洞窟、生け贄を捧げられる
質問。
ではなくご報告。
とりあえず、ゴブリンはすべて殺しておきます。
「いやあぁぁぁ!!!!」
「ゴブリン!!!????」
叫び声が聞こえる。
そして、画面ではゴブリンを突き飛ばして走る影が見えた。
全身を覆うローブを羽織っており、身長や顔はわからなかったが、声から考えると少女じゃないかとヘシオスは考えた。
「って、そんなこと考えてる場合じゃない!」
「大変だ!あの娘がこの場所をバラしたらゴブリンたちが殺されちゃう!」
ヘシオスは研究欲の湧いていたゴブリンたちが死んでしまう可能性を恐れて慌てる。
ゴブリンもそのことはわかっているようで、3体ほどのゴブリンが少女を追いかけて走り出した。
少女がそこまで足が速いようにも見えなかったので、ヘシオスはゴブリンならすぐに捕まえることができるだろうと安心した。
そう。
安心したのである。
自分の前世と同じ種族の仲間が殺されるかもしれないのに安心したのである。
すでに、ヘシオスの心が人間のモノから離れて行っていることが分かる。
・・・。
しばらくして、ヘシオスが考えた通り、ゴブリンたちは少女を抱えて帰ってきた。
少女は口にツタのようなものを嚙まされていて、手足も縛られている。
今にも泣きだしそうな顔をしている。
「ドウスル(どうする?)」
「マタ、ニゲテモ、コマル(また逃げられても困る)」
「オクニ、オコウ(奥に置こう)」
「オウ。ソウシヨウ(おう。そうしよう)」
「コノバショニモ、ソロソロ、イケニエヲ、ササゲナケレバ、イケナイコロダカラナ(この場所にもそろそろ生け贄を捧げなければいけない頃だからな)」
ゴブリンたちが少女を抱え、採掘する場所より少し奥の明かり一つない真っ暗な場所に連れて行った。
そして、その場所を柵で囲う。
さらに、ゴブリンたちが全員で集まりてお合わせる。
先頭出てお合わせていたゴブリンがしゃべり出した、
「コチラハ、イケニエデス(こちらは生け贄です)」
「イツモ、スマワセテイタダイテイル、オレイデス(いつも住まわせていただいているお礼です)」
「ドウゾ、オメシアガリクダサイ(どうぞ、お召し上がりください)」
「え!?生け贄!?」
「住まわせていただいているお礼、って言ってるし、僕へのモノだよね」
「、、、い、いらないなぁ」
ヘシオスは微妙な顔をした。
しかし、研究心はさらに炎が大きくなった。
生け贄という文化があるということは、何かしらの宗教的な思想があるということである。
ヘシオスはゴブリンたちがどういった神を信じるのか気になった。
そんなことを考えていた時、
《場所状態『生け贄室:ランクE』が確認されました》
《特典として場所特性『生け贄吸収:ランクA』を獲得しました》
システムメッセージが鳴る。
ヘシオスは新たな場所特性獲得に喜ぶ。
だが、生け贄の少女の事を考えて、その気持ちは相殺された。
「生け贄吸収って何?」
「名前がちょっと怖いんだけど」
少女の写っている画面を眺めつつ、生け贄吸収の説明を探そうと、画面に手を伸ばした、
そのとき、少し指がそれてしまう。
そして、
「あっ!」
「生け贄吸収オンにしちゃった!」