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2−7 試験勉強(1)

 子爵は怪しい書類を早急に王都の騎士団に提出した。

こんなものを手元に置いてある事が判れば子爵の方が疑われるからだ。

報告を聞いた王は

王都での誘拐組織の摘発に失敗した事を知っていたから、

騎士団を即日動かした。

ラムゼイ伯爵領付近で幹線道路がいつまでも復旧せずに封鎖されている点も

懸念していた為、

フレイザー男爵だけでなくラムゼイ伯爵にも調査が及ぶ事となった。

ところが犯罪組織の間で騎士団の捜査状況が横展開されていた為、

ラムゼイ伯爵の元にも先に情報が入り、

大慌てで証拠隠滅と幹線道路の補修作業を始めた。

一度崩してまた埋め直すという作業を始めたんだ。

一方フレイザー男爵は証文の紛失に気付いていなかったから、

色々後手に回った。

それでも「蟻」は上手く隠したらしく、騎士団は気付けなかった。

ラムゼイ伯爵は幹線道路の封鎖に関して釈明に追われたが

人身売買には直接関わっていなかったので、

不審には思われたが決定的な証拠は出なかった。

但し、騎士団は伯爵領と男爵領を2ヶ月かけて調査した為、

この地での人身売買はこの間に停止していた。

それはハイファックス領の少女達にとっては良い事だった。

但し、幹線道の流通に関しても騎士団の厳しい取り調べが行われた為、

扇子の流通は中々回復しなかった。


 その時までに、アイリーンはいとこを通じて3年分の試験情報を手に入れていた。

「え、3年分!?

 いとこは2才上とか言ってなかった?」

「うん、でもいとこは優しいから、顔見知りの後輩から昨年分も

 入手してくれたの。」

「やった!でも気が利く良い男だね。

 結婚したら?」

「いや、その人もう婚約してるからね。」

「なんだ〜、アイリーンに気があるから手間かけてくれたんじゃないんだ。」

「そんなんじゃなく、優しい人なんだよ。」

「良いな〜。優しいのが一番だよね。」

「そうだね〜。」

アイリーンとシェリルの会話を聞いていると、平和を感じる。

優しいから結婚か…

私の周りの男なんてろくでなしばかりだ。

父親も兄も、グレアムもエディも、犯罪の片棒を担ぐ連中も、

近寄りたくない連中ばかりだ。

「じゃあさ、これからは土曜の午後に勉強会しようよ!」

「そうだね、もう始めないと間に合わないかもしれないし、

 みんなでやればサボれないしね。」

優しい二人が私を見捨てずに起こしてくれる事を期待しちゃうね。

「どこで勉強会する?」

「よければ我が家でやらない?

 兄が使ってた参考書もあるから便利だと思うんだ。」

アイリーンは大人しそうに見えて割と社交的だよね。

ちゃんと誘ってくれる。

「じゃあ、土曜はアイリーンの馬車でキャンベル家に連れてってくれる?」

「うん、いいよ。」

「私もお願いね。」

「うん、勿論だよ。」


 早速、その週末の土曜の午後にはキャンベル家で勉強を始めた。

「何からやる?」

「魔法学院だからやっぱり魔法理論が大事みたい。

 だからまず魔法理論をやろうよ。」

とりあえず昨年分の問題の答えを手分けして調べて、それを3人で写し合う。

そこでお茶の時間になる。

「やっぱり頭を使った後は甘いものが美味しいよね!」

「頭を使った後でなくても甘いものは美味しいよ。」

この二人は本当に呑気だ。

まあこのくらいの方が田舎娘同士、気が合う。

でも、あの誘拐された娘達も田舎娘で呑気だっただろうに…

貴族令嬢を拐う様な事はないだろうが、

早く大元を捕まえて欲しい。

「そう言えばさ、冬至祭の準備は進んでる?」

「ドレスは新調してるけど、仮縫いで一度合わせたところ。

 少し直してテスト後には出来上がりそうなの。」

「私はまだ仮縫い中。キャサリンは?」

「だいたい合ってるから完成。」

「はや〜い!」

だって吊るしを多少丈を詰めるくらいだからさ…

「扇子とかは手に入った?」

「全然入荷しないみたい。まるで駄目。」

「そうだよね〜。」

あれ、まだ流通が戻らないんだ?

「ねぇ、ところで扇子が入荷しない理由って結局何なんだろう?」

二人の母親には情報が入ってないかな?

「なんか災害があってうまく荷物が流れてないみたい。」

「お母様もそんな事言ってたね…」

まだ流通が戻らないんだ?

騎士団はまだ捜査に入ってないのかな?


 とは言え、キャサリンはもうこの件でタダ働きをするつもりはなかった。

変に頭を突っ込むと気になって動かないといけない気がして。

本当は王家とか子爵家が動かないといけない筈なんだよ。

 もうもう言ってた点を23:10頃修正しました。

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