2,土という存在
……ここに、土がある。
土は、砂と、石と、水とが混じったものである。
……ここに、土がいる。
土は、砂と、イシと、水とが混じったものである。
イシとは、石。
イシとは、意志。
イシとは、意思。
イシとは、遺志。
土は、イシが混じることで、動き出す。
仲間を作るために。
仲間を増やすために。
仲間を守るために。
仲間を残すために。
土は星の上を自由に動き回る。
土は星の上で時折崩れる。
土は星の上に混じる。
土は練られて、動き出す。
土は崩れて、星に戻る。
土は、森に入らなかった。
森にはいろんなものが多くあって、いつ崩れてしまうかわからないためだ。
土は、獣と触れあわなかった。
動物はいきなり方向転換をして、いつ衝撃で体が崩れてしまうかわからないためだ。
土は、海に近づかなかった。
海の水はいとも簡単に体を溶かしてしまうためだ。
土は、雨の日に出歩かなかった。
少々の雨は体を柔軟にしたが、大粒になると体を崩しかねないためだ。
広がる大地に、土は集まった。
崩れた山肌に、土は集まった。
燃えた森の上に、土は集まった。
ひび割れた星の表面に、土は集まった。
土をこねている場所には、緑が増えない。
土をこねていれば、獣が来ない。
土をこねていても、雨は降る。
土をこねていても、風は吹く。
土をこねていても、大地は揺れる。
土をこねていても、波はうねる。
土をこねていても、日は射す。
森の侵攻をとめるために、土を練った。
獣の侵攻をとめるために、土を練った。
海の侵攻をとめるために、土を練った。
雨の脅威から逃れるために、土を練った。
風の猛威から逃れるために、土を練った。
星の上で暮らすために、土を練った。
土は、星である事を理解していた。
星を練り、星に帰ってゆく。
星に戻り、星の上に生まれる。
生まれても、また星に戻る。
星に戻っても、また生まれる。
生まれて、動いて、練って、崩れて。
増えて、減って、増えて、増えて、増えて、減って、増えて。
はるか昔から繰り返されてきた、土の存在意義である。
土が土である限り繰り返される、この星の凡である。