4,土が消えるとき
土は、砂と、イシと、水とが混じったものである。
細かな砂と、粘りのあるイシと、液体でできている。
1、三つの物質がよくこねられて、ひと塊となる。
2、意志と意思と遺志を込めながら、土の塊を練る。
3、意志と意思と遺志を受けた土にイシが生まれ、土が動き出す。
土はたまに、崩れる。
雨や風や波や振動で崩れる。
転倒して崩れる。
ぶつかって崩れる。
日差しを受けて崩れる。
崩れた土は、砂とイシと水になって、星に混じる。
土から水が無くなった時、砂とイシになって、星に混じる。
イシが砂と水を固めていることができなくなった時、星に混じる。
土は、他愛もないことで崩れる。
森の中は緑と獣が多くて崩れやすい。
海の近くの土は砂が多くて崩れやすい。
水たまりの横の土は水が多くて崩れやすい。
時折、土は表面にひびが入った。
時折、土は表面が欠けた。
多少の崩れを気にせず、意志を貫く土がいた。
多少の崩れを気にせず、意思を保つ土がいた。
多少の崩れを気にせず、遺志を継ぐ土がいた。
崩れてしまったからと、星に帰る土がいた。
土は、星に帰ることを受け入れていた。
また生まれれば良いと海に入る土がいた。
また生まれれば良いと森に入る土がいた。
また生まれれば良いと川の流れを堰き止める土がいた。
また生まれれば良いと風を受ける土がいた。
また生まれれば良いと生活の一部になる土がいた。
また生まれれば良いと仲間を練る場所を覆う土がいた。
時折海を望むことがあった。
時折森を望むことがあった。
時折川を望むことがあった。
時折風雨を望んで、かつてを振り返ることがあった。
時折色んな場所を望んで、かつてを振り返ることがあった。
時折災害を防ぐ壁を望んで、かつてを振り返ることがあった。
星に帰っても、また生まれる。
星に帰っても、また意思は持てる。
星に帰っても、また意志は伝わる。
星に帰っても、また遺志は渡される。
この星は、ただひとつの大きな意志の塊。
この星は、ただひとつの大きな意思の塊。
この星は、ただひとつの大きな遺志の塊。
この星の上で生まれてこの星に帰ってゆくことは、恐れるものではなかったのだ。
この星に土が生まれて、間もない頃のことだ。
まだ数の少なかった土は、災害に見舞われた。
仲間を練る端から、仲間がつぶされていった。
生まれたての土が、いくつもいくつも星に帰っていった。
しかし、土は、何度も何度も星をこねた。
星をこねて、土を練り、仲間を増やした。
この星が、この星である限り、土は生まれ続けるのだ。