5−4 殿下の聞き取り調査
乙殿下は研究員達と姮蛾に関する聞き取り内容の摺合せを行った。
「上水道に糸が流れたので調査したところ、
上水道の取水口近くの貯水池に繭が見つかったとの事。
繭が動いているので光魔法で光を当てて羽化させたとの事です。」
「私が聞いた話でも、光魔法で取水口に誘導したとの事だったね。」
「繭または幼虫を持ち込んだ可能性はあるのですが、
それを行った貴族は入手経路も誰の命令かも語らなかったとの事です。」
「北に飛び去っていったとの事だから、リグリアの方に生息している
可能性はあるが…商品として養殖されているのだろうか。」
「30ftの繭との事ですから、あまり養殖向きとは思えませんが…」
「何より陰の気を放つ魔獣だから、
養殖などをして機嫌を損ねたら大惨事になり兼ねないのだけれどね。」
「その陰の気の事ですが、
繭を調べると内側は殆ど陰の気で満たされていた様です。
一方、外側は完全に陽の気だけでした。
それが数カ所で繭の内側まで透過して陰の気を消しています。
この国の言い方で言えば、光魔法となりますが、
際立って強い魔法師だと思われます。」
「どうだろう、この繭の内側の陰の気からすると、
姮蛾はこの王都を混乱に陥れた可能性が高かったのではないか?」
「そう思いますね。
その強力な陰の気を放つ魔獣が繭の中にいたのに、
外側から陽の気を繭の中に貫通させるというのも人間業ではないし、
姮蛾に対して陽の気で対抗する事を思いついた人間も
何か事情を知っているのではないでしょうか。」
「そうだね。
何とか話をしたいものだね。」
こうして、乙殿下はまず魔法院の光魔法部長との面会を望んだ。
王家側としても情報が欲しいので、とりあえず面会をセッテイングした。
ただし、スチュアート王国魔法院光魔法部長のコンラッド・バースは
勿論、現場を見ていないし魔法師を派遣もしていない。
「せっかくのお話ですが、私はその現場を見ていないんです。
光魔法を使ったらしい、と聞いているだけで、
我が部の魔法師はその時現場には誰もいなかったんです。」
「それでは、巨大昆虫を目覚めさせる様な強力な光魔法師が
魔法院以外にもいると仰るんですか?」
「勿論、我が王国でも教会に強い光魔法師が集まりますよ。
王国側で一定数の治療魔法師を確保する必要があるので
魔法院を望む光魔法師は魔法院で雇用しますが。」
「その時、魔法院には連絡は来なかったんですか?」
「巨大生物が見つかったとの事で、生物研究部には連絡があり、
観察と文献調査は行ったと聞いています。」
「魔法院としては巨大繭に心当たりは無かったんですか?」
「生物研究部が調査中と聞いていましたので、
少なくとも光魔法部には全く見当もつかなかったですね。」
「そうですか…
では、最後に、光魔法部で最も力が強い方はどなたになります?」
「…治療師のモリー・グッドウッドか
光を操る方でしたらウォルター・マッケイ男爵ですね。」
「お二人はその時、どうされていました?」
「早朝ですから、自宅にいたと思いますよ。
冬の未明に外出する趣味はなさそうな二人ですので。」
「そうですか。ありがとうございました。
また何かあれば相談させて下さい。」
すいません。
タブレットの調子が悪いので
短めな投稿にさせて頂きたく。