表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/100

3−16 夜戦

 日中に騒ぎは無かった。

もう郊外までハミルトン公の軍勢が来ているというのに。

そして今晩は新月の夜…

決行するなら今晩だろう。

まあ勝手にやってくれ。

どっちにしても南部貴族としては

北部の支配者に従うしか生き延びる方法がないのだから。

夕飯を食べて入浴して寝てしまう。

血生臭い活劇を見るつもりは無いし。


 当事者であるロバート王は眠る事など出来なかった。

軽装鎧を準備して王宮内の作戦指揮室の隣で報告を待っていた。

叔父であるハミルトン公とは

王太子時代には戦友とも言える関係だと思っていた。

愚かな父を掣肘し、後始末に奔走する同志だった筈だ。

父王の亡くなる2年前、

2年続いた干ばつによる税収不足に対し、

父王は増税で税収を確保しようとしたが、

民が苦しんでいる時に増税をする様な者は先の見えない愚か者である。

民草を根気強く育ててこそ収穫があるのだ。

叔父と自分で王権を一時制限する法律を発効させ、

父王を政治から実質排除した。

その時は叔父も民の為、国の為に動いていると思っていたが、

父が亡くなり自分が即位した後に、

経済対策その他を行う為に王権を強化し、

各貴族に対する指導力を強めようとすると、

今度は叔父が先頭に立って反対した。

彼は最初から我々親子の権力を削いで自分の影響力を強めようとしていたのか。

いずれにしろ内乱に至る程の決意があるとは思ってもいなかった。

今、王太子である第1王子が作戦指揮室で騎士団上層部と反乱対応を行っている。

第3王子は騎士団総本部で前線対応を行っている。

この二人は自分と共に国を盛り上げようとしているが、

第2王子は研究と称して科学院に新部門を立ち上げて自分の城として閉じこもり、

政治に関わる気が無い。

第2王子も父と私、叔父と私の様に理解し合えぬ関係なのか。

そうして今日の日をまた繰り返す事になるのか…

まずは今日を乗り越えなければ先は無いのだが。


 キャサリンは何か息苦しさを感じた。

それが夢だったのか見間違いだったのかは分からない。

目を開けると目の前に細めた目が見えた。

いつぞやの空を飛ぶ夢を見た時に近くを飛んでいた女だ。

口の端だけ僅かに持ち上げた。

顔の他の部分が全く無表情の為、

愛想笑いかどうかすら分からない。

上半身を起こした時、女は何処にも居なかった。

…何か厚かましい夢だな…

目が覚めたよ。

内乱はどうなったかな…

大通りはバリケードを作った騎士団が火矢を射った後、

続いて魔法攻撃が行われている。

攻撃側は防御側の倍もいない…

本当に牽制だよね。

火矢や火魔法を木製の大きな盾で防ぎ、

着火した盾は捨てて後ろから新たな盾を出して防いでいる。

防御する騎士団側は計画を知っていたから充分な魔法師を用意した様だ。

他方、攻撃側の反乱部隊は本来は不意打ちで攻めるつもりだったのか、

魔法攻撃は殆どなく只管防禦に徹している。

この大通りを反乱部隊が突破する事はないだろう。

こっちの西側の隠密侵攻部隊はどうしたかな…

あれ、騎士団の防御陣地と異なる小道を反乱部隊が進んでいるよ。

気付いてないね、騎士団は。

世話が焼けるなぁ…

光が欲しい…

この部屋の暖炉に火を入れるか…

常夜灯のランプから火を紙に移して薪の下に入れる。

火が強くなるまで時間がかかるんだよね…

今のうちに東側を見てみるか。

公爵家の見張り台を窓から見て、

ここを中継に魔力を展開すると…

こっちも防御陣地と異なる小道を反乱部隊が通っている。

…偶然も2つ重なると偶然では無いと判断すべきだ。

防御側の情報が反乱部隊に漏れているんじゃないか?

私みたいな能力を持つ者がいるのか、

それとも普通に騎士団か王家に反乱側と内通している者がいるのか…

反乱が失敗してもその後にまだ次があるかもしれないね。

東側は、それじゃあ音でも届けるか。

そっちに私が何か出来るとバレたら不味いからね。

騎士団の陣地の隣の小道に魔力を届けて、

犬が煩い、反乱部隊がそっちを通っているのじゃないか、

と思わせる作戦で行こう。

「ワンッワンッワンッ!」

うん、私は犬科の人間じゃないね。

犬の鳴き声には聞こえないよ。

でも騎士団の気は引けた様だ。

「隣の通りを見てこい!」

指示がでた。

でもまだ2つ横の通りなんだよ。

そっちの通りで音を立てよう。

「ワンッワンッワンッ!」

我が家の他の部屋に聞こえない程度の声だから聞こえないかなぁ…

でも騎士団は気にして反乱部隊の通る通りを見に来た。

「こっちだ!見つけたぞ!」

こっちはこれで良いね。

西側の反乱部隊はまあ光を届けても良い。

鳴き真似は果てしなく下手過ぎるからやってて恥ずかしい。

暖炉の火の光情報を西側反乱部隊の上空に届けて再現する。

ちょっと暗いな。

多少の光の増幅は出来るから、もう少し明るくしてみよう。

「何だこれは!」

反乱部隊の方が騒ぎ出したよ。

隠密行動だから喋っちゃいけないんじゃないのか?

騎士団が偵察隊を出して、両者が遭遇した。

「こっちだ!違う通りを進んでいる!」

こっちの対応ももう良いね。


 騎士団総本部に戦況報告が入る。

「東側、西側の敵部隊発見!

 どちらもこちらの阻止線から外れた道で発見されました!」

「阻止行動は出来たのか!?」

「現状、阻止に成功しております!」

「どうやって敵を察知したのか?」

「東側は物音がして偵察を出した後に発見しました。

 西側は上空から敵部隊を照らす光があり、

 発見しました。」

「光?今日は新月だろう?何が光ったんだ?」

「不明です。」

騎士団総本部に居たエディは、

光という言葉からキャサリンの助力を想像した。

気まぐれな野良猫の様な娘なのに、時々お人よしなんだから…

先王が毒殺された事実はない様です。

ただ、普通の老人でも運転免許を返納したとたん、

逆にボケが始まり易いという調査結果もあるらしく、

権力も仕事もなくなると、

娯楽も少なく医療も発達していない中世相当の世界では

ポックリ逝ってしまう事も少なくない様です。


あと、エディが駄目過ぎる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ