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5−11 去る者と来る者

 さて、新手の監視の連中の後を能力で追うか。

一方的に自分達ばかり情報を得られると思うなよ。

ところが、エディが付けたと思われる私の監視をしていた者も、

その新手の奴の追跡を始めた。

うーん、ばれなきゃ良いんだけど…

西の平民街に向かった新手の監視者達は、小さな商店の裏に入った。

これを追跡していたエディの手下と思われる連中は商店の表と裏に分かれて

監視をしていたが、

この商店は新手の監視者達が追手に隠れて連絡をする為の拠点の様だ。

さらさらと手紙を書いて封筒に入れた。

書いていたのは

「人形は捕まった。gとeはプリムラを守った。」

乙殿下は操り人形か…

プリムラはプリムローズの事だろう。

グレアムはいないからgはゴードン侯爵家の事か。

この敵にエディの事も知られているんだ。

そして主語がgとeなんだから、

こいつの雇い主の悪意はゴードン家とエディに向いていて、

私はとばっちりか…

やっぱり二人共一回蹴ってやろう。

そんな文章を入れた封筒は隣の家の者にこっそりと渡され、

彼等が商店を出て、追跡者が商店から去った後に

隣の家から人が出ていく。

新手の監視者の追跡はエディの手の者に任せて、

こっちを追跡しよう。

こいつは中々用心深い奴だった。

平民街の1ブロックをぐるっと回って、

追跡者がいないか確かめている様だった。

それを3個所で合計3回やった後で、科学院に辿り着いて門番に封筒を渡した。

門番は科学院の敷地内の倉庫の様な質素な建物の入口で

その建物の扉を守る護衛に封筒を渡した。

護衛が中に入って封筒を渡したのは、

線の細い20才くらいの青年だった。

日曜に科学院は仕事してるんだ?

それは兎も角、青年は手紙を読んで意地悪く顔を歪ませた。

「次はこの女を狙うか…

 闇の魔獣を従える女、と伝えれば教会が勝手に踊ってくれるだろう。」

青年は手紙を書き始めた。

乙殿下の探していた者はプリムローズ家の娘。

殿下は闇の魔獣を従える女を光魔法師と考えたが、

闇魔法師かもしれない、

そう書いて封筒に入れた。

サインは「F」だけだった。

そして使用人が封筒を持って出ていった。

あの蛾が闇の魔獣?

だって光を欲しがって、光を浴びて何ともなかったよ。

デマだよデマ。

じゃあ、光の魔獣かって言うと、光属性でもなさそうだったけど…

光魔法師の知り合いがいないから光属性ってどんな感じか

分からないんだよね…

しかし、この外見は倉庫の建物、中は結構豪華だな。

侍従にお茶を入れさせてるし。

平日の午後に観察して、誰かにこの青年が名前を呼ばれるのを確認しよう。


 その頃、王宮でエディが軟禁されている乙殿下と面会していた。

「何でこんな外国でやる気を出したんですか?

 問題を起こしてはいけない立場の貴方が。」

乙殿下は激しく落ち込んでいた。

「王位争いで有利に立ちたくて、

 せっかく外国に派遣されたのだから結果を出したかったんですよ…」

言葉に力が無かった。

「普通に考えたら、外国に送り出したのは、

 外国で浮ついた気分で問題を起こす事を期待しての事と想いますが?」

「そうだったかも知れない…」

王とは言え人の子だ。

王族の中で優秀な者を選ぶというルールに表面上従っていても、

やっぱり実の子に跡を継いで欲しいものだ。

だから敢えて監視の目が薄い、一方で味方も少ない外国に送り出して、

何か失敗する事を期待されたのだ。

王が実の子を王にしたい理由には、王位争いの敗者は勝者から警戒され、

残りの人生が難しいものになるという事もある。

つまり、ここで王位争いに積極的に出る様な乙殿下は、

今後の反乱予備軍として場合によっては謀殺される事もある。

そういう意味でもこんな外国で勝負に出てはいけなかったのだ。

そもそも、時の最高権力者が何を望んでいるかすら分からない者に

次代の王が務まる訳がない。

他人が何を考えているか分からない者に人の上に立つ事など出来ないだろう。

自分も野心など持たずに言われた事をやっている。

身の程を知るのが大事だと思いますよ、

エディは心の中でそうつぶやいた。


 その日、西の平民街でパトリック・アーガイル公爵子息は

待ちぼうけを食らっていた。

グレアムはエディと打ち合わせ済みだったので、

呑気に過ごしていた。

やがてやって来た連絡員が事の次第を伝えた。

パトリックは真っ青になって家に帰った。

公爵に報告と叱責を受ける為に。

パトリックは乙殿下が問題を起こさないように監視・指導する

役目だったのだ。

グレアムは、やっぱりエディはキャサリンを怒らせたか、

と予想通りの結果にため息をついた。

今度こそ俺も蹴られそうだ。

 明日から新章になります。

さらば乙殿下。

乙。

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― 新着の感想 ―
[一言] 乙殿下っておかしな名前と思っていたら、まさか後書きの最後のお言葉の伏線か
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