1943年6月10日~サンジエゴ軍港
アリューシャン列島の回復は、大々的に放送されたが、補給の問題で、ミッドウェイ守備隊の大半がハワイへ撤退したことは、秘匿されていた。ガダルカナル守備隊も、駆逐艦輸送でオーストラリアに大半撤退し、大隊規模となっていた。一方で、サンジエゴには、エンタープライズ、サラトガ、さらには戦艦ワシントン、ノースカロライナ、インディアナおよびかつての第18任務部隊の護衛空母2隻、重巡3隻、大型軽巡3隻という結構な艦隊が修理なって勢ぞろいしていた。
3月4月は、とんでもない暗号情報が飛び交い、そのたびに慌てふためいて対応策を協議し、付け焼刃の準備を行なっていたが、どうやら、暗号が解読されていることを承知の上で、遊ばれている。気づいた時にはやんでいた。
太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツは、艦隊を出撃すべきかどうか悩んでいた。日付変更線を超えて西に向かう船は、駆逐艦以外は攻撃されて漂流することになる。ひっそりと偵察任務についた潜水艦4隻も日付変更線を超えたあたりで攻撃され、うち2隻は沈没、残る2隻も自沈した。西に向かう任務は地獄行と忌み嫌われていた。ニューブリテン島のラバウルや、東ニューギニアからの日本軍の撤退も、しつこく航空機で偵察した後、駆逐艦で小隊規模の海兵が上陸して確認した。ハワイ、ポートモレスビー、オーストラリアに配備されるB24、B26、B17などの大型爆撃機は、配備後数日でスクラップにされるので、ここ2か月ほど配備はやめていた。P38も双発のせいか狙われやすい。そして、単発機では足が短いので遠くまでの偵察はできない。
さらに悪い情報として、中国および極東ロシアで18インチ砲装備の巨艦を含む日本の機動艦隊が目撃されていた。空母も5隻は活動しているようだ。現有戦力で、その艦隊に必ず勝てるとは言えない。そもそも連中のいるであろう海域にたどり着けるのか。大統領は、士気高揚のため、ギルバート、マーシャル諸島の占領を望んでいる。戦時国債の売れ行きに影響するのだ。日本の巨大戦艦に対抗するため、16インチ砲9門を搭載するアイオワ級高速戦艦4隻の建造が決定されたが、エセックス級空母と工廠の取り合いになっており、海軍本部は調整に悩んでいた。
艦尾甲板に増加装甲を施してはどうかという案もあったが、あれほど正確な狙撃をしてくる敵である。艦首や艦橋を狙わない保証はない。とにかく、ハワイまで進んでみよう。そうでなくては、この艦隊の存在意義はない。ニミッツは腹をくくった。
短めなので連投します。