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1943年2月17日~サポロジェ

 アドルフ・ヒトラーはFw200の機内で考えていた。

 マンシュタインは優秀な男で実績もある。しかし、慎重すぎる。今は、日本がどういう手品を使ったかわからんが太平洋のアメリカ軍を抑え、さらにはパナマ運河を破壊したらしい。北アフリカの連合軍の動きも鈍くなっている。まさかパウルスが降伏するとは思わなかったが、ロシア戦線も我々の手番が来るのではないか。予感がする。今こそ敵をたたく時だ。

 Fw200はサポロジェ郊外の飛行場に向けて降下を開始した。その瞬間、Fw200の4基のエンジンは衝撃を受けた。左翼が根元から折れた。操縦士が、まずいと思った瞬間には、錐揉み状態となって墜落していった。


「元帥。1時間ほど前に総統の搭乗機が墜落したようです。」

 ロシアの猛攻に誰もがあわただしく立ち働いている南方軍司令部に、連絡将校が飛び込んできた。

「何。総統は無事か。」

 ついにその時がきたかと思いながら、マンシュタインは問うた。

「確認されていませんが、現在のところ生存者は見つかっていません。」

「捜索の手を増やせ。総統が見つかっても、生死を含めて極秘としろ。私にまず報告だ。」

 マンシュタインは指示をしながら電話に手を伸ばした。

「国内予備軍オルブリヒト将軍につないでくれ。」

「マンシュタインです。ワルキューレ発動です。」

 生きていようがいまいが、やるしかない。しかし、これで、この忙しいときに総統の相手をしなくて済むのはありがたい。突出してきた敵の戦車部隊を袋のネズミにするチャンスなのだ。マンシュタインは矢継ぎ早に指示を出した。

 指示を出し終わり、少し虚脱しているところに、連絡将校がやってきた。

「元帥。総統の遺骸を発見しました。」

「私も確認に行く。現場は厳重に秘匿するように。」


同日~ベルリン


 国内予備軍総司令官のオルブリヒト大将は、電話を置くと副官をよんだ。

「ワルキューレの発動だ。SSが総統を暗殺し、政権奪取をもくろんでいる。」

 どれだけ指導者層を抑えられるかが勝負だ。今日、ベルリンにいるはずのゲーリング、ヒムラーとゲッペルスは絶対だ。突撃隊幕僚長のルッツェもいるはずだな。ボルマンはヴォルフスシャンツェにいるだろう。

 放送局、国会等の制圧は予定通り、ナチス首脳の逮捕もおおむね予定通りだったが、ヒムラーには逃げられた。ヴォルフスシャンツェはボルマンが指揮するSSが制圧した模様だが、近隣の軍管区に逮捕命令を出した。


 夕刻、臨時政府首班となったベック大将が、ラジオ放送に臨んだ。

「国民の皆さん。本日午前、ロシアに向かったヒトラー総統の搭乗機が着陸直前に爆発し、ヒトラー総統はなくなられました。ドイツ再建の偉大な指導者であったヒトラー総統に哀悼の意を表したいと思います。原因は現在調査中ですが、ヒムラーが政権奪取を図って暗殺した疑いがあります。現在、我が国は戦争中であり、党派の垣根を越えて一致団結、目前の敵と戦うことを優先しなければなりません。東部戦線では国防軍とSS軍団が並んで闘っているのです。臨時政府としては、反乱の疑いのあるヒムラーとボルマンを除いて、罪を問うつもりはありません。どうか落ち着いて行動してください。」

 放送を終えたベック首相は、副官に言った。

「速やかに、ユダヤ人強制収容所の稼働を停止するよう指示をだせ。」

 【彼】との約束だからな。ユダヤ人は殺すより働かせたほうがずっと役に立つはずだ。

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