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5−5 平民街の攻防

 光魔法師は魔法院の所属ではないと乙殿下は判断した。

光魔法師の事を聞き出すにはエディは隙が無さそうな為、

同年代の頭の硬そうな男か愛想のない女を攻めて

ボロを出させるのが良さそうだと彼は考えた。

だから彼は、再び平民街へ出る事にした。

アーガイル公爵家からその旨連絡を受けたエディとグレアムは

対策を話し合った。

「なぁ。キャサリンは連れて行かない方が良いんじゃないか?

 あいつから何か聞き出そうという気配がしただろ?」

「それを見ているだけに、あからさまに避けて連れて行かない方が

 目を付けられると思うんだ。

 何かするつもりならこちらがいるところでやってもらった方が良い。」

「餌にするのか?」

「勿論、すぐ助けるさ。」

「そんな事をしてると機嫌を損ねるぞ?」

「そうなる前に何とかするよ。」

グレアムから見るとエディは慎重派だから一手遅い気がする。

取り返しが付かないくらい嫌われても知らないぞ、と思ったが、

むしろ終わってしまった方が二人の為かもしれないと思い直した。

好きにしろ、とも言う。

焦点は光魔法師とその対応だと思われるから、

光魔法師を特定されなければ知らぬ存ぜぬで通せば良い。

キャサリンは正体を明かす事を嫌っているから

彼女が喋る事はない。

だから何らかの強行手段のみ防げば良い。

そういう訳で、キャサリンにさり気なく護衛を近づける事に決まった。

キャサリンは敏感だからすぐ気づくだろうが、

要は殿下が何かしでかさなければ良いのだ。

キャサリンには後で甘いものでも奢ってやろう、という結論になった。


 当日はまた拒否権も無く呼び出されて

厄介者の護衛行列に加わらなければならなくなったキャサリンは

怒りの余り無表情になっていた。

それで良い、とグレアムもエディも思っていた。

乙殿下とパトリック・アーガイル公爵子息は

スチュアート王国の民族文化について話している。

そして民族衣装を売る商店に向かった。

殿下達と接待役のエディとグレアムは店内に入ったが、

キャサリンは中には入らなかった。

呼ばれなければあの厄介な殿下に近づきたいとは思わなかったし。

そこでは半時ほど時間を潰した。

そこから出て少し歩いた後、

予約をしていた店で休憩を取った。

キャサリンは殿下達から一番離れたテーブルに座った。

私が来る意味あったのかよ、と思うところだった。

こんな扱いをするくらいならグレアムなら来なくて良い、

と言ってくれただろう。

だから、自分を呼んだのはエディだろうと当たりをつけた。

つまり、餌だろう。

殿下におイタをさせてその後の外出を自粛させるのか、

それとももっときついお灸をすえようというのか。

言ってもらえないと分からないし、

私は普通に厄介事には巻き込まれない様に逃げるぞ。


 休憩の店を出た後、

今度は妥当な流れで民芸店に向かった。

民芸店では殿下が籠と彫刻を数点購入し、

これを護衛が公園近くに止めた馬車まで持って行く事になった。

もちろん、アーガイル公爵子息と殿下の護衛は減らせない。

エディ達が連れてきた護衛がその仕事をさせられた。

キャサリンから見ればあからさまな行動だった。

荷物運びの護衛が戻って来る前に次の衣装店に行き、

購入した品を護衛に運ばせた。

こうして更にエディ達の連れてきた護衛が減ったが、

キャサリンは知らんぷりをして横を向いていた。

もちろん、見ていないフリをして殿下とその護衛達を見ていたんだ。

道を戻ろうとした一行がこちらに来る前に

彼等に近づかないで済む様に少しづつ横道に入った。

けれどキャサリンの行動は殿下の護衛達に監視されていたし、

殿下も彼の護衛達の素振りでキャサリンの行方を確かめていた。

真っ直ぐに殿下はキャサリンに近づいて来て、

話しかけた。

「あの巨大蛾の名前をご存知ですか?」

知らねえよ。

そういう、お前が関係者だろ?って根拠もなく相手に知らせる事で

口を割らせようってハラ見せられても相手にする気はないよ。

関係者じゃないからあいつがどっかに飛んでった段階で

もう赤の他人のモンスターなんだよ。

「申し訳ありません。

 虫には詳しくありませんので。

 存じません」

「姮蛾、と言いましてね。

 夜には陰の気を発して人を狂わせる魔獣なんですよ。」

機密か!?

それを無理やり聞かせる事で強制的に関係者にしようってのか?

「陰の気、ですか。

 何か大変そうですが、

 それが闇魔法の事でしたらお聞きする訳には参りません。

 ご自重下さい。」

「確かに表でする様な事ではありませんね。

 是非お話を聞いていただきたいので、

 これから私の部屋へご一緒願います。」

強制連行かよ!?

もちろん拒否するよ。

そのいかがわしい作り笑顔が最初から嫌だったんだよ。

「結婚前の男女でございますから、

 何か間違いがあっては高貴なお方のお名前に傷が付きます。

 辞退させて頂きます。」

と深く腰を折った。

殿下も真っ向から拒否されると思っていなかったのか、

唖然としている。

パトリック・アーガイル公爵子息が声を荒げる。

「不敬ではないか!

 殿下のお誘いを断るとは!」

「では、身分が下の女は上位の者のお手つきを断れないというのか?」

グレアムが割り込むが…

なんでそっちに話を進めるんだよ。

どう考えてもそっちの狙いじゃないだろ。

私は断り易いからそっちに話を持ってったけど。

パトリックは顔を赤らめて反論する。

「殿下にその様な意図は無い!」

顔を赤らめているって事は、身に覚えがあるのか?

12才で?

と、能力で周囲は見えるが、

いつまでこうして腰を折ってないといけないのかね。

「その様なおつもりでないなら、

 誤解を招く様なお誘いはお止めになる事をお勧めしますよ。」

ついにエディが口を挟んだ。

乙殿下もそういうスキャンダルは望まないとエディは確信していた。

王位争いにスキャンダルは論外だから。

殿下も弁解する必要を感じた様だ。

「そういうつもりはないのですが…」

エディが止めを刺す。

「彼女は護衛の補助で呼んでおります。

 それ以外の用件には対応し兼ねます。

 申し訳ありませんが、

 今後彼女が同行する事は無いとお考え下さい。」

張り詰めた空気に乙殿下が折れた。

「その様なつもりはありませんでしたが、

 誤解を招いたなら申し訳ありません。」

こうして一行は公園側に帰っていった。

エディが一言フォローに来る。

「ごめん、迷惑をかけたね。」

襟首を掴んで引き寄せて言ってやった。

「二度とあいつ絡みの仕事に呼ぶな!

 絶対来ないからね!」

ほーら、見ろ。

やっぱり機嫌を損ねただろ、とグレアムはため息をついた。


 明日はもう残業調整で早く帰れるからもう少し早く更新出来る

…と良いなあ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 脳筋グレアムの方が頭が回る。エディがバカすぎる。あからさまだから下心で頭パァになってるのは文脈で分かるんだけど、一気に残念な子になったな。
[一言] 「ファイト!」
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