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1943年11月18日~モルディブ

 サマーヴィル提督は、再建なった新東洋艦隊を眺めていた。本国の本気ぶりがわかる威容であった。戦艦は、38センチ砲のリヴェンジ、レゾリューション、41センチ砲のネルソン、36センチ砲のキングジョージ5世、デュークオブヨーク、38センチ砲を持つ巡洋戦艦レナウンの6隻。空母は、イラストリアス、ヴィクトリアス、フォーミダブル、インドミタブルの正規空母4隻。大西洋は、軽空母や護衛空母で足りるということで、動く正規空母は全てインド洋に向けてきた。巡洋艦、駆逐艦に至っては、40隻以上という大艦隊だ。


 ソ連は、結局、バルト3国、白ロシア、ドネツ地方を除くウクライナの独立を認め、沿海州の満州国への返還、北樺太の日本への譲渡に応じ、中立を宣言した。今は、動揺する国内の引き締めに懸命なようだ。スターリン暗殺未遂事件が起こり、大規模な粛清を行なっているらしい。レンドリースは踏み倒す気満々だ。こじらせて敵に寝返りでもされたら大変なので、今は黙って耐えるしかない。


 枢軸側は、先週、3国同盟の発展的解消と称して、従来の同盟を解消し、改めて、ユーラシア会議なる同盟関係を立ち上げた。従来の同盟に加盟していた国のほか、ソ連から独立した国々や国民党中国、フィンランドが参加した。満州も参加を希望したが、憲法など国家としての制度が不十分ということで保留となった。議長は、当面、ドイツと日本が交代で務める。目的は、防共と加盟各国の友好的発展としている。関税の引き下げなどが検討されている。戦争に関する相互援助義務はない。軍事同盟は、個別に締結するとしている。しかし、会議は、旧枢軸国と米英の休戦に向けて努力することを、最初に決議した。


 米英両国政府は、即座に共同声明を発し、従来の枢軸同盟となんら変わりのない、侵略国家同盟であると非難し、すべての占領地からの即時撤退と、戦争被害に対する賠償を求めた。そして、再度、戦略を練り直した。しかし、東部戦線が落ち着いてしまった今、ドイツは大変攻めにくくなった。フランスは、第3共和制憲法を復活させ、ドイツ占領地を含めた全土で総選挙を実施しようとしていた。戦争に対して中立であること、ベトナム、ラオス、カンボジアの自治権を認めることを条件に、ドイツの了解を取り付け、捕えていた抗戦派を恩赦し公民権を復活させた。ドゴールは、レジスタンスに蜂起を呼び掛け、また、新議会に立候補する者たちに、現政権を否定し、自分を支持するよう訴えていたが、大きな潮流にはなりそうになかった。平和を望む一般市民にとって、遠いインドシナの話はどうでもいいことだ。かつて、ナチスにすり寄り権力をかさに悪事を働いていた政治家らの逮捕のニュースが、紙面をにぎわせている。


 東部戦線のドイツ軍は、1/3ほどが、本国及び西部戦線に戻ってきていた。残りは、バルト3国、白ロシア、ウクライナ臨時政府の要請で、現地に残っている。しかし、情勢を見極めて、帰還を進める方針である。ドイツ政府は、ポーランド、ベネルクス3国の海外避難中の政府に対して、中立を条件に、帰還を求めた。フランスの動向が大きな影響を与えるであろう。


 こういうわけで、地中海方面のドイツ軍もさらに強化され、例のジェット戦闘機だけでなく、まだ米英では実用化されていない、誘導対艦ミサイルを抱えた爆撃機もうろつくようになり、地中海は危険極まりない海となっていた。


 そのため、米英は、太平洋で日本海軍を壊滅させることを目的とする一大作戦を決行することになった。この、新東洋艦隊もそこに投入される予定である。

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