マユの推理2
数日後、凶器が見付かったと報じられた。
都内JR電車内に放置されていたのが
乗客により「忘れ物」として届けられていた。
「2人を殺害し、凶器を捨てた。3人目は無いということか?」
「犯行をストップしたのかしら」
「これ以上犠牲者が出ないのか。それは良かった事かも」
「もちろん、良いことなんだけど……ネイルガンの写真が出ているわ。セイ、どうなの?お父さんの?」
マユが心配そうに聞く。
「残念だけど……断定出来ない。俺は触っても無いから。青と黒、同じ感じだった。形も似ている。別のガンだという要素はない」
「……じゃあ、本当に、盗まれて犯行に使われたかも知れないのね」
「……あいつが、ここに来た? ……俺も存在を忘れていたネイルガンを盗みに?」
そこのところが、全く解らない。
「結婚披露パーティを利用して、ネイルガンを使っての無差別殺人を計画したとしよう。それで俺に罪を被せることにした。(理由は見当も付かないが)けど、なんでネイルガンが有ると知っていた?」
「あ、もしかしたら、何でも良かったのかも。たまたまネイルガンを見つけただけ」
「どゆこと?」
「人殺しに使える道具が欲しかったの、何でも良かったのよ」
犯人は<剥製屋神流聖>を知っていた。
東京に来ることも知っていた。
剥製屋なら動物を解体する道具を持っていると考えた。
「そうか。チェーンソーでもメスでも、俺の道具なら良かったのか」
「ええ。金槌でも鎌でも」
物色しやすい物置から手を付けた。
そこに小型のネイルガンが、あった。
「用意周到に計画して……目的は、俺を、通り魔犯にすることか?」
「目的は無差別殺人じゃないかしら。愉快犯よ。絶対捕まらない方法を考えて、セイを身代わりにできると、思いついたとか」
「アイツ、黒犬……とんでもない奴だな」
「黒犬なんて、本名じゃ無いでしょ。本名をカナさんに聞くべきよ。どういう人物なのかも」
「それはそうなんだけどね。出来るなら、俺は無関係のままで解決して欲しかった。従姉妹に俺から電話するなんて、想定外だから」
伯母一家には、自分の存在は、忘れていて欲しい。
一期一会の無責任な人間関係が性分に合っている。
伯父伯母も加奈も
嫌いなわけでは無いが。
「セイ、未だに、事件に関係する不審人物の監視カメラの画像が公表されていない。犯人はカメラの死角で犯行に及んでいるのかしら。計画的で用意周到。簡単には捕まらないかも。ねえ……事件と無関係な理由で、また会いたいからとか言って情報を聞き出せば」
「……うん」
「刑事さんにも相談したら?」
「カオルに?」
「犯人らしき男を知っていると。凶器に似たネイルガンが盗まれた事も」
「でもさ、東京の事件なんだよ。迷惑掛けたくないし」
「凶器の所有者かもよ。参考人になる前に、現状を伝えておくべきよ」
「参考人、になっちゃうのか」
記憶を辿れば
父は神戸まで工具を買いに出掛けていた。
輸入品の特殊な製品を扱う店だった。
あのネイルガンはホームセンターとかでは買えない。
希少品かも。
所持者に結びつくのは早かったりして。
「そっか。凶器の所有者は、俺は、アリバイ無いどころか事件現場近くをウロウロして、参考人だ。事情聴取されるかも。そんで調べられたらジャケットから被害者の血痕が出る訳か」
「セイは、重要参考人になっちゃうかもね」
「重要参考人……マジでヤバいな」