4−11 後始末と次の準備
翌日午前中に、ゴードン家の領都の城に朗報が入った。
グレンヴィル子爵他3領地の反乱に対して王から討伐の許可を得て、
エドワード・ゴードン侯爵本人が侯爵領に向かっているとの事だった。
王命である以上、貴族同士の私戦ではない。
王命の討伐に逆らう者は逆賊である。
堂々と3貴族を滅ぼして良いのだ。
侯爵の参謀が先行しており、午後には領都に入る予定だ。
刺客の捜査は殆ど進んでいないが、
とりあえず現時点で情報をまとめて参謀に示す必要があり、
グレアム他の首脳陣はそのまとめに忙殺された。
一方、キャサリンは緊張から開放されて午前中は寝ていた。
そうして午後にゴードン家の領都の城近くまで移動し、
事の顛末を確認しようとしたが、
そこで到着した参謀の宣言を聞く事になった。
「侯爵閣下に対して反乱3貴族の討伐の王命が下りました。
侯爵家としては一丸となってこの討伐を完遂する必要があります。
以後、会議において建設的な提言だけ受け付けますが、
作戦を掣肘する様な発言が多い陪臣については
領都への立ち入りを制限することもあるため、
お気をつけて頂ますよう、お願いします。」
会議室がざわつく中、参謀が封書を掲げて封蝋を示す。
「侯爵閣下から閣下の到着までの基本方針の指示を受けております。
ここに読み上げます。
1.優先する討伐対象はグレンヴィル家である。
2.第2次動員を行い、討伐に備える事。
3.食料その他の物資の購入を始める事。
4.グレンヴィル領方面の通行は完全に許可制とする事。
5.反乱・破壊活動等があった場合、
次男ジェフリーは現状のまま山城に幽閉とする。
分家のケイス家は南城に入り、反乱2家の監視に専念する事。
6…」
5の次男と分家の実質的な領都追放は会議室を紛糾させた。
が、侯爵の命令である。
参謀は会議を強制的に終わらせた。
キャサリンは会議を何度か見ていたが、
次男は全く会議には参加していない。山城に隔離されていたからだ。
だからグレアム達に対して異論も唱えていないし、
暗躍しようもない。
分家の息子も当然会議には出ていない。
にも関わらずの厳しい命令だが、後継者争い等というものがありそうだから
グレアムの暗殺なんて事が起こる。
もうその二人に後継者の目は無いと示す事で内紛を掣肘しようと言うのだ。
侯爵家にとっては正しい策なのだろうが…
グレアムは会議が終わっても立ち上がれないでいた。
弟は何も悪い事はしていない。
だが、こうして弟に未来が無いと示す事で、
お家騒動を未然に防止しようというのは正しい。
正しいが、弟の気持ちはどうか…
家人に認められずに怒りの余り公園の木をいつまでも蹴りつけていた
キャサリンが思い出される。
弟もそんな風に…泣く事が出来ないから怒りを表すのだろうか…
ゴードン家の態勢も本格的な臨戦態勢になった。
王命を受けた侯爵閣下の命令に背く事など出来ず、
分家や陪臣達は南部のエリバンク・レイ両男爵に対する
進軍準備の為に多くが領都を離れた。
実は参謀は侯爵の命令を示すタイミングは自由に任されていた。
グレアム暗殺未遂事件が起こった為、
陪臣達の城内の影響力を低下させる為に早急に命令書を示したのだ。
こうして騎士団内、城内の破壊分子の捜査が進められた。
ゴードン家には以前も破壊分子が入り込んだ事があったので、
侯爵家直属の諜報員が各部署に潜り込んでいた。
だからフィンストン子爵の陰謀を司るボウ商会が領都内の役人達に
賄賂をばら撒いていたのは把握されていた。
それが今回の件で捜査を行う正当な理由が明確に出来た。
また、第2の刺客達とコール家家人が度々会っている事も把握されており、
侯爵が到着し次第、逮捕が予定された。
その一方、討伐に関しては兵役の第2次動員が開始され、
その糧秣購入や前線近くへの移送も進められた。
兵の増強により領地境の監視も強化され、
反乱3貴族への連絡、物資の輸送等はシャットアウトされた。
だからゴードン侯爵本人の到着前に、反乱3貴族は糧秣を尽くしかかっていた。
一方、キャサリンはゴードン家が臨戦態勢になるに従い、
破壊工作が進め様が無くなっているのを感じた。
そもそも、潜り込んでいた破壊工作員が
あるいは荒事に従事したため捕らえられ、
あるいは監視を怠ったり不当な命令で監視を移動させたりした後に
逃走したりした為、
暗殺を行う様な人手が足りなくなっている様だった。
侯爵の到着を見届けたら、もう良いかな、と思っていた。
ぐはっ。文字数が少なかった…
お話の接続が悪くなるのでここで切ります。
6/19に本当に微修正しました。内容は変わっていません。