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3−13 反乱の首謀者

 さて、グレアム君よ、

私がハミルトン家にライアン家の家人が入っていたと言った日、

ハミルトン家の書斎は調べられないと言った事、

おかしいとは思わなかった?

エディなら色々考えただろう。

言い訳としては

「外はある程度見えるが中は距離の制約が大きい」

とか言うつもりだったがそういう問いかけはなかったからね。

まあつまり、ハミルトン邸は見えるんだよ。

公爵家は順繰りに王弟が婿に入る。

だから王宮と連絡が取りやすい様に見張り台があり、

他家の屋根の上に出る様な出っ張りがあるんだ。

つまり、そこを中継点に魔法を展開できるから、

公爵邸はどこも見えるし、

上位貴族街は荒業を使えば殆ど調査出来るんだ。

ただ、無制限に見えると思われたくないからハミルトン邸は「見えない」と

言っておいたんだ。

彼等の部下として就職するつもりがないんだから、

こういう能力は低めに見積もらせておくに限る。

そういう訳でハミルトン公爵の動向が気になるから夜も見てみる。

ハミルトン公爵は家令と思われる老齢の家人と話をしている。

「一部に連絡が取れない家があります。

 一方、連絡を求めて来た家にはマクギール子爵経由で連絡を取っております。」

「メイトラム家まで捜査が及べば挽回は不可能になるからな。

 それで良い。」

「時間が過ぎれば動揺する者も増えましょう。

 閣下もお心を決して頂きたく、お願い致します。」

「私の思いは変わらん。

 あの愚かな兄の血統を王家として存続させる訳にはいかん。

 ロバートとて父親ほど愚かではないとは言え、

 事なかれ主義は変わらん。

 国を治めるには時には非情な決断と行動が必要なのだ。」

ロバートとは現王のロバート王の事だろう。

「閣下のお心がお変わりにならないなら、私共は従うのみにございます。」

「今少し苦労をかけるが、頼むぞ。」

「閣下のお心のままに。

 あと、ファントム卿からお手紙が届いております。」

「ふん、あの愚か者がまたお追従でも書いてきたか…」

ハミルトン公は手紙を読んでいる。

国を治めるには…ね。

蟻さんを買うために女性300人以上を売り払うのが国の為になると

思っているのか。

男だから女の苦しみなど理解出来ないのは分かるが、

男女の出生率がほぼ等しいのは知られている。

農家や商家の女300人が消失すると言う事は

同年代の男300人が嫁を取れない事になる。

もっとも反乱でそれ以上の男が死ぬなら不要な女とでも思っているのか。

農業が産業の主力であるこの国で、男手がそれだけ減るという事は、

将来に渡って国力が回復しない事を意味する、

この国が周辺諸国を圧倒する国力があるならそれでも良いが、

例えば教会の総本山から送られてくるこの国の大司教は左遷扱いだと噂される。

つまり田舎の小国扱いなんだ。

そんな国で内部分裂を起こしていればやがて周辺国に呑み込まれてしまうだろう。

国の為?

そんな美名の下に感情論で権力争いをしているだけだよ。

国の為とか言って民に負担を求める奴こそ一番の国賊だ。

「ふん、若造め、やはり適当な事を言ってきおった。

 捜査で騎士団が奔走している時こそ王都の警備が弱る時、

 その時こそ決起の時だと言いよる。

 他人事だから簡単に吐かすわ。」

「ただ、このままこちらの勢力が衰えれば決起など出来なくなります。

 ファントム卿の仰い様も一つの考えと受け止めるのもありかと。」

「そうだな。

 水面下で兵力を移動させよう。」

ハミルトン公はファントム卿とやらの手紙を暖炉に焚べる。

残してはいけない手紙なのか…

家令らしき老人が退出した後、

ハミルトン公はいくつかの書類を鍵付きの本棚から出しては

少し書き込み、戻していく。

明日はこの辺りの文章を確認しよう。

会話からすると今晩はメイトラム家よりマクギール家を調べた方が良さそうだ。

マクギール子爵は北部貴族の下位貴族街か…

この間エディに地図をもらったお陰で迷う事がない。

南部と北部の貴族街の中間あたりの適当な家を見つめ、

そこを中継点にして魔力を伸ばせば一息だ。

…忙しそうだな。

なにせ10通以上は手紙を書かなきゃいけないんだろうからね。

侍従が宛名書きはしているな。

まあサインと封蝋さえ子爵のものなら失礼には当たらないだろう。

…宛名は皆、血判状のメンバーだね。

メモメモ。

一応メイトラム伯爵家も見ておくか。

書斎で頭を抱えているのがメイトラム伯爵なんだろうね…

ゴースト卿からの手紙か。

何々…

「極秘裏に兵力を集め、王都近郊に潜伏させるべし。」

冬に市街以外に潜伏…無茶を言うよね。

凍死するって。

まあ写しを書いておこう。

もうちょっと調べたら今晩はもう良いや。

相手がやる気だって分かったんだから、

明日ハミルトン公の書斎の該当する場所を調べて写しを取れば良い。

 地下組織への連絡と言えば、

秋の日のヴァイオリンの詩でしょうか。

ラジオがまだないですが、この世界は。

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