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4−10 騒動の行方

 普通に考えれば、刺客の凶行は人混みに紛れて近づくか、

夜中にこっそり近づくかどちらかだろう。

目標が隔離されている以上、夜中に近づくしかない筈。

城の通用門から下男風の男達4人が入っていく。

そこの立哨はフィンストン側に買収でもされているのか、

何もしない。

男達は布で中を隠した籠しか持っていない。

剣はどうしたのか…

中で2人と合流する。声もなく、ついてこい、のジェスチャーだけする。

城の領主の家族専用の領域に入っていく。

立哨はいない。

交代時間か突発の用件でもあり離れているのか…

コール家より上の立場に破壊分子が潜り込んでいるとしか思えない。

それはもうフィンストン男爵の力だけで出来る事じゃない。

…気づくのが遅すぎた。

もっと徹底的に城内を調査すべきだったんだ。

とは言え、悔いても時間は戻らない。

まずは一の矢を防がないと。

常夜灯が角毎に置かれているとは言え、

薄暗い廊下を男達が歩いていく。

待っている2人が武器を男達に渡していく。

これでこいつらが刺客であることが確定した。

武装した8人が足音を潜めて進んでいく。

大きな花瓶が置いてある台の横を通り、

角を曲がる。

これを使うか…

まあ非常事態だ。必要経費と思って諦めてくれ。

花瓶の横にジャンプする。

花瓶は重い。か弱い令嬢には持ち上げられない重さだ。

でも、花瓶の下にレースの下敷きが置いてあるから、

これを引っ張れば良い。

台の端まで花瓶が移動したところで、

今度は花瓶を逆側から押して行く。

花瓶は台から半分押し出され、45度以上傾いたところで、

じゃあ、さよなら〜

ガチャーン!

と大きな音が夜の静寂を破って響く。

もうキャサリンはジャンプして遠く離れていた。

「何事だ!」

「侯爵家区域だ!」

「立哨がいないぞ!」

警告する笛の音が響く。

各所から現れた騎士達が廊下を走っていく。

刺客達はどこかの部屋に隠れようとしたが、

警戒態勢である。部屋には鍵がかかっていた。

「いたぞ!」

再び笛の音が響く。

廊下で両側から騎士達に挟まれた刺客達は、

戻る方向に突破口を開こうとしたが、

前の騎士達と切り結んでいる間に

逆方向の騎士達が迫り背中方向から肩を切られ、

攻め手を失った後に

容赦ないゴードン家の騎士達に両手両足を折られて制圧された。

笛の音で集まってきた騎士達は情報交換を行った。

「どうしてここまで入られた!?」

「立哨がいませんでした。」

「第2中隊は何をやっていた!?」

いや、ここはもう良いから、再度警戒態勢を整えてよ…

二の矢がさぁ…

別方向から4人の下男が隙をついて更に奥に進んでいく。

こいつらか…

もう警戒態勢はガタガタだ。

仕方がない。

さっき武器庫に入って短剣を持ち出してきたんだ。

いや、盗んでないよ、必要経費。

しかも返すからさ。

ジャンプしてコール家の刺客の後ろに現れる。

短剣を力をこめて刺客達に向けて投げる。

運が悪ければ死ぬかもね…

キャサリンは結末も見ずにジャンプして離れていく。

ところがキャサリンは短剣投げなど練習していないから、

短剣はぐるぐる回って飛んでいき…

刺客一人の頭に柄の方が当たった。

「ガッ!」

男は思わず大声を上げた。

それは角の向こうにいた騎士達に聞こえた。

「何事だ!」

騎士達は刺客達に向かって走っていった。

こうしてコール家の刺客達も制圧された。


 ベッドに入っていたグレアムは侍従に起こされ、

8人の騎士に守られて会議室に向かった。

いつもの騎士の男と文官の男が揃ってグレアムを迎えた。

「刺客だったか…」

「騎士団内部に破壊分子が入っていたらしい。

 侯爵家区域を守る立哨が持ち場を離れていた。

 誰がその命令を出したのか調査中だ。」

「騎士団が取り押さえたグループは2グループに分かれていました。

 後のグループは1年以上城内で働いていた下男達です。

 こちらはむしろ内部の犯行と思われます。」

「俺を殺せばお家騒動になると考えたんだな…」

その結果、弟や分家に付いている者が出世する可能性もあると。

分かっていた事だが、弟やいとこからは自分に対する悪意は感じられないのに、

周囲の者達が争いを作っていく。

会議室に騎士が報告にやって来る。

「報告します。

 当時の現場担当だった第2中隊長は行方をくらませております。」

「最初の刺客達は下男を装っておりますが

 該当する人物はおりません。

 外部から侵入したと思われますが、

 どこから侵入したかによって、

 どの部署に外部の工作員が入り込んでいるかが変わります。

 検問担当者と上司は隔離されており、 

 朝になり次第、尋問を開始します。」

「第2の刺客達は商家と陪臣の紹介で雇用された者達です。

 朝から関係者の聞き取り調査を行いますので、

 出頭命令を出し、監視を付けております。」

グレアムは第2の刺客達が気になった。

「第2の刺客達の顔を見れるか?」

「牢に入れておりますので、若が向かわれる様な場所ではありません。」

「取り調べ前に一度顔を見せてくれ。今なら良いか?」

「はい、同行致します。」

刺客達は城内西側の地下牢に入れられていた。

切られた右腕は布でぐるぐる巻きにされ止血されていた。

顔も殴られ腫れ上がっていた刺客達は、

グレアムの記憶にない男達だった。

何か手がかりがあるかと期待していたから、

グレアムは落胆した。

そして、牢から上がってきて、

現場に並んでいた騎士の隊長に声をかけた。

「重要な情報だ。慎重に聞き取ってくれ。」

「了解致しました。」

そして出ていこうとしたグレアムの左側と背後から、

騎士の中の二人が突然駆け出してグレアムに切りつけようとした。


 全く、世話が焼ける…

まだ監視していたキャサリンは、

騎士詰め所の篝火の光を集め、

切りかかった騎士二人の顔面にその光を当てた。

薄暗い部屋の中で急に当てられた光に幻惑された二人の騎士は

そろって足取りが乱れた。

その隙に割り込んだ護衛に剣を飛ばされ、

二人の騎士は取り押さえられた。

これが三の矢だったのだ。

だが、取り押さえられた騎士達は暴れ出し、

数人がかりで漸く押さえつけた頃には痙攣を始めていた。

「毒だ!吐かせろ!」

奥歯に致死性の猛毒を仕込んでいたんだ。

そんな技術はフィンストンには無く、

そもそもこんなものは

命令系統を遡られては困る様な立場の者の名を隠す為の仕掛けの筈だ。

ゴードン家内に向けられた破壊工作の

命令の出どころの地位の高さが察せられる一件だった。

 地味ですね。この小説…

5章では王子様が出てくる予定なんですが、

5章のあらすじどころか4章の文章が中々進まない…

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