【 身 体 測 定 す る お っ ぱ い 星 人 ① 】
生徒指導室から出て教室に戻る。カズさんと良子さん青木さんが心配して待っていた。現場近くにいたカズさんが「やりすぎだよ」と苦笑して、「タカからだ」とノートの切れ端を渡してきた。
これは黒い教師のあだ名、入院?
ボコられて骨折……爆破計画は中止か。
「タカさんは、なんて?」
「タカ?迷惑かけたって」
未遂事件に終わった、またも命拾いだ。
切れ端を千切ってポケットに押し込む。
「迷惑かけたのはコッチが先!どうするの机、これで何度目?この壊れた机で明日から高橋君勉強するの!?」
「まだ3個目だったかなぁ」
「それは壊した数でしょ!」
「そうだっけ?」
「7回目よ!!」
数えてるのか良子さん。
凄い怒っちゃっただろ。
「持ってくるかなぁ、机」
「……あるの?」
「階段の踊り場に余剰在庫を積んでんの」
オレの身長じゃ机を持って階段は危なっかしいと見て取ったカズさんが、壊れた机をヒョイと持ち上げた。4人で廊下の先にある階段を上っていくと、施錠してあり屋上へ出られない扉の前に、かなり乱雑に積んである。
埃がひどい、手頃なものを探すしかない。
「手ぇ出さなくていいから……カズさん!」
「俺はやるのか?手分けしたら早くない?」
「女子は制服が汚れたら後が大変なんだよ」
カズさんが「へぇい」と1つ持ち上げた。
さぁて、と首を鳴らしてから机の山に向かおうとしたオレの右腕を、良子さんが「待って」と掴まえたので3人がピタリ動きを止めた。
「もしかして部活中?」
「白衣だしな。あぁ!」
「先に身体測定して?」
右手が汚れたら、できない。
時間も遅く人目に付かない。
良子さんがそのままスルリと肘から右手へと小さな両手を滑らせる。
流れるようにゆっくりと左胸へとオレの右手を引き寄せていく……。
制服の胸に押し付けてから、瞼を閉じた。
唇が2ミリほど開いて「どう?」と2文字だけ極々僅かに空気を振動させる。
小声で「失礼します」と挨拶してから、小指と薬指と中指を折り曲げていくと、中学2年生女子の胸部に特有のやわらかい感触を包みこむ、オレとは無縁の肌着がその直下にあり …… ぅん ?
「良子さん、もう少しだけいい?」
少しだけ緊張に身を固くした良子さんが「どうぞ」と答えた。
右手すべての指に入れる力を、少しだけ強くする。
指先に伝わる感触が変わって、心地良い反発力を伝えてくる。
そこで、僅かに睫毛が揺れて瞼を上げたので目と目が合った。
「背伸びしたい御年頃か?」
「さっすが!ど?わかる?」
唐突に切り出したわけではないのか。
これはいかんなぁ、遺憾に思います。
オレの大切な宝物が駄目になったら大変だ。
ここはひとつ、厳しく言っておこう。
「まだまだ1サイズ上げるのは早い」
「 や っ ぱ り そ う か ~ !! 」
「これはサキちゃんぐらいないと形が崩れ――
ガ ラ ッ …… ガ コ ン ! コ ン
「真面目な話してるんだ。静かにしろカズ」
「お前らいきなり、なにやってんの」
「 「 研 究 」 」
「研究。それ一体全体なんの研究?」
「 「 おっぱい の 研 究 ? 」 」
カズはヨタヨタと後退ってガンと机の山に尻を打ち、そこで止まった。
まったく、なにをやってるんだ騒々しい。
「そもそもだ。痩せて胸を大きくしたい、両立するか?」
「いるじゃ~ん!」
少し考えてみる。
うん、いるなぁ。
「そう、クラスに2人。残酷な個人差、第二次性徴恐るべし?」
「残酷すぎるよ~!」
「でもさ、ダイエットだかなんだか知らんけど。どうなった?」
「どうだっけなぁ?」
「覚えてるだろっ!」
「乳だけ萎んだ……」
「そう、乳が萎んだ」
「繰り返さないでよ」
「過ちを繰り返すなと言ってるんだ」
良子さんはガックリ肩を落とした。
どうも変だと相談に来て「どうしたんだ!」と怒ったら「ダイエットをした?」という会話の擦れ違いに仰天し、説教した、「戻りました」の直後にコレでは。
「言っただろ、太ったり痩せたりする必要ないし、巨乳の良子さんにはならない。童顔だけど顔も体形も整ってるし優しくて勉強できる優等生で名前まで良子さん、完璧キャラ立ってるだろ?これ以上なにを望む、あと一押しなにが欲しいんだ……それが巨乳か?エロマンガか?マニアックな変態紳士がお好みか?」
「また童顔って言った!」
「つい、ごめん。オレは良子さんが一番と思ってる。大きさ、形、さわりごこち。いつまでも触っていたいと思うのは良子さんだけだし今だって全く離さないだろ?現にこうして証明している……他の人は3秒くらいなんだ」
「え……そうだったの?」
「この手を離したくない」
「え、それってどういう ――――
「これは良子さんだけ。特別だ」