4−3 フィンストン領
夕飯がちょっと少なかった。
反乱の影響で物流が滞っている関係だろう。
なるほどゴードン家の文官がぶつくさ言う訳だ。
まぁ王都は平和を取り戻しているからなぁ。
もっともフィンストン男爵の背後の勢力次第でまた何かあるかもしれない。
王都のフィンストン館自体は問題ない距離だ。
しかし、貴族家としては少し館内が散らばっている気がする。
戒厳令下での各貴族への調査は、
我々の様な反乱と無関係な貴族は顔を確認しただけだったが、
血判状に名を連ねた後に寝返った貴族には
ハミルトン部隊の降伏以降に詳しい調査があったのだろう。
男爵は侍従と話をしている。
「エフ様は依然としてグレンヴィルを焚きつけろとの事だ。
彼等も哀れだがこちらも場合によっては同じ目に遭い兼ねない。
明日も下男にこれを届けさせろ。」
フィンストン男爵は侍従に何か封書を渡した。
つまり表立って動けない状況だけど、
反乱関係者からの指示でグレンヴィル対ゴードンの紛争を続けさせようと
しているんだ。
グレアムやエディになら話が出来るんだが…
今グレアムに話をする訳にはいかない。
ゴードン領にいる彼に話しかける訳にはいかないからだ。
ジャンプは誰にも話せない能力なんだ。
見る能力だけで王家が手を出しかねない状況になった。
ジャンプまでバレたらもう奴隷労働一直線だ。
じゃあ、エディに話をするか、となると、
私は彼が何家の人間かも知らない…
ゴードン候に話をするのは論外だ。
彼なら問答無用で私に奴隷労働をさせるだろう。
…もう見ないフリして女官試験の勉強でもするか…
グレアムが大人達に囲まれて硬い顔をしていたのを思い出す。
…えーい!
タダ働きなんだから大して役に立たなくても文句言うなよ!
翌日の午後、フィンストン男爵領までジャンプして調査をする。
フィンストン男爵は暗躍しているだけだ。
実戦力を使う予定はない筈。
また、グレンヴィル家とは連絡を取っているらしい。
王都で使っているのは裏組織なんだから、
主に使っているのは裏組織だろう。
フィンストン領とゴードン領の裏組織を調べる必要がある。
男爵領には幹線道路近くに宿場町がある。
領主館がこの近くにあり、
要するに男爵家の戦力は
幹線道路に何かあった際の抑止が主な任務なのだろう。
だから情報入手は重要で、
裏組織とか王都の裏側を担う権力とも付き合いがあるのだろう。
王都の裏側の権力の一翼がハミルトン公爵達反乱勢力だったが、
それと平民の裏組織は一体ではない。
色んな権力との付き合いがモザイク状態で構成されているんだろう。
だから、そのモザイクの何色かが王都の裏組織、フィンストン家、
ゴードン領の裏組織と繋がっているんだろう。
そう言えば昨日、裏組織の一人がモートン侯爵領に向かっていたなぁ。
途中で確認すると、あれ、王都に帰ろうとしている!?
しまった、モートン侯爵領の裏組織もネットワークに加わっているんだ。
今度フィンストン男爵から裏組織経由で連絡がある時はチェックしよう。
兎も角、フィンストン領の裏組織チェックをしよう…
フィンストン領の裏組織なんて幾つもある筈も無い。
多分半官半民の組織と、純然たる平民の裏組織となるだろう。
ちょっと屋内を見れば分かる。
宿場町の領外食品を取り扱っている商家の倉庫の奥に隠し部屋があり、
武器類が置いてあったんだ。
この商家が領主館と物品の取引がある。
ここを経由して不正規活動をやっているんだろう。
ボウ商会か…
各地の支店を確認した方が良いね。
ちょっと時間がないからもうゴードン領には行けないなぁ。
じゃあ、モートン侯爵領を調査してみよう。
ここは王都へ向かう一つ前の大きな領だから、
幹線道付近に宿場町がある。
でも、領主館は多分こっちじゃなく、もっと北寄りの大きな都市の方だ。
フィンストン領に手紙を持って行く筈の男は幹線道を通っていなかったから、
領主館のある領都の方にある裏組織ネットワークを調べた方が良いけど、
今日はあまり時間がない。
ボウ商会なんてなさそうだし…
この領地と領主は反乱に加わっていなかったし、
王都からは裏組織ネットワークでフィンストン領に
連絡しようとしていたのだから、裏組織を見るべきなんだけど…
時間切れだ。
夕飯に欠席して何らかのペナルティを受ける訳にはいかないから帰ろう。
最初に書いた4章のあらすじを今見ると酷いので、
演出・構成に苦労してます。
こう見ると5章のあらすじももっと練っておくべきだった…