終わらない夏
「あじぃ...」
8月30日、今年の夏は長い
「うぇ...41度...7月より暑いじゃない...」
目々娘は扇風機をつけ、布団をたたみ始めた
「暑い...」
那岐とレピスンがふてぶてしく扇風機の前に鎮座した
「あんたら、自分達の家は?」
「扇風機が無いよ」
「我慢しなさい、こんな暑さでへばれるな」
「目々娘だって下着だけじゃない!」
「それで寝てたの?」
「うるさいわね、お姉もこれで寝てたわよ」
「お腹下すよ」
目々娘は台所で料理を作り始めた
「私は元気よ」
「そういうことじゃないんだよなぁ...」
すると玄関の扉が開いた
「目々娘、いるか」
リビングのふすまがあき、勇利が入ってきた
「....なんで下着姿の変態が料理してるんだ」
「たぶん暑さで狂ったのよ」
「家は火気厳禁よ、捨てなさい」
「はいはい」
勇利はタバコの火を消した
「で、なんの用なのよ」
「お前はおかしいと思わないのか?」
「確かに今年は暑いわね」
「異常なまでにな」
目々娘は出来上がった料理を那岐とレピスンに出した
「それが誰かの仕業ってことを言いたいわけね」
「いただきまぁす!でもこれって利益あるの?」
レピスンは不思議そうに問う
「....」
那岐は黙ってごはんを食べている
「たぶんある奴がいる」
「夏は暑いもの、何でもかんでも誰かのせいにしない方がいいわ」
目々娘は冷めたように言った
「お前は霊妖鬼としてな...とりあえず誰が犯人かは予想がついている」
「ほほう...」
レピスンが興味ありげな反応をするなか、那岐と目々娘は黙々とごはんを食べている
「隣の山に『忠臣寺』があるだろう、そこに『神霊』が住み着いている」
その時、空気が一変した
「なに...『神霊』...」
目々娘はごはんを一旦中断して会話に参加する
神霊は神が死に、概念になりその概念を具現化した存在だ
その強さは最弱の妖精以下の存在から神を優に越える強さの存在まである
「そうだ、三尾地様いわくそいつは気温が低いと生きられないらしい」
「そうなんだ」
「それでこの暑さのせいで氷湖に住んでいる霊たちが溶けてきてしまっている」
「でもそれは霊神の仕事じゃない?霊神は何してるの」
「霊神様はまだ不完全だ、その為に他の種族に干渉できる俺達の出番だ」
「ふぅん...仕方がないわね、那岐、レピスン、留守番よろしく」
目々娘は立ち上がり、着替えを始めた
「はーい」
「....」
那岐は黙々とごはんを食べている
「行くわよ、勇利」
「ああ」
二人は神社を出た
「ご馳走さま~どうしたの?那岐?」
「嫌?何でも無いわよ?」
那岐は何かを隠すように言った