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マユの推理

「まさか……無かったの?」

「うん。信じられないな。こんな山奥で泥棒なんて」

「盗まれたのね?」

「間違い無い」

「偶然かしら?」

「……え?」

 マユは今回の事件に関係があるのではと、言う。


「まさか」

「だって、凶器と同じ物が盗まれているのよ」

「……そうだけど。偶然だろ」


「セイは偶然、犯行前後に、犯人に会った。二度も。偶然ネイルガンが盗まれた。……ホントに全部偶然かしら?」

「偶然じゃなかったら……どういう事になるの。いや、アイツとはパーティで初めて会ったんだ。それと、ネイルガンがいつ盗まれたのか分からない。使ってないからね。何年も前に盗まれたかも知れないんだよ」


「いつから無いのかわからないのね。だからといって凶器に使われた可能性はゼロでは無いわ。ねえ、犯人の行動を推理してみましょう。どうしてセイに声を掛けたのか、ただの気まぐれか、理由があったのか」


Mホテルからゴジラホテルまで聖が移動した間に

犯人はAを襲っている。


「時間的に可能なのね?」

「俺は、バス停は、通らなかった。けど、そっちのルートでも移動時間は変わらない。ホテルでチェックインに5分くらい掛かった。犯行時間は5分以内かな」


「計画的では無いわね。行きずりの犯行ね」

バス停にはベンチが数台。

Aは邪魔にならぬ場所に座っていただろう。

常に多くの人がたむろしている場所だ。

だが皆、スマホを見ている。


ホームレスの老婆に

男が近づいて、話しかけているのが目に入っても

スルーするだろう。


「ジャケットの前を開け、ネイルガンを隠し、首に当て引き金を引くだけ。1分もかからないか」

「首に当てるの? 離れたところから打ったんじゃ無いの?」

「ちょっと離したら真っ直ぐ飛ばないし、威力も弱るんだよ。きっちり当てて打ったと思う」


その後、犯人はゴジラホテルのフロントフロアに向かっている。


「セイと短い会話。その後の行動は不明ね」

翌日、午前10時に新宿駅構内でBを襲う。

20分後に都庁展望室で聖に声を掛ける。

「この時も短い立ち話。名刺を渡されたのね」

「そうだよ」

「どうしてわざわざ都庁まで行ったのかな」

「考えてみれば、せわしない奴だな」

「そうよ。通り魔でしょ? なんで犯行前後に意味なくチョロチョロしたのかな。行動が謎すぎる」


「俺が尾行できたら、せめて都庁を出て何処へ行ったか、分かったんだけど」

「……尾行?」


「そう。アイツのすぐ後で、1階に降りたけど、全然、無理。その辺に居るはずなのに見つけられなかった」


「尾行……あ、それよ」

 マユが立ち上がった。

「なるほど、そういうコトね」

 何やら閃いたようだ。


「どういうコト、なの?」

「尾行よ。犯人はセイを尾行していたのよ」

「……そうなの?」


「犯人はパーティ後、セイがゴジラホテルに直行するか確認するために尾行したの」

 新宿駅まで尾行

 ホテルに続く商店街を急ぎ足で向かう姿を確認し

 バス停留所へ行き犯行。

 その後ゴジラホテルフロントへ。

 聖の所在を確認した。


「次の日も尾行していたのよ」

 ゴジラホテルから尾行。

 都庁に入るのを確認し新宿駅に。

 Bを襲う。

駅を出て都庁へ向かう。

展望室に聖が居るのを確認。

 

「ちょっと待って。俺を尾行して新宿駅に戻って犯行は時間的に無理じゃ無いか?」

「タクシーを使えば可能よ。ホテルの前でセイが出てくるのを待っていたのよ。最後まで確認しなくても都庁の近くまで追えば何処へ行ったかは見当が付くでしょ」


「そうか。車だったら余裕だ。だけどさ、なんでアイツ、俺を尾行する?……理由が無いよ」

「……理由?」

「追ってきて意味の無い話、したかったのか?」

「話しかけてきたのよね。……それだけ?」

「一方的にペラペラ喋って、行っちゃった」

「喋っただけ? 本当に? 良く思い出して」


「うん、いきなり話しかけられて……いや、違う。いきなり腕を掴まれたんだ」

「腕を?」

「そうだよ」 

掴んでいる手に、<人殺しの徴>を見たのだ。


「セイ、それはね、身体を触られたってことでしょ?……犯人の手がスーツの上着に触れたのね」


「……問題なの?」

「犯行現場から直行でセイに会いに行って、さっき人殺しをした手で、触ったのよ」


マユの推理が薄々解ってきた。

解ってきたが

同意したくない。

否定する材料を捜す。

しかし逆の事実に気がついてしまう。


2件の犯行は自分にも出来た、と。

1件目:ゴジラホテルに入る前にバス停に寄れた。

2件目:都庁へ行く前に、新宿駅に行けば丁度犯行時間の10時頃だった。

偶然か。


偶然で無ければ

 スーツの上着には被害者の血が擦り付けられているだろう。

 父のネイルガンは……。



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