焔の鬼
「ああ、敗けたさ、ボロボロにね」
「それが神の力を得た私に勝てると思うのか?」
那岐は間合いをつめ、攻撃を放ったが、楽にかわされた
「遅い!粋がって私に噛みついて来たくせにそれか!」
炎鬼は那岐の腹を殴った
「うっ...」
那岐はその場に膝をつき、腹をおさえた
そして那岐はある日の事を思い出した
『芽依っ!』
『那岐ちゃん!』
幼なじみの芽依と那岐は手を繋ぎ何かから逃げていた
『てこずらせやがって!』
その怒号は木の裏に隠れていた二人の耳にも聞こえていた
『大丈夫!?那岐ちゃん...』
『ああ、何とか大丈夫さ』
那岐は火傷を覆った左胸を隠し、言った
『でも...その傷...』
『どうってことねぇ!てやつだ..』
その声には力がない
『いた!那岐ぃ!』
とある鬼は那岐を見つけ、腕に炎を纏った
『まって!那岐ちゃんは悪いことしてないわ!』
『んぁ!その駄鬼はこの四支の娘の私に恥をかかせた!』
『でも悪いのは戦いを挑んだあなたじゃない!』
那岐は村一番の力持ちで、その噂を聞いた鬼が勝負を挑み、那岐がコテンパンにしたことにこの鬼は怒り、そのあと不意討ちで那岐に痛手をおわせた
『知らねぇな!私に逆らえばどうなるか分かってんのか!』
その鬼、炎鬼は芽依の頬を掴んだ
『芽依っ!』
『おっと!それ以上近付けばこいつを殺すぞ!』
『那岐ちゃん...逃げて...』
『ふっ...そうだ!お前に質問だ!』
『はぁ...はぁ...なんだ...』
『お前か、この鬼、どちらかだけを殺す!』
炎鬼は那岐に向かって言った
『....ふざけ..うっ!』
傷が痛む
『那岐ちゃん...』
『さあ、選べよ、那岐』
頭を抱えてその場に膝をついた
『どうすれば...私』
自分の命は惜しい、しかし芽依の命も同じくらい大切だ
『私、大丈夫よ...那岐ちゃん...』
『芽依...』
那岐は拳を握りしめ、覚悟を決めた
『私を殺せ、炎鬼』
その言葉に後悔はなく、那岐は清々しい目をしていた
『那岐ちゃん!駄目だよ...』
『良いんだ、誰かの為、芽依の為に死ねるなら本望さ』
那岐が立ち上がり、芽依の方に向かった
その時、炎鬼が芽依の腹を貫いた
『かはっ!』
『芽依っ!炎鬼ぃ!』
那岐は炎鬼に殴りかかったが、傷の痛みで倒れた
『近づいたら殺すっていったろ?次はお前だ』
炎鬼が那岐に近づいて来たその時、茂みが動いた
『やべっ!...次は無いぞ、那岐』
その時、去り行く炎鬼のズボンの裾を倒れた芽依が掴んだ
『できれば...使いたくなかったの...私の力...貴方には神の裁きが待ってるわ...』
『ああ、知らないなぁ!』
炎鬼は芽依の手を振り払い、走って逃げた
『芽依...』
那岐は地面に伏せながら芽依に呼び掛けた
『那岐ちゃん....私はもう無理....那岐ちゃんは生きて...』
そう言って芽依は笑った
『二回も使っちゃった...はは...『言葉を現実にする』能力...』
そう言って芽依は静かになった
『芽依...』
その瞬間、茂みから仮面をかぶり、体全体をマントで覆った鬼が現れた
『言葉を現実に...ですか、そんな危ない力、よく放置してましたねあのお方は』
その鬼は芽依の手を胸にあわせた
『....刹鬼が貴女を見捨てるかどうかは、もう決まっていますね』
『刹...鬼...様?』
そんな事を思い、口にした瞬間、那岐の意識は消えうせた
それから幾分かの時がたち、気がつけば芽依の家のベットの上にいた
どうやら私は村の近くの林道で無傷で倒れていたらしい
しかし芽依は帰ってきてないし見つかってもいないらしい
何度もその事を聞かれたが私は、『分からない』と言った
次の日に私は村を出た
「思い出したぞ、炎鬼ぃ!」
那岐はがむしゃらに殴りかかたがすぐに殴られた
「無駄無駄!お前と私にはもう力の差が歴然、敵う相手じゃなぇ!」
「でも、それはお前の力じゃないだろ」
その時、空気が凍った
「お前に出来るのはいつも自分の力と勘違いして強いと思うことだけ、そんな奴に私が、負けるはずなんて無い」
「貴様!私に負けた雑魚の癖に..」
「不意討ちでな、それぐらいの力しかないお前に負けるはずがないんだ!」
「黙れっ!全て私の力!実際、今のお前は私に勝てないっ!」
炎鬼は拳に炎を灯し、全力で那岐を殴った
しかしその拳は当たらなかった
「何故だ!」
「さあね」
その時、那岐はとある球体をもった
「!」
球体は赤く光り始めた
直感的にヤバイと感じた炎鬼は弾き飛ばした
「なっ!」
那岐が焦った瞬間、彼方まで響くような爆発音と共に、爆発した
その跡には深さ10mほどの亀裂があった
「なんだこれは!」
「...とある神から盗んだ『神人核』、不適合な種族に触れていると大爆発を起こすと聞いた」
「....ふっ、死ぬ気だったか」
「まあね」
しかし那岐は思った、今死ななかったのも『死なない』と言った芽依の力か
「...『盗む』能力なんてふざけた力でもここまでできるんだな」
「本当にふざけた能力だな!」
炎鬼が殴りかかってきた
数回その拳をかわしたが、命中してしまった
「がはっ!」
血が流れる
あのときの記憶が脳内を巡る
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!
その言葉が永久に続く
『よく繋ぎましたね、この空間に』
「貴方は...」
あの日に見た鬼が巨大な椅子に堂々と座っている
「刹鬼様」
鬼の神、そんなちっぽけな言葉では言い表せない威厳と力を感じる
『いかにも』
「....そうか、あの日に『神鬼核』を私に埋めたか」
『そうです、ですが貴女にはあまり適合してませんでしたね、それでも己の力と己の意識を持ち、この運命に繋げたとは、天晴れです』
「いえいえ、そんな事ないっすよ」
『貴女は己を最強と偽ることが好きなようですね』
「あー...確かにそうっすね...」
『では、最強になってみますか?』
刹鬼は手を差し伸べた
「それは刹鬼様の力を借りますか?といった解釈でよろしいですか?」
『そうです』
「じゃあいらないっす」
那岐は断った
『...』
「わかるんです、あいつには勝てないって、だから刹鬼様には..」
パチーン、と刹鬼の鞭が那岐の頬に当たる音が響く
『貴女には一度決めた事を最後までやるという意志がないのかっ!』
鞭の一撃は痛さではなく優しさを感じた
『貴女はそれでいいかも知れません、確かに勝てないかもしれません、しかしそれは自分が運命から逃げる為の虚言でしかありません!それで自分が納得しただけ貴女の命は一人のものでは無いでしょう!』
那岐は忘れてはいけない1つの名を思い出した
「芽依...」
『そうです、本質で理解している掴めない現実から逃げないでください!例え可能性が0%でも最後まであがき、それで到達した現実はどんな現実でも美しいものです!』
「...」
『さあ、手を』
那岐は刹鬼の場所までの長い階段を一歩一歩踏みしめながらすすむ
「やります、抗って見せます」
那岐は手をとった
『よかったです、さあ到達してください、素敵な現実に』
刹鬼は仮面を外し、美しい笑みをみせた
「さあ、これでトドメ...」
那岐の左胸が光り輝いた
「やってみろよ、さあ!」
光りが炎鬼を遠くに飛ばした
「その力は!私と同じ!くっ...何時までも私を苦しめるか!」
そう叫んだ炎鬼へ一瞬で間合いを詰めた那岐は肘でアゴを打撃した
「ふぅー...はぁっ!」
一瞬のうちに数千、数万の本気の拳が炎鬼に飛ぶ
「がはっ!」
「『見苦しいですよ、炎鬼』」
「くっ...刹鬼...様、そこまでの力を那岐に...」
数m先に飛んだ炎鬼が焦ったように言い放った
「『お前はもう少し強いと思っていましたよ、核の適合も最高レベル、血も引き継いでる、それなのにお前には力は無かったですね』」
「貴様っ...私を愚弄しやがって!」
「『見苦しいです!さあ、力を持たない鬼を殺しなさい!那岐!』」
「...はいっ!」
こちらに向かってくる炎鬼の首を掴み全身全霊を拳にかける
「うおらぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐわぁぁぁぁ!」
おもいっきり腹を殴られた炎鬼はかなり後ろに飛んでいった
しかしその時、
「あっ...」
もともと適合が無かった那岐は倒れた
「...やはり駄目でしたか...」
地獄で一体の鬼、いや神が言った
しかし
「よくやった、那岐」
「はぁはぁ...お前は..」
その少女は倒れかけていた那岐を抱えた
「三尾地那古っ!」
その少女、三尾地は炎鬼に向かって言い放った
「私のかわいい部下をぼこぼこにして、あばれたねぇー」
「...」
「殺してあげる、『春一番』」
そう宣言した瞬間、全てが吹き飛ぶような風がふく
「ぐっ!人の神が他の種族に神の力をっ!」
「それが?」
炎鬼は吹き飛んだ先は爆発でできた亀裂
「私はあんたにキレてるのよ、信じていた者を侮辱されたからよ」
「くっ...貴様っ!」
「三尾地」
「げっ!刹鬼!」
「止めなさい、貴女の信頼が下がるわ」
「ふぁい」
三尾地は『春一番』をといた
「わざわざ来たの...」
「そうです、部下の失態は刹鬼の失態ですから」
刹鬼は鞭でギリギリ亀裂の前にいる炎鬼を縛った
「さあ、言うことがありますよね?」
「ぐっ...殺せよ!」
「ええ、殺しますよ、ですが言うことがあるだろ!」
「普段真面目な奴が怒るときほど怖いものは無いわね...」
「...すみませんでした...」
「誰にですか?」
「...知らねぇ...」
「そうですか」
刹鬼は鞭を使い、亀裂の中に投げ捨てた
「三尾地、あの亀裂くっつけましょうよ」
「あーいいね!」
三尾地は桜の木を使いた、根を巡らせて亀裂をくっつけた
「邪魔者は死んだわね」
「はぁ..忙しいのにぃ...」
「かわいいのにその仮面のせいで残念ね」
「かっ!かわいい...もう、刹鬼は帰ります」




