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2−1 羽根扇子がない

 トントン、とキャサリンの部屋の扉を叩く者がいる。

上位貴族なら、或いはこの家でも夫妻並びに長女長男の部屋なら

侍女侍従が常駐するのだろうが、この部屋にはいない。

キャサリンの侍女は実はメイドであり、キャサリンの侍女役の方がおまけの仕事である。

領地でも侍女が何でもやってくれた訳ではないからキャサリンは気にしていないが。

そういう訳で基本は一人で過ごしているキャサリンなので、

自分で扉を開けた。

顔を見せたのは長女のアレクシアだった。

「夜分にごめんなさい。今、良いかしら?」

「はい、どうぞ。」

アレクシアと侍女が入って来る。

侍女が扉を閉めてくれた。

テーブルを挟んで向かい合う。

「中々時間が取れなくて、今まで放っておいてごめんなさいね。」

「いえ、別に…」

何を今更な話だ。

「学院で困った事はない?

 アンソニーもブレンダも頼りにならないと思うけど、

 場合によっては相談した方が良いと思うし、

 私だって言ってくれれば時間を取るからね。」

…何を相談しろと言うのだろう。

あなたは両親側の人間で、兄もそっち側の人間だ。

ブレンダに至っては私並に家の中で影響力がない。

親が早々に私を切っている以上、

私は卒業後に家を出る事に備える以外にする事はなく、

だからそちらに話す事などない。

「学院内では恙無く過ごしています。

 今は問題がありませんが、何か問題があればお言葉に甘えさせて頂きます。」

「本当に困った事があったら言ってね?

 問題になってから相談されるより、早めに相談して貰えれば出来る事はあるから。」

ああ、問題を起こす事を心配してるのか。それなら納得だ。

「はい。問題になりそうなら相談致します。」

「そうしてね。ごめんなさい、あまり時間がなくて。

 これで失礼するわね。」

「はい、お休みなさい。」

心配など無用ですよ。

何かあったら私一人なら何処にでも行けるし。

もっともその先は続かないけど。

生半可な情ならいらないのに。

放っておいてくれれば、あなたも他人として扱えるのに。

下手に言葉をくれても、心が乱れるだけなのに。


 冬至祭のパーティで女性が羽根扇子を持つと縁起が良いという

風習がスチュアート王国にはある。

当然、魔法学院の冬休み最初の日に行われるパーティでも

羽根扇子は必需品で、今の時期には注文が殺到する筈なのだが。

「ねぇねぇ、聞いた?

 西部産の蛇の目羽根の扇子が全然入荷しないんだって!」

シェリルはどこで聞いてきたのかそんな話をし始めた。

「え、冬至祭用の扇子の事?」

「そう!

 侯爵家のお嬢様が注文しようと商会を呼んだら、

 入荷予定が無いって言われたんだって。」

「じゃあ、他の商会に問い合わせたらどうなの?」

「それが、どこの商会にも入ってこないんで、

 上位貴族の夫人向けに売ったらもう在庫なしだって。」

「え〜、私まだ持ってないよ…」

「私も持ってない!どうしよう!

 キャサリンはどう?」

扇子どころか家令は吊るしのドレスを注文して終わりにしようとしたんだよ。

揃いの靴を何とか注文させてもらったところだ。

「安い扇子はどこで買ったら良いんだろう…」

「だからお金を出しても蛇の目羽根の扇子は買えないんだってば!」

態々高いお金を出してぐるぐる模様の目が回る扇子を欲しがる神経が知れないね…

「お母様の扇子を借りられないかな…」

アイリーンは親子共用で乗り切るつもりか。

親たちのパーティは学院生の翌日だからね。

「うちのお母様は持ってないんじゃないかな…地味好きだから。」

シェリルのお母さんはシックなのが好きなんだね。

「そういう訳だから、売っているお店を知ってたら教えてね!」

「お母様に聞いてみるけど…侯爵家の出入りの商会がないって言ってるんなら

 難しいよね。」

「どっちかと言うともっと安いので済ませそうだよ。」

と言いながら、まだ時間があるから調べてみるか。

装飾品は北部側に産地があり、

羽根扇子は北部の西側、布の扇子は北部の東側が有名だ。

日曜にでも西側に行ってみよう。

安い品が売っているならその時に買ってもいいし。

 2−2との兼ね合いで文字が少なくなっております。

もうちょっと華が欲しいかな。


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