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4−12 鎮圧

 侯爵が護衛と共にゴードン家の領都に到着した。

「まず、グレンヴィルを早期に落とす。

 既定の作戦計画を承認し次第、偵察行動を進めよ。

 また、城内への破壊分子の侵入については、

 グレアムが指揮を取り捜査を進めよ。

 エリバンク・レイ両男爵への監視は今まで通り陪臣中心に行う。」

午後の会議で侯爵は基本方針を表明した。

グレアムは破壊工作の捜査の指揮という名目で城内に縛り付けておくのだろう。

王命に従い侯爵の命令で分家や不平分子の陪臣は城から出した。

破壊工作のお陰で領内の反乱分子は大分洗い出され、

あるいは行方をくらませた。 

もう自分の出番は無いとキャサリンは思った。

残り少ない冬休みを寝て過ごそう…


 グレンヴィル子爵としては、王都で反乱が続いている以上、

ゴードン侯爵が領地に戻って来る事は無いと考えていた為、

ゴードン侯爵が領地に戻り、グレンヴィル討伐の指揮を取ると聞いて

大きなショックを受けた。

ハミルトン公爵の反乱に自分の未来を賭けたが、その賭けは負けだった。

とは言え、もう反乱を始めてしまった以上、

降伏する訳にはいかなかった。

降伏とは刑死を意味するからだ。

最早殆どの陪臣が及び腰になる中、

子爵と騎士隊長は必死に迎撃態勢を整えた。

幹線道に布陣し、防御陣地を構築し、

敵軍勢を足止めしている間に両側面に小部隊を走らせ、

敵本陣を奇襲しようとした。

ところがゴードン侯爵の軍勢は幹線道を進軍する軍勢と、

その両側の小道を進む中規模の部隊があり、

その間隙に猟犬を放ち索敵を怠らなかったから、

奇襲部隊は早期に発見され蹴散らされた。

そして逆に側面を通過され後背を突かれたグレンヴィルの迎撃部隊は

騎士隊長以外は早期に降伏した。

騎士隊長は最期に一騎打ちを望み、

望み通り一騎打ちで斬り殺された。

そうして残りの主戦派は子爵本人だけとなり、

本人は本拠地に籠城しようとしたが、

共に討ち死にするのも連座で刑死させられるのも嫌な陪臣達は、

子爵を殺してその死体をゴードン部隊に渡して降伏した。

ちなみにグレンヴィル子爵の妻子は王都にいたので、

グレンヴィル挙兵の報が王都に届いた段階で騎士団に捕縛されていた。


 ゴードン侯爵はグレンヴィルの本拠地に代官を置いて領地まで戻り、

続いてエリバンク男爵領に接する地まで軍勢を進め、

そこで軍勢を3日休ませた。

もちろんゴードン家と1対1で勝負になるとは思っていない

エリバンク男爵の陪臣達は、グレンヴィル子爵の陪臣に倣って降伏した。

自分達の領主夫妻の死体と共に。

もちろん、レイ男爵の陪臣達もそれに倣った。


 グレアム自身の暗殺事件の捜査を指揮したグレアムは、

2年前の破壊分子の蠢動を知ってはいたが、

今回も組織内の多くの部分で破壊工作員が入り込んでいたのを知り、

暗澹たる気持ちになった。

明らかな不正を行った者の半数は自主的に姿をくらまし、

逃げ遅れた者は捕らえられた。

その穴が組織の多くの枝を分断していた。

まず騎士団内の調査を進める必要があった。

一つはグレアムの護衛として信じられる部下の確保が必要であり、

また出征中のゴードン侯爵の身辺に破壊分子がいない事の確認が必要だったのだ。

周囲と話しあって侯爵家の身辺を任せられるグループと

どちらかと言えば前線寄りに配置すべきグループに分類し、

侯爵にも情報を伝達した。

そうして確保した護衛を引き連れグレアムは領都内の捜査を進めようとしたが、

そうすると文官組織の再編が必要となった。

今度は信用出来る者を要所要所に配置する必要があった。

そうして組織を整備して漸く反乱分子の組織の捜査が進む事になった。

領都と商都のボウ商会に捜査が入り、

当面の営業を停止させた。

一方、家内の反乱分子の捜査も進んだ。

2年前の破壊工作の結果、家内に隣接する貴族領出身の者は排除されていたが、

それでも侍従、侍女、役人は貴族家の子女が多く、

今回の事件に加担したと思われる者達は全て北部貴族の出だった。

その多くがハミルトン公の反乱とは関係ない貴族だった。

つまり、ハミルトン公とは別の者によるゴードン家への悪意が

存在する事が明らかになった。


 ここまで調べたところでゴードン侯爵本人が領都に戻って来た。

侯爵はここまでの捜査のまとめに対し、

破壊分子の阻止行動を取る者の介入を明記する様に指示した。

ボウ商会の手引した破壊分子の商都での発見、

そして3波の暗殺集団の阻止はどう見ても偶然では無かったからだ。

そして、反乱貴族討伐の報告書も持たせて

グレアムに王都に戻り王宮への報告を行う様に命じた。

それは3領主の遺体輸送を伴うものなので

その責任の重さとそもそも遺体を持ち運ぶという暗い仕事に

グレアムは思わず渋い顔になったが…

「何、心配する事はない。

 北部貴族が南部貴族を下に見る理由は王家に対する忠誠心が

 違うと思っているからだ。

 家臣として仕えた時間が長いだけ忠誠心が強いと言い張るのだから、

 そんな者達が南部の反乱貴族の遺体を奪うなどという事を

 考える筈がない。

 今回の内乱を裏から操っていたと思われる北部の貴人にとっては

 南部貴族など使い捨ての道具に過ぎず、

 その死体などゴミに等しいだろうよ。」

エドワード・ゴードン侯爵閣下はこう言って

グレアムに必要以上の緊張と部下への強圧的な指示を戒めた。

 パパゴードンは大人の余裕ですね。

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