舞いにについての

報告書を書く事になった。

だから、グレアムは月曜は学院を休んだ。

そういう事で、グレアムが学院帰りのキャサリンを捕まえたのは

火曜の放課後だった。

もちろんキャサリンはグレアムに敵対者の情報を伝える機会が

出来て良かったのだが、今日話せるとは思っていなかったので

どこまで話すべきか決めていなかった。

科学院は官庁街の外れにあり、最上位貴族の邸宅より

プリムローズ家から遠いんだ。

「その、日曜は悪かったな。

 エディから聞いていたんだが、

 殿下を捕らえるのを優先したんだ。」

「まあ、それは良いよ。過ぎた事だし。

 元を断とうとしたんだから。」

微妙に勢いのないキャサリンの言葉に

ん?と思ったグレアムだった。

「どうした、何かあったのか?」

「…じゃあ、耳を拝借するよ。」

とグレアムの耳に顔を近づける。

「話が纏まってないから、兎に角、話すわ。

 まず、あんた達は私に監視を付けてるでしょ?」

おもわず顔が引き攣るグレアムだった。

「ああ、そんな顔しなくて良いよ。

 結果的には変なのを近づけない様にしてるし。

 ただね、日曜の午後に家を出た時、

 そのいつもの監視以外にもう一組監視が付いて来たんだよ、

 私に。」

「何!?何者だ?」

「まあ、それで、乙殿下を拘束した後、

 エディが私を送ってくれようとしたんだけど、

 邪魔だから断ったんだよ。

 怒ってると思ってくれれば今後の待遇が変わるかもしれないしね。」

「…おい、男心を弄ぶなよ…」

「まあ、お互いそういう気はないから弄ぶという感じじゃないよね。」

…エディよ、こいつ猛烈に鈍いぞ。

もっと積極的にならないとどうにもならないぞ…

「で、余計なのが付いて来なかったお陰で、

 別枠の監視も家まで付いてきたんで、

 これは乙殿下の手の者じゃないって分かった訳ね。

 だって、クンルン王国の手の者なら、まず乙殿下の事件を

 総領事に伝えないといけない筈だからね。」

「まあ、そうだな。」

「で、私の監視してたあんた達の手下が、

 その別枠の追跡をしてたんで、素性は分かったんじゃない?」

「それはエディの管轄なんだよ。」

「なるほど、エディを蹴ってやろう。

 それは良いんだけど、その別枠の監視者も追跡に気づいていて、

 一度、商店に入って、そこの隣の家の者に手紙を渡したんだよ。

 で、監視者の事はあんた達の手下に任せて手紙の方を追った訳。

 で、誰に渡したか分からないんだけど、科学院に手紙を持って行ったんだ。

 あんた達、科学院に敵がいるの?」

グレアムが私を睨んだ。

「おい、それには手を出すな!俺達の問題だ!」

「分かってるなら良いよ。

 そうか、第2が敵と分かっているんだ。」

「おい!」

「誰にも言わないよ。

 ただ、私の問題にもなっているんだよ。

 科学院は見えないけど、平民街で書かれた手紙は見えたんだ。

 eとgはプリムラを助けた、

 って手紙には書かれていたんだ。

 今回の事件はあんた達にとっての私の重要度を計る為に、

 第2王子が乙殿下を踊らせたんだろうね。」

グレアムは返す言葉が無かった。

エディは上手く乙殿下を捕らえたが、

これでキャサリンの重要度を把握されてしまった。

「で、あんたへの手土産だ。

 科学院からネイピア子爵に手紙が送られた。

 ゴードン邸に水か火で事件を起こせと指示があった。

 気を付けなよ。」

グレアムは思わず項垂れた。

キャサリンも危険な目に会う可能性があるが、

そのキャサリンが情報を持ってゴードン家の心配をしてくれている。

「助かる。

 他に情報は?」

「日曜の夕方から調べてるんだから、

 全然調べる時間がなかったから何も分からないよ。

 何か情報があれば学院で伝えるよ。」

「ゴードン家の馬車に持っていって貰えれば受け取る。

 そうしてくれ。

 後、無茶はするなよ。もし貴族街で襲われたら、

 ゴードン家に逃げ込んでくれてもいい。」

「ありがとう。その時は世話になるよ。」

こうして、二人は新たな暗闘が始まっている情報を共有した。


 科学院も魔法院も何か事件があった場合に騎士団から召集があるので、

消防署みたいな監視塔がついてます。

そこを起点にキャサリンは魔法をコントロールしています。

ので、実は科学院全体が監視可能です。

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