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ロケラン、発射


なんか知らんけど、気づいたら風薙刹那が地面に倒れてた。いや、急に鼻がムズムズしだしたからな〜。多分くしゃみの勢いで風薙刹那こと制服ガールに追突してしまったんだろう。風薙流とやらで勝負するつもりだっただろうし、ぜろちゃんのずつきで気絶させてしまったことに関しては申し訳ないことをしたと思ってる。


なんだろ、海賊ガールの時も顔殴っちゃったし、もしかして女の子の顔に傷をつける才能でも持ってるのか? いらないなぁそんな才能…。


まあ、とにかく、一応Sランク魔法少女らしい彼女との戦闘で、ぜろちゃんが身につけた技術はしっかり活用できているということが確認できた。といっても、この刹那って子、全然魔法使わなかったんだよね。本気でぜろちゃんのこと殺しにきたりしてたわけじゃないだろうから、その影響なんだろうけどさ。


まあ、ぜろちゃんだって『時間停止』を使えば余裕だったからな、互いにフェアな戦いのために力を制限したってとこだろう。


にしても、どうしよう。この子。

こんなところで放置するわけにもいかないしなぁ。かといって、この子の知り合いに渡そうにも、それってSランク魔法少女とか、ぜろちゃんのことを捕まえようとしてくるやつらのところだろうし。


いちごちゃんの居場所とか聞いてないからそっちにも渡せんしなぁ。マジで困った。


「死ね」


瞬間。風を切る音が聞こえた。


咄嗟にオレは『時間停止』を発動し、周囲の様子を確認する。


空気中に一つの弾丸と、その軌道を辿っていくと、一つの人影があった。

その人影には見覚えがあった。そこまで深い交流はないが、数少ないSランク魔法少女であるため、容姿くらいは覚えている。


「銃ぶちかましツインテガールか」


『死ね』なんて物騒な単語が聞こえなかったら、気づくのが少し遅れていたかもしれない。いや、本当に。


今のは、殺意マシマシだった。本気でぜろちゃんを殺そうって感じで来てたな。そんなに恨みを買うようなことをした覚えはないのだが。


「刹那ちゃんに何をした…! 私の、私達の仲間に…!」


あー、なるほどな。銃ぶちかましツインテガールは友達思いの子だったわけだ。


ま、ぜろちゃんが最強のSランク魔法少女をあっさりと撃破してしまうような天才最強、略して天最強な魔法少女だったからなー。そりゃびっくりもするだろうな。なんせSランク魔法少女を倒したんだ。


「ふっ! 天最強なぜろちゃんに恐れ慄くがいい!」


「訳のわからないことを……!」


銃ぶちかましツインテガールはぜろちゃんに銃をぶちかましてくる。うん、あだ名が長い! 省略してぶちガールで行こう。いいね、呼びやすい。


んでだ。ぶちガールは2丁拳銃でバンバンバンバン銃を撃ってきているわけだが、残念ながらぜろちゃんには通用しない。


なぜかって? それはぜろちゃんが最強だからである! まあ、単純に遠距離攻撃は時間停止使えばどうとでもなるというのが理由なんですけども。


弾丸が止まって見えるぜ! なんたって実際に止まってるんだからな! ガハハっ!ってわけだ。


でも、ただ時間停止で避けるだけじゃつまらない。

なんたってぜろちゃんは最強なんだ。最強ってのは他を追従させないくらいの実力を持ち合わせてるもんだ。


それを示すのにもっとも手っ取り早いのは、“余裕“だ。

どんな攻撃にも動じず、冷静に対処する。


そんな”余裕“を見せることさえできれば、最強感マシマシ! 

ぜろちゃん最強伝説の1ページになること間違いなしだ!


じゃあ、具体的にどうやって“余裕”を見せるか。


簡単だ。


銃弾が、当たる直前、スレスレで良ければいい。

人間、死を目前にすると焦るものである。普通、弾丸が目の前に飛んでくれば、なるべくはやく、焦って避けようとするだろう。


だが、最強なぜろちゃんには、時間停止がある! これを使えば、まるで弾丸が当たる直前に高速で避けたかのように見せることが可能なのである!


弾丸が当たる直前に時間停止を発動させた後に横に避けて時間停止を解除すれば、高速移動ぜろちゃんの完成だ。


「な、んで! 銃弾が当たらない!」


「ふっ! オレは最強の魔法少女と名高いSSランクの魔法少女西條吹雪ですら倒せないような最強の存在だぞ? Sランク魔法少女程度にやられるような雑魚と同じにしないでほしいぜ!」


へっへっへ! 焦ってる焦ってる。ぶちガールちゃん焦ってるぞー! そりゃビビるよなぁ! 銃弾をスレスレで余裕を持って避けてたら強者感半端ないよなぁ!


ふんふんふーん。よっゆうよっゆう、よっゆっう♪

さいきょう、さいきょう、さっいっきょう♪


「クソっ、銃じゃダメか…! なら…」


「へ?」


ぶちガール、銃を捨てる。そういや魔法少女パシリ星みたいな名前のやつが、いろんな魔法武器作れる的なこと言ってたよな…? え、まさか……?


「これなら、どうだ…!」


ぶちガール、アサルトライフルを持つ。


いや、別に時間停止使えば避けれるんだけど、

アサルトライフルだと、ぜろちゃんの最強ムーブ難しいような気が……。


「お前には、死んでもらわないと!!」


あ、いや案外いけるわ。

結局銃の軌道ってある程度決まってるし、何かの間違いで弾飛んできてても時間停止してる間に危なそうな弾がないか確認できるし。うん、ぜろちゃんの最強ムーブは続行可能! いえいいえいぴーすぴーす!


「なら!」


へー、また変えるんだ? どうせぜろちゃんには効かないのになー! 


「はは、範囲攻撃なら、流石に…!」


ぶちガール、ロケランを持つ。

いやいや、武器変えたところで時間停止の前じゃ……、ってロケラン!? んな物騒なもんも作れんの? 


「くらえ!」


まてまてまてまてちょっと待って!


っておーいうたれとる!!


時間停止時間停止!!


「ふぅ、間に合った…」


いや、間に合ってないんだよなぁ。ロケランうたれとるし……。


「え、これどうする?」


放置してたら一部被害を被る家があるし、放って逃げるって選択はなしだ。罪悪感が残るからな。


どうしよ、これ、触って大丈夫かな?


「あ、大丈夫そう」


一応、ぜろちゃんの時間停止は、時間が動いてる表の世界と、停止した世界で動ける裏の世界があるって感じの魔法で、時間停止を発動してるぜろちゃん自身は裏の世界、止まってるように見えるものは全部表の世界だ。いちごちゃんとかを時間停止の対象から省いたのは、裏の世界にいちごちゃん達を呼んだからって感じだ。ちなみに、手を繋いだりとかするとそれが簡単だからそれやったりするってのはある。


つまり、裏の世界に物体をよこせば、その物体を動かすことも可能になる、のだが、今回の場合、それをしちゃうとロケランでぜろちゃんが天に召されてしまう。


天最強なぜろちゃん、本当に天に逝くの巻だ。


まあ、でだ。以上の理由から、ロケランを裏の世界に持ち込まずに動かす必要があったんだが、なんか、理屈はわからんけどなんとかなりそうだ。


「でも、このロケランどうしよっかなぁ……」


ロケラン放置して被害被る人いたら困るんだけどなぁ。なんかその辺にちょうどいい魔獣とかいないかなぁ?


「適当に歩いて魔獣見つけるか! よーしいくぞ! ほら、ついてこいロケラン1号! お前が役割を果たせる相手を一緒に探してやるからな!」








Dランク魔法少女、白花愛生の眼前には、巨大で獰猛な、象を模したかのような魔獣が立ちはだかっていた。体は大きく、人間など簡単に踏み潰してしまいそうな勢いのある魔獣に対して、愛生ができることなど限られている。


愛生は以前にも、魔獣に命を奪われかけたことがある。その時は謎の魔法少女の助けにより事なきを得たが、その頃と比べて彼女の実力が向上したというわけではない。

彼女の従姉妹はその余りある才能を持って、ありとあらゆる魔獣を討伐している超有名魔法少女なのだが、残念ながら愛生自身にはそんな才能は備わっていなかった。


そのため、当然ながら愛生が魔獣討伐を行う際は、必ず先輩の魔法少女が同伴することになっている。のだが…。


「愛生……救援を呼びなさい。今回の魔獣、私達だけで対処できるような相手じゃないわ……」


愛生の先輩であり、Aランクの肩書を持っている魔法少女、山桜花蓮では、眼前の魔獣の実力には及ばなかった。


魔獣の討伐に要求されるランクは、どう考えてもSランク相当のものであり、通常の魔獣のようにはいかない強敵であることは確かだった。


(さて、生きて帰れるか……)


当然、それだけの強大な敵を相手にするのだ。花蓮も無傷で帰れるとは思っていない。なんなら、命を落とす可能性だって低くはないだろう。


「花蓮さん、まさか……」


「安心しなさい。倒すのは無理だけど、足止めくらいならできるから。愛生は民間人の非難と、Sランク魔法少女への救援要請をお願い」


花蓮の様子を見た愛生は、状況の深刻さを察する。花蓮は魔獣の足止めくらいならできると言っていたが、愛生には花蓮が自分を心配させないためにそう主張している、あるいは自分自身に言い聞かせているようにしか思えなかった。


愛生は急いで、Sランクへの救援要請をしようとする。が、公式SNSやHPなどを確認してみると、どうにもSランク魔法少女達は忙しいらしく、今仕事の入っていないSランク魔法少女は、正式名称すら分からず、そもそも存在するのかどうかも分からない、刀を扱うという情報だけが載せられた、不安要素を残すような少女だけだった。


(うぅ……! これじゃ本当に救援に応じてくれるか分からない……。そうだ! 吹雪ちゃんなら…!)


愛生はSランク魔法少女への救援は厳しいと判断し、すぐさま自身が信頼を置ける、1人の“最強”の少女へと連絡をする。


彼女がいれば、どんな敵だって怖くはない。


が……。


「繋がらない…」


当然といえば当然だろう。Sランク魔法少女ですら忙しく、救援要請に応じれる数も自然と限られてくるのだ。さらにその上のSSランクである西條吹雪が忙しくないはずがない。ましてや、SSランクという地位に立つのは西條吹雪ただ1人しかいないのだ。そんな人間が、何の働きもすることなく暇な時間を過ごしているという方がおかしい。


「どうしよう…!」


このままでは、自身の尊敬する先輩を死に追いやってしまうかもしれない。そう考えた愛生は、民間人の非難という、花蓮から頼まれた仕事すら忘れて、その場に立ち尽くしてしまう。


彼女の手に持つ花園の杖(イノセントステッキ)も、こんな場では何の役にも立たない。


(誰か……)


白の少女は、ただ願う。


(誰でもいい……! 誰か…!)


この状況を打開する、“誰か”の存在を。


目の前の強敵を、いとも容易く討伐してくれるような、そんな頼もしい存在を。

望まずにはいられなかった。


「ちょうどいいところに、いい感じのデカブツがいるな! ロケラン1号、ようやくお前の出番がやって来たぞ!!」


そんな彼女の元に、どこかで聞いたことのある声が聞こえてくる。



かつて彼女を死の恐怖から救い出した、真っ黒な魔法少女。


彼女は、かつて白の少女を救った時と同じように、目の前の敵を討って、今度は白の少女が尊敬する先輩を救おうとしている。


(ああ、やっぱり……)


「いけー! ロケラン1号! 大魔獣ぱおんぱおんにダイレクトアタックー!」


(わざわざ規約を破って、助けに来てくれる。この子が本当の……)


巨大な魔獣、黒の少女が『ぱおんぱおん』と名付けたソレは、黒の少女が何故か携帯していたロケットランチャーの弾によって、一瞬にして討伐された。


(正義の、魔法少女なんだ…!)


そんな黒の魔法少女を見て、愛生はまた勘違い(盲信)加速(強固に)させていく。


黒の魔法少女が、ロケラン処理のついでとして魔獣討伐に勤しんだことなど、愛生には知るよしもなかった。

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