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暴走、こわひ…


ふぅ。爽快爽快。ロケランで敵を粉砕する機会なんて滅多に訪れないから、ある意味いい思い出になった。


ぜろちゃんのファンで追っかけをしてくれている山桜花蓮ちゃんがいるとは思わなかったが、まあ、ぜろちゃんファンサはしない主義なんで。

ロケランで大魔獣ぱおんぱおんをぶっ潰した後は、すぐに時間停止を使ってその場から退散させてもらいましたよと。


もう1人いた白い魔法少女の子も見覚えある気がするんだけど、どっかであってたっけ? まあいいや。とにかく、こっからどうするか、なんだが。


選択肢は2つ。もう一回ぶちガールのところに戻るか、戻らないか。ただそれだけ。

戻らない場合、ぶちガールはオレのことをロケランに恐れ慄き、尻尾を巻いて逃げた腰抜けだという勘違いをしてしまうだろう。それはいただけない。最強であるならば、何者にも屈しない圧倒的な“余裕”を見せていく必要がある。


ただ、じゃあぶちガールのところに戻るのかっていうと、こっちはこっちで問題がある。

それは、もう一回ロケランぶちかましされたらどうしようか問題だ。


今回はたまたま都合のいいでっかいぱおんぱおんがいたからどうにかなったが、デカブツ魔獣さんがそう都合よくぽんぽんぽんたんぽぽふわふわと湧いてくれるようには思えない。


街中で被害出すわけにもいかないしな。うーんこまたな大旋風。


まあでも、腰抜け認定だけはされたくないから、顔くらいは見せておくべきだろう。というか、ロケラン無意味ですよアピールしまくってロケラン使われないようにすればいいのでは?


いけるか? いや、いけるな!




*




「よっ!」


「んな……私のロケランは…?」


「残念だけど、ぜろちゃんにロケランは効かないんだ。いくらぶちかまそうと無駄だぜ」


「そんな……」


よし! ロケランききませんアピールは有効みたいだ。これで街中でぶちガールがロケランぶちかましを決行することもないだろう。


「遠距離攻撃は総じて無駄……ならば……」


ぶちガールの手元が光り出す。

ふむ、ああいう感じで武器作ってたんだ。あんまり手元見てなかったから気付かなかった。


「これなら……!」


ふむ、剣か。扱い難しそうだけどなぁ。刀とかもそうだけど、あれそんなブンブン振り回せるような代物じゃないっていうか。ナイフとかのが小回りきいて使いやすいと思うよ。


「くらえー!!」


ぶちガールはぜろちゃんに突進してくる。が、近接武器にあまり慣れていないんだろう。動きが全くなっていない。素人目でも分かるくらいにはぶちガールの動きは剣術初心者のそれだった。


「ひょい」


なので避けるのも容易。Sランク魔法少女という肩書のぶちガールではあるが、あくまでそれは魔獣討伐の評価で得たものであって、対人戦において如何程ののものなのかは評価対象外だ。つまり、今オレの目の前にいるのは、凶器を持っていること以外は何も特別じゃない、ただの普通の少女。


「遠距離の方がよかったんじゃないの〜?」


「うるさい!!」


ぶちガールは必死の形相でオレに剣を振るってくるが、正直当たるわけがない。体動かすのは苦手な類なのかもな。


さて、避けるだけでも、“余裕”は見せられるし、最強の面子は保たれるんだが、いい機会だ。ここいらで実力差ってやつを見せてやるとするか。せっかく近接戦闘の練習もしたことだし。


つーわけで、一旦時間停止。

えーと、確か制服ガールと戦ってすぐにぶちガールが来たから、名刀『桜河坂』はその辺に……。よし、転がってたな。いつもの保管場所に置いてあげられなくてごめんな、でも急に来られたからさ……。


ってなわけで、今からこの、ぜろちゃん流剣技を見せつけて、ぶちガールを圧倒したいと思いまーす。


時間停止解除!


「な……いつの間に…!」


「そっちが武器使うなら、こっちも使わせてもらうぜ」


よし! ここからぜろちゃんのチート無双タイムの始まりだ!!

おらおらおらおら!!


「よいしょ」


「くっ!」


名刀『桜河坂』を、ぶちガールの持っている剣にぶつけて攻撃する。ぶちガール本人にダイレクトアタックしちゃうと、怪我させちゃったりしかねないからね。


強者はさ、如何に相手を無傷で、それでいて圧倒できるか、その技量も求められると思うんだよね。

別にぜろちゃんが優しいとかではなく、単純に強者としての矜持的な? そういうわけだ。


「クソ……! お前! やるなら、さっさと……」


「へ〜? そんな口叩いていいのかな〜? もうトドメさしちゃおっかな〜? いや〜困ったな〜! オレってば強すぎて、ほらほらどうしたの? 全然動きがなってないぞ〜!」


「ふざけっ!」


ふっふっふ、気分が良い、気分が良いぞ。

やはりスーパーぜろちゃん最強無双フィーバータイムはいいな。ぜろちゃんの自尊心が満たされていく。


「くっそ……私は……私には! 居場所が……居場所が必要なんだ!!!!」


そう叫んだぶちガールは、剣を投げ捨て、ぜろちゃんの腕を掴んできて……。え?


「くっふふ……これでもう、逃げられないでしょ?」


「へ?」


何これ? ヤンデレ?


「美澄ちゃんの推測では、0号の固有魔法は『時間停止』なんじゃないかって言ってたけど、仮にそうだったとして、至近距離で捕まえられちゃ、流石の0号も、逃げられはしないはず。だから………この距離なら……!」


ま、まさか……!

ぶちガールの手元が光り出す。おそらく武器を作るために。この至近距離で、確実に、ぜろちゃんを仕留めるために、だ!


や、やばいぞ! 時間停止したって、拘束されてちゃ上手いこと逃げられない!


「私は……失敗しない……! 任務を遂行して……私は……私は……!!」


眩しく光る、その手元から、やがて光が消えていく。

おそるおそる、オレはぶちガールの手元を見てみる。


「ひっ…」


思わず悲鳴を上げてしまったのも仕方ないだろう。

てっきりオレは、ぶちガールが何らかの武器を作り出して、それを自身の手に持つ形で、ぜろちゃんに攻撃を仕掛けると思っていた。


けど、実際にぶちガールの手を見ると、そうではなかった。


「手が……」


ぶちガールの手に、武器が握られているのではない。

ぶちガールの手そのものが、銃のような形状、すなわち、武器そのものとなっていたのだ。


「なに………これ………」


至近距離で撃たれたら避けようがない…。なんて思っていたが、どうやらぶちガールにとっても手が武器になってしまうことは想定外だったのか、動揺したような表情を見せている。


「なんで……いや……いや!」


ぶちガールは恐怖のあまり、オレから手を離してうろたえ始めている。

正直オレも何が起こっているのかわからない。固有魔法の使い方を間違えた?

そんなことがあるんだろうか? 精度の問題……でもこの子、一応Sランク、だよな? Sよりも下のランクの魔法少女でも、こんなこと起きてるってことなんだろうか?


わかんねー。ぜろちゃんSNSとかやってない(というか物理的にできない)もんだから、その辺の事情がわかんねー。


「い、痛い……痛い! なんで………なんで………。私は……頑張ったのに……」


その……見てるとすごく痛々しいんですけど……。というか、怖すぎない? 自分の固有魔法で痛い目にあうって。死んだらそこでおしまいだからまだしも、こういう身体に支障をきたしたり、痛みを伴ったりするのってキツくないか? ひえ……。


「いたい………いたいよ………」


さっきまで敵対してたわけだけど、流石にこれは可哀想っていうか……。

で、でもぜろちゃんにできることって、何にもないし……。

ってそういやこの辺にさっきぜろちゃんが頭突きして気絶させた制服ガールがいるはず……。制服ガールはぶちガールと同じSランク魔法少女なわけだし、とりあえず制服ガールを起こして相談と行こう。うん。それしかない。さて、そうと決まったら早速……。


「固有魔法の暴走、確認。人工魔法少女プロトタイプγ型。人工魔法少女プロトタイプβ型の処分を開始する」


「へ?」


制服ガールを起こそうと、彼女の姿を探すために周囲を確認してみたところ、どこかでみたような、ハルバードを持った魔法少女らしき少女が、物騒なことを話している姿が視界に入ってきた。


……そうだ、この子、前に魔獣がゴ⚪︎ブリのごとく湧いて出た時に、そいつら蹴散らすために4人くらいで派遣されたSランク魔法少女のうちの1人だ。魔法少女オッくんパッたん的な名前のやつに解説してもらった覚えがある。


「切…美……ちゃん…?」


どうやら、ぶちガールもハルバード少女の存在に気づいたらしく、おそらく彼女の名前か何かを呟いている感じだ。


「聞こえなかった? 処分。固有魔法が暴走した時点で、貴方の制御不能性、危険度の向上、反逆可能性等の要素が確認された。ゆえに、私が責任を持って、貴方を処分する。ついでに、そこにいる0号も処分する。幸い、周囲には気絶している風薙刹那の存在しか確認できない。今ここで2人を処分しても、一般人や他の一般魔法少女に目視される危険性は皆無」


「ま、待ってよ! 私達、仲間でしょ…? い、今まで一緒に戦ってきたじゃない! ね、ねえ切美ちゃん…。切美ちゃんは、私のこと、仲間だと思ってなかったの…?」


「それは今、関係ない。仲間だとしても、処分しなければならないものは処分しなければならない。そういう決まり、規則、任務。私たちの存在意義ともいう。それを守れなければ、私たちに存在意義はないと言ってもいい」


「そんな……」


どうやら、固有魔法の暴走? とやらをぶちガールが起こしてしまったらしく、それを起こした以上、生かしておくわけにはいかないと。ハルバード少女の言い分的にはこうなるらしい。


さっき人工魔法少女がどうこうとか言ってたし、もしかしてぶちガールとハルバード少女も、オレやにこちゃん、いちごちゃんと同じように、人工魔法少女ってことなんだろうか。


何はともあれ、このままだとぶちガールはハルバード少女に処分される。処分ってやっぱ、命奪うねってことだよな。そりゃ……。


「や、やだ……」


「規則は規則。ルールだし、秩序。守らなきゃいけない。だから、これは決定事項。大人しく、死んで」


あーもうわかったよ。そんなキャラじゃねーけど。


オレはさっさと時間停止を使ってぶちガールの元に移動する。すぐさま解除して、放心中のぶちガールにちょっと大きめの声で話しかける。


「おい、逃げるぞ!!」


「えっ?」


ぶちガールの手を掴んで、時間停止を発動。時間停止の移動できる対象、裏の世界に、ぶちガールも連れていく。


あーあ。やっちまったなー。

さて、これからどうすっかなー。

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