4−2 ゴードン領(2)
王都は戒厳令が解除された。
午前中は王都の平民街を眺めてみる。
何か、町の一部がそわそわしている気がする。
ライアン伯爵が連絡を取っていた裏組織は一網打尽になった様で、
金物屋自体が出入り出来ない様に入口、窓が物理的に閉鎖されている。
その他の用心棒組織は人はいるが開店休業状態だ。
仕事は夜からだからね。
ところが町の裏組織で今回3番目の大きさになった(これまでの3番目は金物屋だった)
組織に人の流れがある。
「では、これをフィンストン領まで急ぎ届けてくれ。」
「おう。」
何か封筒を手渡された男が裏に繋いである馬に乗り、
徒歩より少し速いくらいの速度で西へ向かっていく。
王都からフィンストン領までに裏組織から連絡があると…
午後に山から途中経路を眺めてみよう。
午後に王都の西を調べてみると、
例の男は幹線道ではなく、普通の田舎道を通っている様だ。
この速さだとモートン侯爵領で一泊するんだろうなぁ…
いつまで見てても何もないだろうから、
またゴードン領まで行ってみるか。
ゴードン領の領主の城では、午前の会議で合意が出来たらしく、
午後の会議はしていなかった。
グレアムは昨日近くに座っていた騎士と地図を見ながら話をしている。
「明朝に荷駄部隊を出発させて、2日後には前線に着く。
近隣の緊急補給と合わせて暫く保たせる。」
あれだ、グレンヴィル領と対峙する部隊の補給計画の様だ。
一度、そちらの状態を見てみるかね。
侯爵領は広く、見晴らし距離を進むにも少し遠いので、
一度山側の高所にジャンプしてからグレンヴィル領方面へジャンプする。
気が荒いゴードン家側でなくグレンヴィル家側をまず見てみる。
「ゴードン家からは王都の反乱は鎮圧されたから、
こちらの反乱は無意味だと声がかかっていますが…」
「フィンストン卿からは王都の反乱は鎮圧されていないとの連絡があった。
こちらの兵を惑わす為の宣伝だろう。
兵が動揺しない様に伝えろ。」
…フィンストン男爵はまだ反乱側なのだろうが…
ハミルトン公爵家自体がもうそろそろ本拠地で鎮圧される筈だ。
何で火種を残そうとしているんだろうか。
この機にゴードン家を弱めようとしているのか?
まあ隣の貴族が強いと何かあった時に大変だが、
両家が王家に忠誠を誓っているなら争いは無い筈だ。
とは言え、せっかくここまで来たのだから、
グレンヴィル家の領主館も見てみるか。
たかだか子爵家だから本拠地までの距離もそう遠くない。
グレンヴィル家の領主館では、会議室に5〜6人の男達が集まっていた。
「2週間の兵糧はありますが、すでに4日経っております。
王都の戦況が好転してこちらに援軍を送ってもらえなければジリ貧です。」
「第3者の情報が入らなくなっている。
実際の王都の状態が分からなければ検討のしようがないんだ。」
一番高そうな服を着た男が厳しい口調で話す。
「とは言え、もう蜂起してしまったんだ。
三族皆殺しになるくらいだったらゴードン家を道連れに
滅びるくらいの気構えで戦うしかないんだ!」
他の男たちは陪臣だと思うが、同意の言葉を口にするが、
その声は歯切れが悪かった。
うん、つまり領主はハミルトン公に賭けた。
それは失敗だったと王都の人間は知っている。
だけど、フィンストン男爵が嘘を伝えて反乱を続けさせようとしている。
それは大勢に影響がないものなんだが。
だって北部でその気があるのは今のところフィンストン家?くらいで、
元々この反乱に参加している南部貴族はグレンヴィル家と
その周囲の2家だけだから、
これを呼び水に南部に反乱が波及するとは思えない。
フィンストン家はグレンヴィル家達を生贄に何を得ようとしているのか?
王都でフィンストン家を調べた方が良さそうだ。
続いてゴードン領内、農村が占拠されている地のゴードン家側部隊だけど…
とりあえず主要な道路では丸太で作った簡易的なバリケードで通行を防いでいる。
近くには監視の兵しかいないなぁ…
冬に野営では兵が保たないからね。
隣の農村に部隊がいる様だ。
天幕を張って、補給物資を運び込んでいる。
「負傷兵の隣町までの移送は完了しました。
援軍は編成中との事です。」
「急遽派遣されてこちらの心構えも出来ていない段階での戦闘では
遅れをとったが、充分な戦力が来れば押し返せる筈だ。
早く派遣してくれと連絡してくれ。」
「分かりました。」
こちらは時間が経てば追い出す事は出来そうだけど、
グレンヴィル側はもう10日分くらいしか物資が無いと言っていたから、
向こうの進軍の方が早そうだなぁ…
ここは今日は問題なさそうだから、
もう帰って夜にフィンストン男爵家を確認するか。
ドアラが体調不良でお休みしたのに対し、
つば九郎がお見舞いドリンクを送ったそうです。
久しぶりに心温まるニュースですが、
飲料メーカーの宣伝行為ですよね…
というか、ドアラはチームの不調で心身をやられてないか心配です。